日本の「ヤクザ」、核物質を密売しようとしたとして起訴 米検察

バーンド・デバスマン・ジュニア、BBCニュース、米ワシントン

アメリカの検察当局は21日、日本の「ヤクザ」とされる人物を、核物質を密売しようとした罪で起訴したと発表した。

検察などによると、エビサワ・タケシ被告(60)はウランとプルトニウムを売ろうとした。それらは核爆弾の製造のためイランに移送されると、同被告は考えていたという。

エビサワ被告と、共に裁判にかけられているタイ人の被告は、2022年4月に武器と麻薬に関連した犯罪容疑で逮捕された。エビサワ被告は現在、ニューヨーク市ブルックリンで拘束されている。

今回の起訴で有罪とされれば、終身刑が言い渡される可能性がある。

米当局によると、エビサワ被告は日本の組織犯罪集団の幹部で、スリランカやミャンマー、タイ、アメリカで活動していた。共謀者らと共に、タイで核物質のサンプルを米麻薬取締局(DEA)の潜入捜査官に見せたという。この捜査官は、イランの将軍とつながりをもつ麻薬や武器の密売人を装っていたとされる。

核物質のサンプルはミャンマーから持ち出されたもので、タイ当局が押収し、米捜査当局に引き渡された。米研究施設が分析したところ、ウランと核兵器に使えるレベルのプルトニウムが含まれていたという。

検察はまた、エビサワ被告がミャンマーの反政府グループのために大量の武器を入手しようとしたとしている。地対空ミサイルやライフル、機関銃、ロケット弾、各種装備などだという。

マシュー・G・オルセン米司法次官補は21日、「こうした試みが成功していた場合の結果を考えるとぞっとする。これらの物質を密輸し、アメリカの安全保障と国際社会の安定を脅かす人物について、司法省は責任を追及する」との声明を出した

潜入捜査官にメール送信

検察によると、エビサワ被告は2020年2月、核物質を売り渡すとDEA捜査官に持ちかけた。同被告は暗号化された通信で、ウランは「健康によくない」と説明したという。

同年9月、エビサワ被告は鉱山会社名を記した手紙を電子メールでDEA捜査官に送った。50トンのウランとトリウムを685万ドル(現在のレートで約10億円)で売ると提示したとされる。

同被告はまた、「濃い色の岩のような物質」とガイガーカウンター(放射線測定器)が写った写真も送ったという。

エビサワ被告は、核物質の国際密売の共謀、麻薬輸入の共謀、対空ミサイルの入手・譲渡・所持の共謀、資金洗浄(マネーロンダリング)などの罪に問われている。

この事件の共謀者とされるタイ国籍のソンポップ・シンガシリ被告(61)は、麻薬と武器に関する罪で起訴されている。

両被告とも、有罪とされた場合は終身刑となる可能性がある。22日にニューヨークの連邦裁判所で罪状認否が行なわれる予定。

(英語記事 Japanese mafia boss conspired to traffic nuclear materials, says US

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