インフルエンザ明けに出社しようとしたら「念のため、あと2~3日休んで」と言われました。これ以上「有休」を使いたくないのですが、本当に休む必要がありますか?

季節性インフルエンザにかかったら

季節性インフルエンザは、一般に高熱や悪寒などの症状が4~5日続くと言われています。ここからは、休んだ日数や医師の診断などのケース別に解説します。

体調が悪く、労務不能の場合

季節性インフルエンザに罹患し、発熱や頭痛などがあって働ける状態ではないときは、普通の風邪やけがと同じく、会社を休むことになるでしょう。

この場合は、従業員は労務提供ができない状態であるため、基本的には無給です。ただし本人が希望すれば、年次有給休暇を使って休むこともできます。なお、労務不能で休んだ日が4日以上に及んだ場合は、4日目からの日に対して傷病手当金も申請できるため、会社に相談してみましょう。

医師から「労務不能」と言われている場合

本人が「仕事が忙しいから休んでいられない」と会社に出ようとしても、医師から「労務不能」と言われている場合は、休まなければなりません。

この場合も、本人の体調が働ける状態にないため本人都合の休業となり、無給で休むことになります。もちろん本人の希望で、年次有給休暇を使うことはできます。

季節性インフルエンザから回復したら

熱も下がって体調も回復し「明日から出社できます」と会社に連絡したところ、「あと2日くらい休んでいて」と、会社から休業を命令されることがあります。この命令は拒否できないのでしょうか? 解説します。

会社から休業命令がある場合

季節性インフルエンザにかかると、症状が治まった後も、一定期間は周囲に感染させるおそれがあります。そのため、会社としては、社内の感染防止を考え、インフルエンザに罹患した従業員には一定期間休んで完全に回復したと言い切れる状態になってから出社してほしいと考えることがあります。

この休業命令は、他の従業員への安全配慮に基づくもので、違法ではありません。そして休業命令も業務命令ですから、拒否すれば懲戒の対象になることもあり得ます。

休業手当が受けられる

労務提供ができるにもかかわらず、会社からの命令で休んだときは、労働基準法第26条の休業手当が受けられます。休業手当は、会社都合で休業させた場合に、従業員に支払う手当です。休業手当の額は、平均賃金(直近3ヶ月間の賃金を総日数で除した額)の60%です。目安として、月の総支給額が30万円の人の場合は、休業1日当たり6000円くらいです。

なお「平均賃金の60%では少ない」と思う場合は、会社と相談して年次有給休暇を利用することも可能です。

新型インフルエンザの場合

ここまでは季節性インフルエンザの話をしてきましたが、新型インフルエンザの場合は、感染症予防法による就業制限の対象となっています。

しかし季節性インフルエンザと同様に、新型インフルエンザにかかり医師の指導により休む場合には、会社命令に基づく休業ではないため、休業手当は支払われません。医師による指導の範囲を超えて会社からの休業命令が出た場合は、季節性と同じく休業手当が受けられます。

まとめ

季節性インフルエンザから回復し、働ける状態になっても、会社から休業命令があったら休まなければなりません。年次有給休暇を使いたくないときは、平均賃金の60%の額の休業手当が支払われます。インフルエンザに限らず体調を崩しやすい冬の季節、健康には充分に気をつけて過ごしましょう。

出典

e-Gov法令検索 労働基準法 第26条
厚生労働省 新型インフルエンザ(A_H1N1)に関する事業者・職場のQ&A(平成21年10月30日)

執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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