あいまいな旅行記 3月上旬の網走で流氷を見ない、網走監獄でゴールデンカムイを回想する

1月下旬の網走地方に流氷接岸のニュースや、2月上旬の羅臼沖合でシャチ数頭が流氷に閉じ込められているといったニュースが目に留まったのは、昨年3月に網走で流氷を見られなかったからかもしれない。今年もなんかギリギリのタイミングが迫っていて、流氷を見たいなら早く決めないと。これは昨年2023年3月上旬に網走に行った話。

LCCは酔って夜中に予約する

夜中に家で一人で飲んでいて、LCCのセールを見ていると、勢いで飛行機を予約しちゃうことが、たまにありますよね。どこかに行きたいなと、ピーチのあちらこちらの路線を検索していて、成田-女満別が片道7~8000円くらいだったと思うけど予約した。網走は驚くほど久しぶりだし、ぎりぎりだけど流氷も見られるかもしれない。

復路の城県上空

成田空港へは、いつも東京駅からの高速バスを利用する。所要時間は1時間くらいで、定時運行の確率は高くて飛行機に乗り遅れたことはない。料金は、利用し始めた頃は片道900円、そのあとは1000円くらいだった。

コロナ前にはできた予約はできなくなっていて、料金も1300円に上がっていた。それでも安いけど、ひっそりと3割値上げって、けっこうな大幅。でもコロナを経て、いろんな事情で値上げを受け入れる心情になっている。

女満別空港からは、飛行機の時間に合わせて網走まで連絡バスが出ていた。知床方面へのバスもあって、これも便利そう。網走の中心街までは30分ほどだったか、白い雪原や雪に覆われた湖、低い太陽の方角を見ていて飽きない。網走湖を過ぎたあたりで網走刑務所が左に見えて懐かしい。40年ほど前にサイクリングで来た。

楽天トラベルで予約して、網走駅近くのホテル北海に2泊した。寒そうだし夕飯食べに外に出るのも面倒で2食付きにした。2泊で15000円くらい。ホテルは空いていたけど、部屋は川側ではなく道路側で残念だった。使う部屋を狭い範囲に固めるということもあるのかもしれない。

流氷の状況はネットで見られるけど、直接様子を聞こうと流氷観光船が発着する道の駅まで歩いた。川沿いの道は景色がよかったけど、滑って歩きづらかった。さらに川に近い歩道を歩こうとすると、膝くらいまで雪に埋まってダメだった。諦めて戻った駅前通りの歩道には、ところどころに水たまりがあって、もう網走も暖かくなっている。

道の駅を通り過ぎて、そのまま海に向かった。海に流氷は見えなかった。薄暮は白く、オホーツク海を挟んで雪を被った知床半島が見えた。まだ行ったことがない知床は、なんか神々しく見えて、流氷が見られるかは分からないけど、網走に来てよかったと思った。次の機会には行ってみたい。

観光船ターミナルのホワイトボードには、風で流氷は沖に流され、今日は見られなかったとあった。窓口の人に聞くと、明日も分からない。ただ、おーろら号とは別の小型の流氷観光船だと、航行時間も2時間半程度と長く、流氷を探しながら行くから、見られるかもしれないと希望をくれた。翌朝ターミナルに行くと、流氷観光船は強風のため欠航になっていた。

移築・保存に感謝、囚人たちの北海道開拓史を知る

気持ちを切り替えて博物館網走監獄まで1時間半ほど歩いた。車窓から見た、今も使われている網走刑務所を過ぎて、網走湖畔から山の中腹まで歩いたところに博物館はあった。坂を登りながら、前に来たときは網走刑務所に行くのに自転車でこんなに坂を登らなかったと思いつつ、博物館に着いてから移築されたのを知った。

博物館網走監獄

博物館網走監獄は1983年に、この場所に移築保存された。東京から輪行してサイクリングで訪れたのは1976年くらいだから、移築される前に、さっきの場所で現役時代の建物群を見ていたことになる。1970年代に改築の計画が持ち上がり、当時の網走新聞の社主が保存運動をおこし、移築費用の原資も個人保証したんだそう。

それから50年も経っているのに、日本の大企業などうなっている。JR東日本は自分たちのルーツでもあり、保存すれば世界遺産級の高輪築堤跡の大部分を再開発で埋めたいし、伊藤忠商事や三井不動産は外苑前のイチョウ並木を伐ってビルを建てたがっている。

五翼放射状房のスタイリッシュなこと

博物館に移築された建物群のうち、今、8棟が国の重要文化財に登録されている。見学しながら、保存してくれたことに感謝した。特に囚人が収監された五翼放射状房と呼ばれる建築スタイルの舎房はスタイリッシュで美しい。誰かが気づかないと、こんな建物も壊されてしまうんだと恐ろしい。

五翼放射状房の特徴。1カ所で5つの棟が監視できる

その夜、ホテルに戻ってから部屋でゴールデンカムイの網走監獄襲撃の回を、持ってきていたパソコンで、アマゾンプライムで見なおした。昼に博物館で見たばかりの建物群がリアルに描かれていて、気分があがった。

博物館の展示から、囚人の生活、網走監獄に収監された重罪人たちが屯田兵に先立ち道路の敷設などに使役し、北海道開拓を担ったことを初めて知った。ゴールデンカムイの準主役の脱獄王、白石に網走監獄から実際に唯一脱獄した囚人のモデルがいたことや、警察官に追われている時に五寸釘を踏み抜きながら数キロを逃げた「五寸釘の寅吉」のエピソードも面白かった。

女満別空港まで歩こうか

翌日も船は欠航だった。2022年、それほど離れていない知床で観光船の痛ましい沈没事故があった。欠航は残念だけど仕方ない。ほかに網走ですることが思いつかず、女満別空港まで歩くことにした。ネットで見ると4時間半くらい。飛行機は夕方だし、時間的には問題ない。4~5時間くらいなら、雪景色を見ながら歩くのもいい。雪原の網走湖でハクチョウやカモを眺められそうだし。

水鳥には水が必要だった

網走湖は川が流れだすあたりは凍っていなくて、そこにハクチョウやカモはいた。でもその先に凍っていない場所はなく、鳥もいなかった。そうか、エサをとるのにも、凍っていない場所が必要なんだ。

バードウォッチングが不発に終わって、2時間ほどで歩くのに飽きて、呼人駅から電車に乗った。車窓を眺めながら、こうした路線を囚人たちが開拓したんだと思いながら、ただ電車に乗っているのは楽しかった。車内には乗り鉄だか撮り鉄らしい数人が乗っていて、停車時間の長い駅では車外に出て写真を撮っていた。

網走方面へ走る列車

女満別空港に近い西女満別駅は木々に隠されたような駅舎だった。駅前にはなにもなくて、1分歩いて振り返ると、駅がどこにあるのか、もう分からなかった。下車駅でよかったけど、乗車駅だったら、あたりに人もいないし駅を見つけられたか分からない。

女満別空港までは歩いて30分ほどだった。駅と違って空港は大きいから見つけやすかった。空港でちょっと高級な立ち食い寿司とビールで飛行機を待った。もう遠い昔の気がするけど、この時には全国旅行支援の地域クーポンがあって、それを使い切った。(おわり)

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