ロシア占領下のウクライナ東部にミサイル攻撃、訓練場にいたロシア兵60人以上死亡か

ロシアの占領下にあるウクライナ東部で20日、ロシア軍の訓練場に2発のミサイル攻撃があり、少なくとも60人のロシア兵が死亡したとみられる。ソーシャルメディアに複数の報告があった。

現地の状況に詳しい情報筋がBBCに語ったところによると、ロシア部隊は当時、ウクライナ東部ドネツク州の訓練場に集まり、上級司令官の到着を待っていたという。

攻撃を捉えた動画には、多数の死者が映っているように見える。

ロシア政府関係者は空爆があったことは認めたが、報告は「著しく誇張されている」とした。

報告によると、この攻撃は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相との会談の数時間前にあった。

会談でショイグ氏は、前線のいくつかの地域でロシア軍が成功を収めたと主張。最近掌握したウクライナ東部の要衝アウディイウカについても言及した。しかし、ドネツク州での出来事には触れなかった。

何があったのか

複数の報告によると、通常はシベリアのトランスバイカル地域を拠点とする第36機動ライフル旅団のメンバーはこの日、ウクライナ東部トルドウスケ村近くの訓練場で、東部軍管区第29軍司令官のオレグ・モイセエフ少将の到着を待っていた。

攻撃後の様子を捉えた動画では、攻撃を生き延びた兵士の1人が、旅団の司令官たちは兵士を開けた場所に立たせていたと言っている。

ロシア兵らは、アメリカ製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)から発射された2発のミサイルの攻撃を受けたとされる。

複数の動画や画像では、数十人の兵士の遺体が横たわっているように見える。少なくとも60人が死亡したと推定されている。

BBCはこの動画の検証を進めている。

トランスバイカル地域のアレクサンドル・オシポフ知事は、自身のテレグラム・チャンネルで、空爆があったことを間接的に認めた。ただ、これに関する報告の内容は「不正確で著しく誇張されたもの」だとした。

死傷者の数は明かさなかったが、関係するすべての兵士の家族に、完全かつ正確な情報が提供されるだろうと、オシポフ氏は述べた。

「誰1人、助けや支援を受けられないまま置き去りにはしない」

この空爆について、これまでのところウクライナ当局からの発表はない。

ロシア軍の損失伝えた軍事ブロガーが自殺か

こうした中、「ムルズ」の名で知られるロシアの軍事ブロガー、アンドレイ・モロゾフ氏が自殺したと、複数の親ロシア派情報筋は報告している。

モロゾフ氏のテレグラム・チャンネルには10万人ほどが登録している。同氏が最後に書いたとみられる一連の投稿には、アウディイウカを含む最近の戦闘におけるロシア側の損失についての報告を取り下げるよう、ロシア軍に強制されたとある。

ロシア側の最近の作戦で、兵士約1万6000人が死亡あるいは重傷を負い、装甲車300両が破壊されたと、モロゾフ氏は発信していた。

また、国営テレビの宣伝員に活動を停止させられたが、彼らはあまりに臆病で自分のことを殺しには来なかったと投稿していた。

「それなら自分でやってやる」とモロゾフ氏は付け加えた。「誰もこのささいな問題を引き受ける勇気がないのなら、私が自分を撃つ」。

BBCはモロゾフ氏の死をめぐる報告や、同氏がどのように死亡したのかについて、検証できていない。

ロシア軍が死傷者について報告することはほとんどないが、一部の親ロシア派軍事ブロガーは定期的に報告している。ウクライナも、最近の戦闘によるロシア側の死者は数千人に上るとしている。

BBCロシア語はロシアの独立系サイト「メディアゾナ」との共同プロジェクトで、オープンソースの情報を使い、ウクライナ侵攻が始まってからの2年間のロシア側の死者数を更新した。

これまでに死亡が確認されたのは4万5123人。このうち6614人は昨年10月以降に死亡した。昨年10月以降、1週間あたりの平均死者数は急増している。

追加取材:イリヤ・バラバノフ

(英語記事 Ukraine war: Dozens of Russian troops 'die in air strike'

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