年金制度、財務省曰く「これが最適」だが…紐解くと恐ろしい「日本の借金」

(※画像はイメージです/PIXTA)

「日本は超少子高齢化社会に突入しているのに、本当に将来に年金がもらえるのだろうか」。多くの人が不安に思うところであるが、日本の公的に年金制度は、少なくとも5年ごとに「財政検証」を行っており、おおむね100年という長期の財政収支の見通しを行っている(前回は2019年、次回は2024年を予定)。「それならば大丈夫!」と安心していいものなのだろうか。

厚生労働省は「年金は大丈夫」と言っているが

日本の公的年金は賦課(ふか)方式であり、現役世代が納めている保険料が、そのときの年金受給者への支払いにあてられている。超少子高齢化社会の日本において、支える側と支えられる側のバランスは崩れつつあり、現在5人に1人であるところが、30年後には2.2人に1人の割合で現役世代が年金受給者を支えなければならなくなると、予想されている。

“賦課方式では、社会的扶養の仕組みであるため、その時々の現役世代が負担する保険料を財源として、年金を給付します。

少子高齢化が進行すると、保険料を負担する現役世代の人数が減り、年金を受け取る高齢者の人数が増加していきます。

このため、賦課方式のもとで年金の給付水準を維持しようとすると、現役世代の保険料負担が増えてしまうことになります。逆に、現役世代に保険料負担がかかりすぎないようにすると、年金の給付水準が下がってしまいます。”厚生労働省『いっしょに検証!公的年金」より

なぜ、このような制度を採用しているのか。同サイトには以下のような記述がある。

“公的年金は、皆さんが安心して暮らしていくための保険であり、高齢で働くことが困難になったときなどの生活を支えるという役割も担っています。そのため、年金としての価値が下がる可能性がある積立方式のリスクは、無視することができません。

逆に、賦課方式の場合は納められる保険料がそのときの給与水準に応じたものであるため、給付に関してもその時々の経済状況に対応しやすいというメリットがあります。

(国民年金の保険料は個々人の収入によらず定額ですが、社会全体の給与水準の変動に応じて、毎年度の具体的な金額は変動します。また、厚生年金の保険料は給料に対する定率なので、個人の給与水準が変化すれば、納める保険料も変化します)

アメリカやドイツなど諸外国の財政方式をみても、最初は積立方式で始まったものの、予測できない社会や経済の大きな変化に事後的に対応していくなかで賦課方式を基本とする財政運営に変わっていきました。

日本の公的年金制度は、賦課方式を基本としながらも、積立金を保有するメリットも生かした財政運営を行っています。今の日本では、これが公的年金制度に最も適した財政方式ではないでしょうか。”

「年金」だけを取り上げてみると、5年ごとに行われている財政検証もあるし、「なんとか成り立つのかな」と思ってしまうところだが、別の角度から見ると、恐ろしい事実が見えてくる。

借金「35.4兆円」の凄まじさ…令和6年度予算案

厚生労働省のサイトから、財務省のサイトに飛んでみよう。「これからの日本のために財政を考える」というコーナーでは、日本の財政の状況がわかりやすく説明されている。

令和6年度予算案の一般会計歳出112.5兆円のうち、「年金」が含まれる「社会保障」にあてられているのは37.7兆円である。「社会保障」には「年金」のほか「医療」「介護」「子ども」「子育て」等が含まれる。

この112.5兆円のうち35.4兆円は公債金に依存している。すなわち借金だ。そして、同サイトには以下のように書かれている。

“現在、①税収等では歳出全体の約2/3しか賄えておらず、残りの約1/3は、②公債金(借金)に依存しています。

この借金の返済には将来世代の税収等が充てられることになるため、将来世代へ負担を先送りしています。”

「将来世代へ負担を先送り」と、はっきりと記載されている。超少子高齢化において、「年金制度は破綻しないのか」という問題の先に、「日本の財政は破綻しないのか」があるわけだ。何が原因なのか。同サイトは「社会保障」の負担増を取り上げる。

“社会保障は、年金、医療、介護、子ども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約1/3を占める最大の支出項目となっています。

社会保障制度の基本は保険料による支え合いですが、保険料のみでは負担が現役世代に集中してしまうため、税金や借金も充てています。このうちの多くは借金に頼っており、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況です。”

“今後、高齢化はさらに進展し、いわゆる「団塊の世代」が2022年には後期高齢者である75歳以上となりはじめます。

75歳以上になると、1人当たりの医療や介護の費用は急増することから持続可能な社会保障制度を作るために残された時間はわずかです。”

「年金制度は破綻しない」「現状ベストな制度である」ということを強調していた厚生労働省のサイトと比較すると、ずいぶんとトーンが違う。

財務省が国民に伝えたかったことは何か…?

とはいえ、財務省のサイトではこのあと、解決策として「消費税の引き上げ」が提示されている。

「何が目的で書かれているのか?」という視点で紐解けば、厚生労働省は「年金は大丈夫ですと国民に知ってもらいたい」、財務省は「消費税を引き上げなければならない理由を国民に納得してもらいたい」というところだろうか。

いずれにせよ、今後また大きな金額が必要となってくることは間違いない。というのも日本の予算は増加傾向にあり、超少子高齢化が進むなか、高齢者への社会保障給付、子育て世帯への支援金給付は今後も増していくとみられるからだ。

「最後は国がなんとかしてくれる」と安心することは決してできないだろう。

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