ウクライナ侵攻から2年、長崎県内避難民19人 自立した生活が課題 関係者「支援継続が必要」

サーシャさん(左奥)らに認定制度の概要を説明する(右から)森さんと小野一馬さん=佐世保市南風崎町、長崎日本語学院

 ロシアのウクライナ侵攻から24日で2年。長崎県内には14日時点でウクライナからの避難民(証明書所持者)19人が暮らす。避難が長期化し、先行きが見通せない中、難民に準じた保護対象者の認定制度も始まり、日本国内で自立した生活を送れるかが課題となっている。関係者は継続した支援の必要性を強調する。
 「1年ごとのビザ(査証)の更新を心配しなくていいし、メリットの方が大きい」。今月13日、佐世保市の長崎日本語学院。ウクライナ避難民の支援を続けるNPO法人「ビューティフル・ワールド」(大分県別府市、小野ヤーナ理事長)の小野一馬さん(37)が認定制度の概要を説明した。オストロウシチェンコ・アレクサンダー(サーシャ)さん(18)は「説明を聞いて安心した」とほっとした表情を浮かべた。
 同学院や長崎国際大を運営する学校法人九州文化学園(佐世保市)はグループ全体で避難民7人を受け入れている。学園側が寮費などを負担。日本財団から最長3年間の生活費支援も受ける。国の新たな認定制度が昨年12月に始まったが、通知が本人への書面のみで情報不足から避難民の中で混乱が生じた。そこで小野さんが説明のため同学院を訪れた。
 サーシャさんはウクライナ南部オデッサの大学でソフトウエア開発の勉強をしていたが、昨年2月に家族と離れ、1人で来日。兵役義務で出国が原則禁じられる18歳になる前に、ハウステンボスで働く親類を頼って避難してきた。今は同学院で日本語を学びつつ、オデッサの大学の講義をオンラインで受けている。
 最初は日本語が全く話せずに不安な日々を送っていたが、この1年間で日常会話レベルはおおむね聞き取れるようになったという。「日本語を勉強できるのは誇りになるし、自信にもなる。まだ先のことは分からないが、できればソフトウエア関連の会社に入って日本での生活を続けたい」と話した。
 一方で避難が長期化する中、小野さんらによると、自治体などが受け付ける義援金は減少傾向にある。長崎市は既に受け付けを終了。県や佐世保市は3月末までの期限を延長するかは「状況を見て判断する」としている。
 同学院の教諭、森伊作さん(49)は「支援疲れ」を危惧。「まだ戦争は終わっていない。国に帰りたくても帰れない人たちがいる。県市や市民の支援がまだまだ必要」と切望する。
 壱岐市で活動を始めた「ビューティフル・ワールド」は現在、佐世保と別府両市合わせ36人の避難民を継続的に支援。対象者の中には医師の資格を持ちながら、量販店で商品陳列の仕事をしている人や、小学生もいる。小野さんは就労や就学がこれからの課題と感じ、こう訴える。
 「彼らは日本とウクライナの宝。日本のことを知り、日本に貢献できる人材。だが自立できているのは一握り。生計を立てられるくらいのものを提供しないといけない。この1年が大事だ」

◎ズーム/補完的保護対象者の認定制度

 政府は昨年6月の入管難民法改正で、ウクライナを念頭に難民に準じた保護対象者の認定制度を新たに創設。同12月に制度が始まった。「定住者」の在留資格が与えられ、更新の手続きなしで最長5年間、就労の制限なく日本で暮らすことができる。希望者には今年4月から、日本語習得など日本で自立した生活を送るための「定住支援プログラム」を提供する。

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