東京でも「冬用タイヤ」は必要ですか? あまり雪が降らないので、用意しても「無駄」になるような気がします。「ノーマルタイヤ」ってそんなに危険ですか?

東京都内でも冬用タイヤが必要な理由

雪が降らない年もある東京で車を持っている場合、「わざわざ冬用タイヤを購入するのは面倒だ」「交換費用がもったいない」と思う人もいるかもしれません。とはいえ冬にノーマルタイヤで運転していると、事故やトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。

特に気をつけるべきなのは「路面凍結」です。凍結した路面に乗った瞬間、タイヤのグリップ力が著しく低下し、車がコントロールを失ってスリップ事故を引き起こす恐れがあるのです。

路面温度が0℃前後になると路面は凍結し始めるのですが、注意する点は路面温度と気温は異なることです。一般的に路面温度は気温より低くなり、気温が2℃を下回ると路面温度が0℃になるとされています。

気象庁のデータによると、東京都の1月の平均最低気温は1.2℃、2月の平均最低気温は2.1℃となっています。そのため雪が降っていなくても、朝や夜の冷え込む時間帯では場所によっては路面が凍結している可能性があります。

また、2024年2月6日には東京都心で9cmの積雪が観測されたように、東京でも突発的な降雪リスクがあります。このような積雪に見舞われれば、ノーマルタイヤでの運転はほぼ不可能な状況になります。

このように「路面凍結」「突発的な降雪」といったことは東京都内でも十分起こりえるため、冬用タイヤの準備は必要であるといえそうです。

雪道や凍結した路面を運転するリスク

普段雪の降らない地域に住んでいれば、雪道や凍結した路面での運転に慣れていない人は多いでしょう。積雪路面や凍結路面を運転するとなると、当然ですが普段よりも滑りやすくなります。

JAF (日本自動車連盟)が行った実験では、時速40kmから急ブレーキをかけた際の制動距離を測ったところ、次のような結果となりました。

圧雪路での制動距離

ノーマルタイヤ:29.9m
スタッドレスタイヤ:17.3m

氷盤路での制動距離

ノーマルタイヤ:105.4m
スタッドレスタイヤ:78.5m

この実験の結果から、ノーマルタイヤの制動距離はスタッドレスタイヤの1.7~1.8倍になっており、明らかに制動距離が長くなることが分かります。制動距離が長くなればブレーキをかけても思ったように止まれず、結果的にスリップ事故を引き起こす原因にもつながります。

またノーマルタイヤは冬用タイヤに比べてタイヤのグリップ力が弱いため、雪にタイヤがはまって空転する「スタック」事故を引き起こす恐れがあります。

過去の事例としては、東京都心で10cmの積雪を観測した2022年1月には、首都高速道路で冬用タイヤを装着していない車両による立ち往生が発生しました。この大規模な立ち往生が解消するには14時間もかかっており、冬用タイヤを装着しないことで日常生活に大きな支障をきたすリスクがあるのです。

冬用タイヤは早めに準備しておくことも大切

冬用タイヤは雪が降る季節に向けて交換するため、冬場にはタイヤ交換の需要が急激に増加します。ピーク期間には作業の待ち時間が長くなり、場合によっては予約を断られてしまう恐れも考えられます。

そのため冬用タイヤを購入するのは、本格的な冬が来る前や冬の終わりといった需要が少ない季節に購入することがおすすめです。需要シーズンを避けて冬用タイヤを購入・交換することで、「割引価格での購入」や「作業時間の短縮」といったメリットが受けられることも期待できます。

まとめ

東京都で雪が降る日は少ないものの、雪が降った際や路面凍結している道路をノーマルタイヤで運転すれば、車両のコントロールが難しくなり、事故や渋滞を引き起こす可能性もあります。全国的に積雪を観測した2024年2月6日には、雪の影響でスリップ事故が相次ぎ、関東では少なくとも1300件を超える交通事故が発生しています。

自身の体や車を守るだけでなく、他人に危害を及ぼさないためにも、寒い時期には冬用タイヤを装着し、くれぐれも注意して運転するようにしてください。

出典

JAF (日本自動車連盟) 走れても止まれない、雪道のノーマルタイヤ(JAFユーザーテスト)

執筆者:山本峻
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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