PURIKURA MIND・石ツ瞭斗インタビュー「もっとエンタメをやらなくちゃいけないと思ってます」

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結成は2023年10月。90年代USオルタナ、00年代の日本のロック、ボカロ、アニメ、ハイパーポップなどをぶち込んだバンドサウンド、そして、ネットとリアル、理想と現実の狭間でもがく姿をダイレクトに反映した歌によって瞬く間に注目を集めているのが4人組ロックバンド、PURIKURA MIND(プリクラ マインド)だ。

昨年12月にリリースされた1st EP「Starter Kid‘s」を聴けば、焦燥と衝動と知性に貫かれたロックンロールに魅了されるはず。さらに大阪、東京で本作のリリース・ライブも決定。バンドの首謀者である石ツ瞭斗(Gt/Vo)に聞いた。

――PURIKURA MINDの結成は2023年10月。きっかけは何だったんですか?

自分は18歳くらいからバンドをやってたんですけど、一昨年の末くらいに終わってしまって。1年くらい何もしてなかったら、友達のバンドの人たちが「早くやれよ」って感じで、いろいろ機会を与えてくれたんです。弾き語りとか即席のバンドとかをやってみたんだけど、イマイチやりたいことをやってる感じがなくて。やっぱりちゃんとバンドを組みたいと思って、手書きのメンバー募集の紙の写真をTwitterに乗せたのがはじまりですね。

――やっぱりロックバンドをやりたい、と。

そうです。今24歳なんですけど、サブスクの前の時代もギリギリ知ってて。たぶんロックバンドが盛り上がっていた時期を知ってる最後の世代だと思うんですよ。ひとりでやったほうがラクだしお金もかからないのはわかってるんだけど、やっぱりバンドがやりたい。何をやるにしてもしっかり論理がないと嫌なタイプなのに、バンドに関しては“好きだから”以外に理由がないです(笑)。ソロアーティストのライブを見てると「バックバンドは雇われてるんだよね」みたいなことを考えちゃうんですよ。仕事としてバンドをやることのカッコ良さもあると思いますけど、それよりも“幼稚園から一緒の仲間とバンドを組んで、音を鳴らす”ということにロマンを感じるというか。まあ、PURIKURA MINDはそういうバンドじゃないですけど(笑)。

――“初期衝動で突っ走って、派手に散る”みたいな美学もある?

いや、今はないですね。1回バンドを終わらせたこともあって、「続けるほうが100倍難しくて、100倍カッコいい」と気付いたので。神聖かまってちゃんが好きなんですけど、ずっと「終わりそう」と思われながら、今もやってるじゃないですか。15周年のツアーをやって、アニメソングが世界的にバズって。何回倒れそうになっても立ち上がって、ずっとバンドを続けるってめちゃくちゃすごいし、カッコいいですよね。「計算している部分もあるんだろうな」という感じもすごく好きで。僕は自分のことを客観的に見てしまうところがあるし、だからMCでもクサいことが言えるんですよ。「これは全部計算でやってる」と思い込めばどんなにカッコつけたことも言えるっていう(笑)。しかも、そういうメタ認知も全部話したいんですよね。

――衝動と打算がせめぎ合ってるというか。1st EP「Starter Kid’s」は石ツさんのなかでどういう位置付けの作品なんでしょう?

「2023年12月に1st EPを出したことが、後々、どう伏線になるか」ということも全部考えながら作ってました。タイトルは“スターターキット”と掛けてるんですけど、最初に出す作品であることをめちゃくちゃ意識していて。「これがPURIKURA MINDだ」というEPですね、簡単に言うと。今は曲単位で聴かれる時代だし、アルバムとかEPという考え自体が古いんでしょうけど(笑)、やっぱりロマン主義なんでしょうね。

――リード曲「Neither A nor B」には〈くだらない奴らは放っておいて/僕らはこのままで〉という歌詞があって。バンドをやることへの決意表明のようにも聴こえます。

