本来の感覚が戻ってきたディフェンス職人・内尾聡菜…「このメンバーで優勝したい」

約2カ月間の中断期間を経て2月23日から再開するWリーグ。混戦模様となったシーズンの中、16年ぶりの頂点を狙うのが富士通レッドウェーブだ。ここでは優勝へのキープレーヤーに話を聞いた。第1弾はディフェンスに定評があり、オールラウンドな攻めも見せる内尾聡菜選手。

インタビュー=田島早苗
インタビュー撮影=兼子愼一郎

◆新しいことに取り組んだシーズンで得た手ごたえと課題

今季は攻防において新たなことに挑戦しているという内尾 [写真]=兼子愼一郎

――いよいよWリーグが再開しますが、レギュラーシーズンのここまでを振り返ってください。
内尾 今シーズンは移籍でキキさん(林咲希)が加わり、いろいろなバリエーションでバスケットができています。(12月中旬から)ルイさん(町田瑠唯)がケガで離脱することになって、直後はチームとしても動揺しましたが、そこから練習を重ね、練習でも強度高く、みんなでバチバチやりあうことができました。その後の試合でもルイさんがいなくてもやれるというところは見せることができたと思います。ただ、やっぱりルイさんがいないと…というようなときもあったので、誰が出ても富士通のバスケットを一貫してできるようにしていきたいです。

――まさに1月4、5日のトヨタ自動車アンテロープス戦は町田選手が不出場の中、1勝1敗でした。
内尾 多くの選手が試合に出て、それぞれの持ち味を発揮できた試合だったので、一つの成功体験ではないですが、やれるという自信になったと思います。選手それぞれがやるべきことをやるという気持ちを持って戦えたのが1戦目。2戦目も途中までは自分たちのバスケットができていましたが、最後の詰めのところで相手に勢いを持っていかれましたね。私個人としては何の不安もなく、逆にピンチはチャンスというか。ルイさんが出られない分、みんなにチャンスがあると思っていましたし、その中で気持ちを強く持って臨むことができました。

――先ほど(取材前に)BTテープスヘッドコーチから、内尾選手がここまでのMVPというような言葉が出ていました。
内尾 いや、決してそんなことはないです(笑)。一緒にコートに立つ他の選手たちは得点能力が高く、相手からするとディフェンスを厳しくして守らないといけない選手。でも、私のところは少し緩くなるというか…。だからこそ、私がいかに点にからめるかが大事だし、点にからむことで流れが変わってくるとは思っています。それを強く感じたのがENEOSサンフラワーズとの2戦目(2023年11月19日)で、点を取る選手が限られてしまい、私も全く点にからめませんでした(5得点)。その試合はディフェンスもできず、すごく悔しくて。それを機に気持ちを切り替えてプレーできていますが、決してMVPと言われるほどでは……。

――今シーズン、新たに取り組んだプレーなどはあったのでしょうか?
内尾 私の基盤であるディフェンスはぶれずに、波なくやることが前提。そこにプラスして3ポイントシュートをクイックで打つことやドライブで切り込んでいくといったプレーの幅を広げる取り組みをしました。

――シュートフォームの変更は?
内尾 昨シーズンよりはクイックに3ポイントシュートを打てるようになったと思います。それこそディフェスの当たりがきついときはいかに少ないチャンスでシュートを打てるかがポイントになるので、早く打てることは利点になります。ボールが来た瞬間に『打てる』という感覚と、それが無理ならドライブという判断がつきやすくなったので、シュートフォームの変更をアドバイスしてくれた後藤(祥太)アシスタントコーチには感謝しています。

――持ち味のディフェンスについては?
内尾 それが…途中まで全然ハマってなくて。周りのイメージは『内尾=ディフェンス』というのがあると思うのですが、そうやって見られるのが嫌になるぐらいディフェンスができていませんでした。それこそできていないのに、ディフェンスのイメージだけが先行していることも悔しくて。そこからディフェンスフットワークやトレーニングなどで足を鍛え直して、そうしたらやっとトヨタ自動車戦ではディフェンスがハマった感じがありました。

