ファイナンシャルプランナーの筆者のもとに、50代の女性が相談に来られました。約30年の事実婚が終わりを告げたとのこと。「まさか、この年になって1人で生きていくなんて」という彼女に、どのような事情があったのでしょうか。衝撃的な出来事をどう受けとめ乗り越えたか、これからの家計についても一緒にお伝えします。
<相談者プロフィール>
●相談者:有本絵理さん(52歳・仮名)
・派遣社員
・年収280万円(手取り18.5万円/月・ボーナスなし)
●お相手:藤堂保高さん(58歳・仮名)
・会社員
思い込んだら一直線! 仕事より優先したかった恋心
取引先からの信頼も厚く、社内でも人気があった保高さん。当時新入社員だった絵理さんにとっても憧れの存在で、会社に行くのが楽しくて仕方ありません。
保高さんにとっても絵理さんは礼儀正しく素直な可愛い部下。メンターとして行動を共にするうち、プライベートでも一緒に過ごすことが増えていきました。
そんな2人の関係は、いつしか会社に知られることに。会社では同じ部署内での恋愛がご法度で、「保高さんが転勤させられる」という噂が社内に広まり始めます。この状況を「ヤバい……」と思った絵理さんは、家族や保高さんに相談することなく静かに会社を辞めてしまいました。
会社を退職するも、あてがない
新卒からたった半年で離職した絵理さん。再就職をしようとしても履歴書の段階で落とされる状況が続きます。
両親から保高さんと会うことを許されず、電話も取り次いでもらえません。思いつめて泣いてばかりの毎日がイヤになり、保高さんが1人で暮らすマンションに「えいやっ!」と転がり込みました。
戸惑う保高さんでしたが、責任の一端は自分にもあるという思いもあり「帰って!」とは言えません。ただ、思い込んだら一直線の絵理さんとは違い、保高さんには結婚に踏み切る覚悟はなかったようです。
「子どもができた」保高さんの衝撃の告白
月日がたったある日のこと。
「最期のときまで一緒に暮らしていく」
そう思い込んでいた絵理さんに、衝撃的な出来事が起こりました。保高さんと別の女性との間に子どもができたのです。
きっかけは、保高さんの母親の入院でした。親身にお世話をしてくれた看護師さんを気に入り、この人こそが保高さんのお嫁さんにふさわしいと声をかけたとのこと。50代後半にもなって「今さらお見合い?」と後ろ向きな保高さんでしたが、親の頼みを無視するわけにはいかず。しぶしぶ会ったはずの看護師さんと意気投合し、絵理さんに隠れてお付き合いが始まったそうです。
突然すぎて呆然としている絵理さんに、「あなたとは同居していただけ。子どもができたんだから仕方ないだろ」と言い放ち、何事もなかったように荷物をまとめて出ていきました。
同居なら関係解消は問題ないのか?
たしかに籍は入れていないし、子どもに父親はいるだろう。でも、保高さんの父の葬儀で親族席に参列した事実もある。
「2人の暮らしは単なる同居? 事実婚じゃなかったの……?」
釈然としない気持ちを整理するため、友達から紹介された離婚に強い弁護士さんを訪ねてみました。弁護士からは、同棲は「婚姻の意思を持たずに一緒に暮らしている状態」であるのに対し、事実婚は「婚姻の意思があって生活を共にしている状態」とのこと。
実は一度、絵理さんの両親に「いずれは籍を入れるつもりです」と2人揃って挨拶に行ったことがありました。そのことを思い出して弁護士に話してみると、慰謝料請求は可能であるということでした。
ただ、絵里さんの願いは関係の修復。
「慰謝料請求なんてしたら、本当に別れることになる」
踏ん切りがつかない中、追い打ちをかけるように、保高さん名義で借りているマンションから退去を迫る手紙が届きます。
●50代で突然迫られた自立。残された絵理さんの生活はどうなるのか? 後編【事実婚を解消した50代・派遣社員の女性…その後の人生を照らした「2つの対策」】で詳説します。
辻本 由香/つじもとFP事務所代表・一般社団法人WINK理事
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、相続手続カウンセラー、50代からのくらし(医・職・住)と資産を守るファイナンシャルプランナー。おひとりさま・おふたりさま×特有の課題・お金の問題の事例などが得意分野。企業の会計や大手金融機関での営業を経て、2015年に、保険や金融商品を販売しないFP事務所を開業。個別相談の他、企業・病院・大学などでの講演も行っている。