自分がやっていたバンドがどんなバンドだったか、それをなぜやめて、なんでPURIKURA MINDを作ったか。それを全部入れたかったんです。僕はロックスター気質でも何でもないし、中途半端な人間だと思ってるんですけど、そのこと自体を提示したかったというか。この曲を聴けば“PURIKURA MINDはどういうヤツがやってるバンドなのか”がすべてわかると思います。

――オルタナ経由のロックサウンドもめちゃくちゃカッコいいですね。

ありがとうございます。最初のリフとかはけっこうニルヴァーナっぽいというか、「90年代のオルタナが好きなんだろうな」とわかるようにしたくて。アレンジに関してはメンバーに任せているところもかなりあるんですよ。「こういう音にしたい」というのもあるんですけど、完全にひとりで作っちゃうとバンドでやる意味がないので。それぞれの解釈も入れてほしいし、スタジオで「これはいいね」とか「このフレーズは好きじゃない」とか言い合って、取捨選択しながら作ってます。

――すごくオーソドックスなやり方ですね。

そうですね。メンバー全員、等しく“PURIKURA MIND”という名前を背負ってほしくて。バンドの楽曲って、お菓子作ってる会社のお菓子、洋服屋の服と同じでいちばん大切じゃないですか。そこだけは四等分というか、それぞれ責任を持ってやらないとダメだと思うんで。レコーディング、めちゃくちゃ楽しかったですね。もちろん緊張したり失敗したり苦戦もしたけど、完成するとすごい感動があって。たぶんずっと苦労するし、ずっと後悔し続けると思うけど、それもバンドだと思うんですよね。

――そのひとつひとつがバンドの物語になるんでしょうね。2曲目の「Lost in the Internet」はポップな側面が強く出ている楽曲なのかなと。

海外でちょっと流行っているハイパーポップを取り入れてますね。”インターネットからの脱出“というテーマなので、いかにもインターネットっぽい音楽をバンドでやるのがいいんじゃないかなと。コロナの時期にすべてがオンラインで完結できる時代になったじゃないですか。それがすごくさびしいというか、嫌なんですよ。Skypeで話したり、ネットでゲームをするのも好きだけど、やっぱりさびしい。面と向かって話したいし、ハイタッチしたいし、一緒にお菓子を食べたいという気持ちも強いし、「これ以上そっち側に行かないでくれ」という曲ですね。

――なるほど。「丁寧な暮らし」は曲名と真逆のラフなロックンロール。

“丁寧な暮らし”って言葉が流行ったことがあったじゃないですか。モーニングルーティーンがあって、仕事に行って、帰ってきたらしっかり洗濯と掃除をして、体に良くて美味しいごはんを食べて、Netflixで好きな映画を見ながらリラックスする、みたいな。僕はもちろんそういう人間ではないので、“丁寧な暮らし”という言葉を聞くのが苦しかったんです。だったらそれを皮肉ってやろうと思って作ったのが「丁寧な暮らし」ですね。まったく真逆の生活を歌ってるっていう(笑)。この曲に対して「不幸ブランディングしてる」みたいな意見があったんですけど、別にブランディングしてるわけではなくて、不幸なときは不幸と書くし、幸せなときはそれを歌うのがリアルだと思ってるんですよ。

――その感覚は「週刊少年ヘルプレス」にも通じてるかも。〈どうせ、大した事にはね/成れないままに死んじゃうから〉という本音をぶちまけていて。

「Helpless」という青山真治監督の映画があって。“北九州サーガ”の第1作なんですけど、本当に救いがない映画なんです。ウチのギター(喜多村勇成)も北九州出身で、“バンドで成り上がりたい”みたいな感じで上京してきて。ドラムの川島(攻)もベースの高橋(遼真)も、たぶんすごい夢を持ってバンドをやろうとしているし、めっちゃ覚悟を持って踏み出していると思うんですね。希望があるからそれが出来たと思うんだけど、「そんなの全部ありえないぞ」ってちゃんと言っておきたくて。自分もそうで、バンドをやったり歌うことに意味なんかないし、上手くいかないってわかってるけど、それでも1%の可能性を掴むためにやってるんだぞっていう。