――『ハマった』というのは、どういった感覚ですか?
内尾 相手の動きが分かるというか、相手のフェイク、フェイントなどに引っかからないで、ピタッとついていける。ボールをどこにパスするかもある程度予測が付くし、その予測が外れたとしても次の動きに無駄なくいける感じですね。

――自身の感覚的なところですね。
内尾 はい。周りからはできているように見えていても、私の中ではワンテンポ、ツーテンポ遅いなというのがずっとあったんです。でも、ルイさんにはしっくりきていない時期にもバレていて。「なんか足が(いつもと)違くない?」というようなことを言われました。(クローズアウトの)詰め方がいつもと違うと言われたときには、私もそこの足が合わないなと思っていたときだったので、正直、『この人、何者?』と思いました(笑)。

――今はディフェンスの感覚が戻ってきてるのですね。
内尾 段々とですね。やっとしっくりきて、(リーグ再開に)間に合いそうというか。でも、全部が守れているわけではないので、もっと調子を上げていきたいです。

――再開したリーグ戦での試合が楽しみですね。
内尾 え、いやー(笑)。ちょっとハードルが…。

◆レギュラーシーズン最終戦はホームのとどろきアリーナで開催

3ポイントの成長によりドライブも鋭さを増している [写真]=Wリーグ

――再開してからはほぼ休みなくプレーオフのファイナルまでスケジュールが詰まっています。チームとしても『2シーズンぶりのファイナルへ』という思いが強いのではないですか?
内尾 ファイナルの景色はファイナルに行った人しか見られないですし、あのときの悔しさは今でもあります(2シーズン前はトヨタ自動車に敗れて準優勝)。あのときから、もっと強くなりたい、もっと成長したいと思っているので、今シーズンは絶対にファイナルに行って優勝。このメンバーで優勝したいです。

――どのチームにもチャンスがある中、勝ち切るには何が必要だと感じますか?
内尾 アースさんやキキさん、ニニさん(中村優花)と元ENEOSの先輩たちがいつも『気持ち』ということを言っています。それはこれまでのENEOSが優勝した試合などを見ても感じていたので、やっぱり最後は気持ちなのかなと思いますね。

――優勝経験者たちの存在は大きいですね。
内尾 ルイさん、アースさん、キキさんはBIG3と言われてますが、本当に熱い。私も3人と同じで負けず嫌いなので、そういう先輩たちの気持ちにずっとついていきたいですし、何よりこのメンバーと一緒にバスケットをしていてすごく楽しいです。

――内尾選手のチーム内での役割は?
内尾 ちょうど若手とベテランとの意見のつなぎ役だと思っています。ただ、昨年はそこですごく苦戦しました。今年は今年で昨年とはまた違う役割もあるのですが、つなぎ役は変わらないと思うし、そういった意味での副キャプテンだと思っています。昨年、(伝え方などで)悩んだ分、今年はその経験を生かすようにしています。時に言いたくないことも言わなくてはいけないし、言ったからには自分の言葉に責任を持たなくてはいけない。周りからもそういう立場になってきてると言ってもらっているので、いい経験になっています。

――さて、レギュラーシーズンの最終試合は川崎市とろどきアリーナでホームゲームです。
内尾 うれしいですね。ファンの方はすごく応援してくれると思うので、見てくれるみなさんのために40分間自分たちのバスケットをしたいです。ホームだからと気負うことなく、いつもどおりのプレーをしたいですね。

――とどろきアリーナは富士通の本拠地ですから、やはり特別な会場ですか?
内尾 「とどろきで試合したいね」ということはみんなでよく話をしますし、スケジュールを見たときも、とどろきで何試合あるかは確認します。富士通らしいディフェンスからブレイク、走り切って勝つところを見てもらいたいです。

――最後に後半戦への意気込みをお願いします。
内尾 中断期間にチームで取り組んできたことを試合で体現しながら、レギュラーシーズンの最終戦ではとどろきアリーナで勝ち切って、いい形でプレーオフにつなげていきたいです。

内尾はホームのとどろきアリーナでの試合を開幕前から楽しみにしている [写真]=兼子愼一郎

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