【寄稿】男子ラクロス部スタッフ特集 学生の頂点へ!TR組織で未来を描く

躍進を続ける東京大学男子ラクロス部 (通称BLUE BULLETS)。昨シーズンは4年ぶりに関東準決勝に進出し、学生チャンピオンの日本体育大学との名勝負を繰り広げた。東大生がスポーツで日本一になる。そんな夢物語を本気で叶えるには、選手だけでなく、スタッフの力も不可欠だ。男子ラクロス部に脈々と受け継がれるスタッフマインドとそのユニークな仕事内容を3回にわたる特集でお伝えする。 (寄稿=東京大学運動会ラクロス部男子・米今咲喜、画像はすべてラクロス部提供)

東大ラクロス部のスタッフはチームスタッフ(TS)と 呼ばれ、2024年1月現在、3期の計14名で活動している。練習の運営をはじめとしてグラウンド内外で幅広い業務をこなすマネージャー(MG) 、選手の怪我(けが)のリハビリやフィジカル面の強化を担当するトレーナー(TR)、 自チームや他校をデータで分析し勝利へ繋(つな)げるアナライジングスタッフ(AS)と、職務内容によって3つのチームに分かれ、それぞれの専門性を磨いている。今回は、その中でも1番人数の少ないTRの3人を取材した。

「最初、ラクロス部には興味がありませんでしたが、とあるきっかけで試合を見た瞬間、ラクロスという競技のかっこよさに惹(ひ)かれ、すぐ入部を決めてしまいました。スコアが入った瞬間、CTO(相手オフェンスに対するディフェンスの動作がはまり、相手からポゼッションを奪い返すこと)の瞬間、ゴールキーパーのスーパーセーブ、どのシーンも見ていてもテンションが上がります!」そう生き生きとラクロスの魅力を語るのは1年生TR、 吉田まいあさん。

彼女の言う通り、地上最速の格闘球技の異名を持つラクロスは、激しいボディコンタクトとスピード感のある試合展開が魅力のスポーツ。その分深刻な怪我をする選手も多く、TRの果たす役割と責任は、他競技と比べても大きくなっている。

地面に落ちたボールを奪い合う GB。複数人が激しくぶつかり合うため怪我のリスクも大きい

クロスやボールによる打撲や、着地動作時の捻挫、疲労による腰椎分離など怪我の種類は多岐にわたり、入部してからも継続して座学での勉強を続ける必要がある。

加えて、怪我と一口に言っても選手の持つ痛みの感度は1人1人異なり、大事な試合前には無理して練習に入ろうとする選手も現れるのが難しいところ。そんな中で、リハビリやアウトの基準を出す必要があり、普段から密なコミュニケーションをとって選手の特性を把握するという、高い専門性が求められる。

初めは人に何かを伝えること自体が苦手だった吉田さんも、言葉だけでなく自分の体を動かして説明するなど工夫をし、自分が選手でないことを引け目に捉えずに積極的に行動するように心掛けているという。

2年TRの小林春菜さんは、リハビリのやりがいについてこう語る。「怪我で練習に入れなかった選手が、色々なリハビリの段階を経て、フィールドで生き生きとプレーしているところを見るとこちらまで嬉(うれ)しくなります。TRとして大きなやりがいを感じることのできる瞬間です。」

リハビリを指導する小林さん。1 年生の時には、人数の少ない同期プレイヤーを怪我で誰一人かけさせることなく大会に送り出し、全国準優勝を支えた

他にも、練習前にはアップの指揮や選手の体の状態を確認しながらのテーピングを通して、選手を最高の状態でフィールドに送り出し、練習中も選手の動きをよく観察することで怪我のしやすい動きや違和感を発見し、適宜選手に伝えることで怪我を未然に防ぐなど、練習中のTRは大忙しだ。

とはいえ、TRの出番は選手が怪我にまつわる場面だけではない。怪我を防止し、リハビリを主導することはメディカル面での役割であるが、同時にフィジカル面でもチームの強化を支える上で重要な役割を果たしている。

筋トレや体重の目標値を設定して毎週の報告を管理したり、栄養について勉強し食事面でのアドバイスをしている。辛い筋トレや増量も、TRの声かけをモチベーションに感じている選手も少なくない。

そんな数々の取り組みの中でも、他大学のラクロス部では珍しい取り組みもTRの主導の下、3年前から挑戦している。ラクロスで使うクロスを持つ場面以外を鍛えるフィールドトレーニングだ。アジリティ(機敏性)や筋出力(持っている筋力を発揮できる力)に着目したこのトレーニングでは、チューブを使って走ったり、立ち幅跳びなどユニークなトレーニングが盛りだくさんで、毎回の練習で20〜40分もの時間をとってチームで取り組んでいる。メニューは社会人のプロTRとともに考案し、基準値を設けて定期的に測定を行っている。加えて、各選手の成長度や、チームに不足している基礎技術を見極めてメニューを更新し、限られた時間で最大限の成長をうめるよう、日々試行錯誤を繰り返している。

一方で、このようなフィールドトレーニングは、クロスを持った実戦の練習と比べて成果が見えにくい分、導入当初は選手からの反発もあったという。「何もわからないのに、なぜTRにそんなことを言われないといけないのか、と選手に言われる時期もありました。自分はスタッフで、ラクロスをしていない時点でフィールドトレーニングの重要性を伝えることはかなり難しく、選手にとって腑(ふ)に落ちない部分もあることは理解していて、だからこそ、そこでめげずにいかに自分のできる範囲の質を上げるかが大事だと今は考えています。そうすることで選手からの信頼度を上げることは、難しいですが、TRにとって何よりも重要なことだと感じています。」

このように語るのは今シーズン4年生としてTR組織を率いる都築真珠さん。大勢の選手を前にTRとしてチームを率いることができるのは、彼女が過去3年間、この言葉通りに最大限行動し、皆からの信頼を積み重ねてきたからこそだと感じた。

そんな都築さんに、4年間の集大成となる今シーズンの野望を最後に尋ねた。「学生日本一です。学生日本一を取った時に、学生日本一にふさわしいTR組織だったと言われることが目標です。」

圧倒的な努力量で一目置かれる存在の都築さん。彼女の作る今シーズンの TR 組織に期待が集まる

カレッジスポーツのラクロスならではのスタッフ組織。そこには、プレイヤーに負けない熱量と行動量で進化を続けるTRたちの姿があった。東大ラクロス部男子のTR組織の今後の活躍に目が離せない。

今後も東大新聞オンラインでラクロス部の情報を発信していくのでぜひご覧ください。

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