FXの「トレード記録」をマメに付けている初心者トレーダーが陥りがちな落とし穴【月利30%トレーダーが解説】

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初心者トレーダーはトレード記録を付けたほうが上達が早いといわれています。トレードの振り返りを行うことで、同じミスを防いだり、過去の相場の分析を行うことで、値動きの予測をしたりすることに役立つためです。しかし、向上心を持ってマメにトレード記録を付けている初心者ほど、注意すべきことがあって……。今回は、初心者トレーダーがトレード記録を付けるときの注意点について、株式会社ソーシャルインベストメントの清水一喜氏が解説します。

トレード記録の落とし穴

FXを始めたばかりの人や、自分のトレード手法が確立していない人で、トレード記録をつけている人は多いでしょう。トレードの記録は、同じミスを立て続けに行わないための抑止力となります。また、新しい手法を取り入れる際に、トレードの優位性を検証するための有力なデータとなることもあります。

そのため、トレード記録をつけている人とそうでない人を比べたときに、トレード記録をつけている人のほうが格段にトレードの上達スピードが早い傾向があります。

しかし、トレードの上達には欠かせないトレード記録ですが、トレードにおける「認知バイアス」を意識していないと、かえって上達スピードが遅くなってしまう可能性があります。

人間には過去に起きた経験よりも、直近で起きた経験を判断材料にするという認知バイアスがあります。この認知バイアスを知っているかどうかで、トレードの上達速度は格段に違ってくるでしょう。「直近バイアス」に陥った初心者トレーダーの例をもとに、優位性のある分析とはなにかを考察していきましょう。

「直近バイアス」に陥る初心者トレーダー

直近バイアスとは、意思決定をする際に合理性や理論よりも直近の経験を判断材料に用いてしまう認知バイアスのことです。

直近の経験が、その時点で合理性を持った経験であれば問題ありませんが、まったく役に立たない非合理的な経験であったとしても、意思決定に影響を与えてしまいます。直近バイアスによってもたらされる認知の歪みは、日々のトレードで大きな影響力を持っているのです。

自分のトレードを随時記録している初心者トレーダーは多いでしょう。積み上げた記録をもとに、次のトレードの戦略を立てるトレーダーは多いはずです。

直近バイアスに陥ってしまったトレーダーは、トレード記録の直近の部分に重きを置いてトレード分析を行います。直近バイアスに陥ってしまうと、過去に記録した良質なトレード記録も意味がなくなってしまうのです。

さらに、直近で非合理的なトレードを行なっていれば、トレードルールに逆らったトレードであっても正当化されてしまう可能性があります。トレードの記録を付けているのにも関わらず、収益が安定しないトレーダーは、一度自分が直近バイアスに陥っていないか確認してみるといいでしょう。

認知バイアスに左右されない判断能力の鍛え方

認知バイアスは、人間の本能的な部分でもあるため、意識して意思決定を行う必要があります。特にFXでは、金銭的な評価も加わるため、普段の行動以上に意識的にトレードを行う必要があります。

認知バイアスに左右されない判断能力は、「合理的に意思決定を行うこと」で鍛えることができます。経験の良し悪しやそのときどきの気分に合わせるのではなく、過去の事例をいまどのように活かせば、優位性の高いトレードができるかを考えるべきです。

「数年前の事例より、最近起きたことのほうが現在のトレードに活かすことができる」と考えることは、その時点で直近バイアスに陥っている証拠です。トレードに活かせるかどうかの判断基準は、いつ起きたかではなく、どのような状況下で起きたのかです。

FXは、同じ値動きがもう一度起こることはありません。しかし、相場の条件が揃えば、同じような値動きが訪れることがあります。過去のトレードを振り返ることは、値動きのパターンを見つけ出すために必要なことでしょう。最近のことだけではなく、過去にも同じようなことが起こらなかったか調べることで、客観性の高いトレードを行うことができるでしょう。

客観性を意識するだけでトレードの成績は大きく変化する

今回は、数ある認知バイアスのなかでも、直近の出来事に重要性を感じてしまう直近バイアスについて解説しました。また、FXで継続的に利益を出し続けるためには、認知バイアスを理解したうえで、客観的なトレードを行う必要があることも解説しました。

生活していくうえで、直近に起こったことは記憶に新しく、非常に有益な経験であったと考えてしまうのが人間の本能です。しかし、トレード分析を行ううえで大切なことは、客観的な分析をもとに合理的な判断を行うことです。直近バイアスに基づき、記憶が新しいからという理由で、トレード判断を行うと思いもよらぬ場面で損失を被ってしまいます。

マメにトレード記録を付けていて向上心のあるトレーダーほど、直近バイアスに陥ってしまうと抜け出せなくなる可能性が高まります。いま、十分にトレード成績が出せていない人は、自分がトレード判断をする際に客観性を保てているかどうかに着目するとよいでしょう。

清水 一喜

株式会社ソーシャルインベストメント

執行役員

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