未来へ掲げた希望 全ての子ども 幸福目指す こども大綱昨年12月決定 重要事項の一つに「子どもの貧困対策」 希望って何ですか 第2章特集-読者とともに考える-

「こどもまんなか社会」の実現を掲げ、子ども施策の基本的な方針などをまとめた「こども大綱」が昨年12月、閣議決定された。概要や、重要事項の一つ「子どもの貧困対策」について紹介する。

■課題が複雑化 政策を一元化

 2023年4月施行のこども基本法に基づく「こども大綱」は、こども政策の基本的な方針を定める初の指針として閣議決定された。子どもの抱える課題が複雑化していることを背景に、「少子化社会対策大綱」と「子供・若者育成支援推進大綱」、「子供の貧困対策に関する大綱」の三つにまたがっていた子ども政策関連の大綱を一元化した。

 国はこれまでに幼児教育・保育や高等教育の無償化を進め、待機児童は一部の地域を除いてほぼ解消に向かっている。また児童虐待防止対策や児童相談所の体制強化など、困難な状況にある子どもや若者の支援も充実を図ってきた。

 一方で、2021年の厚生労働省の国民生活基礎調査によると、貧困状態にある子どもの割合は11.5%で、特にひとり親家庭は44.5%と高い。また22年度にはいじめの重大事態が923件発生し、不登校の児童生徒数は年々増加。新型コロナウイルスによる影響で友人関係の希薄化なども懸念されている。

■六つの方針 数値目標も

 こども大綱は、全ての子どもと若者が身体的、精神的、社会的に幸福な状態で生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現を目指すとする。

 基本方針には(1)子ども・若者を権利の主体と認識し最善の利益を図る(2)子ども・若者や子育て当事者とともに進める(3)ライフステージ(成長段階)に応じて切れ目なく支援する(4)貧困と格差の解消-など六つを定めた。

 全ての成長段階に共通する具体的に取り組む重要事項として、子どもの貧困対策、障害児らへの支援、虐待防止などを明記。成長段階別の項目としては、安全・安心に過ごせる居場所づくり、不登校の子どもへの支援、高等教育の修学支援などを挙げる。

 そのほか、子育てや教育に関する経済的負担の軽減など、子育てする当事者への施策も重要事項に盛り込んだ。

 政府の意識調査を基に、子ども・若者や子育て当事者の視点に立った具体的な数値目標も設定した。「こどもまんなか社会の実現に向かっていると思う」と思う人の割合を15.7%から70%に、「生活に満足している」と思う子どもの割合を60.8%から70%に向上させることなど12項目を明記した。

 国と自治体は大綱を基に実行計画を策定し、おおむね5年後をめどに進捗(しんちょく)状況を検証する。

■貧困の解消命題 実行計画策定へ

 「こどもの貧困は、経済的な面だけではなく、心身の健康や衣食住、進学機会や学習意欲、前向きに生きる気持ちを含め、こどもの権利利益を侵害するとともに、社会的孤立にもつながる深刻な課題であり、その解消に全力をあげて取り組む。貧困及び貧困の連鎖によってこどもたちの将来が閉ざされることは決してあってはならない」

 こども大綱では、子どもの貧困・格差の解消が重要事項の一つとして記された。子どもの貧困が子どもの権利や利益を侵害するという重い課題であることを指摘した上で、解消に向けて取り組むことを明示した。

 基本的な方針の中で、子どもの貧困の解消は「全てのこども・若者が幸せな状態で成長できるようにするための前提であり、全てのこども施策の基盤となる」と意義付けている。

 取り組み内容としては、大まかに(1)教育費負担の軽減(2)苦しい状況にある子どもを早期に発見し支援につなげる体制の強化(3)さまざまな体験や遊びができる機会の確保(4)社会的に孤立しないための居場所づくり(5)親の所得向上(6)仕事と両立して安心して子育てができる環境の構築-などを挙げている。

 このうち教育費負担の軽減については、「幼児期から高等教育段階まで切れ目のない負担軽減を着実に実施する」とし、特に課題とされる高等教育については、授業料減免や奨学金制度の充実、授業料後払い制度の本格導入などを検討し、必要な措置を講じると記した。

 子どもの貧困に対する社会の受け止め方にも言及しており、「こどもの貧困は家庭の自己責任ではなく社会全体で受け止めて取り組むべき課題」と指摘した。

 一方、社会全体の大きな経済政策としては「最重要課題である『賃上げ』に取り組む」ことを明記し、全ての働く人が賃上げを実感でき、賃上げが持続的なものとなるように必要な制度の見直しを検討することを示した。

 大綱に基づき具体的に取り組む施策は今後、「こどもまんなか実行計画」として取りまとめられる。

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