――でも、「諦めたい夜」では微かな希望も歌ってますよね。

じつはこの曲、前にやってたバンドのときに書いた曲で。当時はバンドをやってるのがきつくて、もう全部捨てたい気持ちになってて。でも、PURIKURA MINDを組んだ後「そしたらまた/明日の朝に会おう」という歌詞が書けた。それってたぶん、僕が初めて書いたポジティブな歌詞なんです。「それでもやりたい」ということを言えた曲になったし、だったらこのバンドで録りたいなと。まあ結局、今も大して変わってないんですけどね(笑)。バンドやってて得なことってあまりないし、親も心配するし。
地元の友達はちゃんと就職してるのに、僕は東京でフリーターやりながらバンドをやって。100人、200人集めるくらいは頑張ればやれるだろうけど、その先は才能や他と違う発想がないと上にいけないんですよ。バンドやっててよかったとか、まだ思ったことないですね。

――最後の「漫画」については?

地元の友達で”両親が漫画家”ってヤツがいて。兄貴も絵が上手いんだけど、そいつは本当にダメで、何もしないんですよ。仕事もしてないし、借金だらけだし、友達も少ない。でも、そいつがいてくれることで僕は誇れない自分を守れる感じがあるんです。なので〈貴方に一人きりで居て欲しいよ〉って歌ってるっていう、めっちゃ最低な歌で(笑)。

――何もしてないダメなお前を見て安心したいから、ダメなままでいてほしいっていう……確かにひどい(笑)。

お客さんに対しても同じようなことを思ってるんですよね。めちゃくちゃ自分を誇れる人は、PURIKURA MINDの曲を聴かない気がしてるので……。「漫画」は僕らのことを理解しようとしてくれる人に〈そのままでいてくれ〉と言ってる歌でもあるんですよね。

――3月にはEP「Starter Kid’s」のリリースツアーが大阪、東京で開催されます。

前回の自主企画は2曲しか出してない状態だったので、お客さんは予習もできなかったんですよ。ライブで初めて聴く曲が多くて、それはそれでよかったと思うんですけど、今回はEPが出た後のツアーなので、ライブに来る価値を確かめたいと気持ちがあって。今ってたぶん、現場主義みたいなものの価値がどんどん薄れてると思うんです。ただ、僕らはそこにも抗いたくて。それもロマン主義みたいなものなんですけど、僕は平成11年生まれなんですけど、令和になっても平成のモラトリアム感を続けたくて。

――なるほど、それが”PURIKURA MIND”なんですね。

はい。僕が生まれた1999年はライブに行く意味がめちゃくちゃあったし、ライブハウスにも価値があったはずで。今はそうではないとわかってるんだけど、やっぱりライブを見てほしい。それはこっちのワガママでしかないし、もっとエンタメをやらなくちゃいけないと思ってます。今は自分たちだけでそれを実現できないので、大阪も東京もゲストバンドに出てもらうことになってます。

――将来的にはPURIKURA MINDのエンタメを確立したい、という気持ちもある?

そうですね。曲を作る、ライブをやることが基本なんだけど、ラジオやインタビューだったり、ブログを書くこと、グッズを作ることだったり、なんだってできるじゃないですか。僕はもともと漫画家になりたいと思ってたり、携帯小説サイトに投稿してたこともあって。それもバンドを続けてればできるかもしれない。僕にとってPURIKURA MINDは屋号。そのなかで出来ることは何でもやろうと思ってます。

Text:森朋之 Photo:吉田圭子

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<リリース情報>
PURIKURA MIND 1st EP「Starter Kid's」

発売中
価格:1,650円

【収録曲】
1. Neither A Nor B
2. Lost in the Internet
3. 丁寧な暮らし
4. 週刊少年ヘルプレス
5. 諦めたい夜

<ライブ情報>
PURIKURA MIND pre. ANYONE CAN PLAY TOUR

3月3日(日) 大阪・福島2nd LINE 2024
w/ セルフィッシュガール、171、Rudo、トップシークレットマン

3月22日(金) 東京・下北沢 DaisyBar
w/ JIGDRESS、Haze

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2345835

公式サイト:
https://purikuramind.com/

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