重症化すると健康にも影響…「いびき」について医師に聞きました

いびき

働く女性が気になる症状や疾患について解説。今回は、自分はもちろん、家族がかくことで悩まされることも多い「いびき」をひも解きます。

教えてくれたのは…甕 久人先生

もたい耳鼻咽喉科院長。耳・鼻の症状からアレルギー、風邪、睡眠時無呼吸症候群など幅広く対応。「ダブルトールカフェ名古屋」オーナー、デザイナーの一面も持つ

Q.どうしていびきをかくのですか

鼻から喉頭(のど)までの呼吸の通り道(上気道)が何らかの原因で狭くなると、その狭い部分を息が通るときに空気抵抗が大きくなるため、粘膜が振動して音が生じます。この振動音が「いびき」です。風邪などの鼻詰まりや、飲酒、疲労などにより喉の筋肉が弛緩(しかん)しても起きますが、これらは一時的なもので心配はありません。呼吸の通り道を狭くする原因が常に存在する場合は、毎日いびきをかくようになります。狭くなっている部位によりいびきの重症度は変わり、喉の奥の舌根近くが狭い場合はより重症。睡眠時に舌根沈下して気道を狭くなることで起きるいびきは閉塞型のいびきとなり、重症な場合は無呼吸を頻回に起こすようになります。

Q.いびきがもたらす影響は?

人に指摘されて初めて気づいた程度なら健康面の問題は少ないですが、重症になると睡眠が不良になるため、健康に悪い影響を与えます。よく眠れない、日中に眠くなってしまうなどの問題を抱えている方は、いびきが原因かもしれません。また、いびきをかいているときは口呼吸になっているため、口内が乾燥し、口臭につながることもあります。

Q.かきやすい人の特徴は?

いびきは女性のほうが少なく、男女比が2:1程度。女性に少ない理由は、女性ホルモンのプロゲステロンには上気道の筋肉を開く作用があるため、いびきをかきにくくしています。更年期以後は女性ホルモンが低下するため、喉の筋肉が緩みやすく、また肥満傾向も増えるため、いびきをかきやすくなります。

Q.日ごろからできる対策は?

自分の努力ではどうすることもできないいびきもありますが、多くのいびきは努力により良い結果に導いてくれます。

(1)鼻の病気があれば確実に治すこと

(2)適正体重の維持(首周りの脂肪が多い方は喉が脂肪で圧迫され睡眠時の気道狭窄が増えます)

(3)横向きで寝る(仰向け寝は重力の影響で喉の筋肉が下がり上気道を狭めます。横向きでその影響を少なくすることができます)

(4)生活習慣を見直す(飲酒、喫煙はNG)

(5)マウスピース(軽く舌根が落ち気味のいびき症の場合は、マウスピースを装着して寝ることでいびきが改善することがあります。マウスピースは自分の歯列に合わせたものが必要なので歯科受診が必要です)

などです。

Q.いびきを放置するとどうなる?

いびきは睡眠時に呼吸が通りにくくなっている状態。それにより睡眠中に低酸素血症になっているかが大事なポイントです。重症化していると、睡眠時に舌根が沈下し夜間に無呼吸を頻回に起こすようになり、低酸素血症を引き起こします。この状態が「睡眠時無呼吸症候群」です。夜間に何度も目が覚め熟睡できない、日中に眠くなり仕事や運転などの日常生活に問題をきたすようになります。さらに放置すると高血圧、心臓の不調につながることも。軽度のいびきであっても原因によっては重症化することがあるので、早めの受診をお勧めします。

「睡眠時無呼吸症候群」かどうかを調べる方法があります。いびきを連続してかいていたと思ったら急に十秒以上いびきが静かになり、しばらくして大きく息を吸い、再びいびきをかき始める、という場合はその数十秒間を無呼吸状態と思ってください。具体的な検査で判定するには耳鼻咽喉科、睡眠外来などの医療機関を受診すれば、ご自宅で簡単にできる「簡易睡眠ポリグラフィー検査」を受けることができます。

関連記事:

© 株式会社サンケイリビング新聞社