矢田亜希子、約30年のキャリアでの“変化”を語る デビュー作と『ラヴィット!』が転機に

1995年に『愛していると言ってくれ』(TBS系)で鮮烈なデビューを果たして以降、ドラマを中心に数々の作品に出演してきた矢田亜希子。現在放送中のドラマ『ナースが婚活』(テレ東系)では、2011年放送の『シマシマ』(TBS系)以来、12年半ぶりに主演を務めている。近年は水曜レギュラーを務めている『ラヴィット!』(TBS系)で等身大の姿を披露するなど、新たな一面を見せている矢田に、久々の主演ドラマや約30年におよぶキャリアについて語ってもらった。

ーー『ナースが婚活』で矢田さんが演じているナース専門の結婚相談所「ナースのとも」代表の横山陽子は、元ナースで自身も長年の婚活を経験した過去を持ち、婚活迷子たちを次々に結婚に導くカリスマという、なかなか強烈なキャラクターです。

矢田亜希子(以下、矢田):そうなんですよ(笑)。とにかくキャラが濃いですし、言っていることも結構強いので、いかに説教じみた感じにならず、視聴者の方を惹きつけられるキャラクターにできるかを意識しながら演じていました。

ーー今まであまり演じたことのないようなキャラクターですよね。

矢田:確かにそうですね。身振り手振りも激しくて、相当変な動きもしていると思うので。笑わせようとしているわけではなく、至って真面目にやってはいるんですけど……(笑)。セリフが多いので、まずはセリフを頭に入れる作業が大変でしたが、私自身も楽しく明るくやらせていただきました。

ーードラマで描かれている「婚活」というテーマに関してはどういう印象を持たれましたか?

矢田:最近よく耳にする言葉でしたが、この作品をきっかけに結構イメージも変わりましたね。結婚したい方は絶対に婚活した方がいいと思いました。

ーーそれはどういう理由で?

矢田:やっぱり恋愛と結婚は全然違うものだと思うので。この作品をきっかけに、女性は婚活についての意識が高くなると思いますし、男性にとってもいろいろと気づきがあるのではないかなと思います。

ーー矢田さんにとって12年半ぶりの主演ドラマということで、最初に情報が出たときは大きな話題になりました。

矢田:ビックリですよね。私もニュースで見て知ったんですよ(笑)。「あ、そっか!」とハッとさせられました。

ーーそこはあまり意識されていなかったんですか?

矢田:主演にこだわることが今までほとんどなかったので、言われて初めて気づく感じでしたね。でも、私の友達や知り合いもみんな口を揃えて楽しみと言ってくれていたので、それはすごく嬉しかったです。

ーー1995年のデビュー作『愛していると言ってくれ』から約30年のキャリアになります。その中でも数々の作品で主演を務めていらっしゃいますよね。

矢田:20代の頃は主演やヒロイン役をやらせていただくことが多かったのですが、最近はゲスト出演も増えましたし、刑事役や毒親役など幅広い役柄のオファーをいただくようになりました。「とうとうこんな役まで来たか」というオファーもあったりするのですが(笑)、私もいろんな役に挑戦できることが毎回楽しみでもあって。毒親なんかは今だからこそオファーを受けてみようかなと思えた役でもありましたので、どういう役で声をかけていただけるのかも、私自身すごく楽しませていただいています。

ーーそんな輝かしいキャリアの中で、ターニングポイントとなった作品はなんでしょう?

矢田:作品で言うと、やっぱりデビュー作の『愛していると言ってくれ』です。デビュー作でいきなり大役を任せていただいたので、今振り返ると本当に恵まれすぎていたなと思うんですが、当時はそういうことに全く気づけませんでした。意地悪な女の子の役だったので、「意地悪」「嫌なやつ」とか結構マイナスな反響もあって……(笑)。

ーー『愛していると言ってくれ』の榊栞役は、デビュー作にしてかなりのインパクトがありました。

矢田:2000年くらいになって、性格のいいかわいらしい役やお嬢様役を演じることが増えたんですけど、そうしたら世間の私に対するイメージも“いい人キャラ”みたいになったんです。あれだけ「嫌なやつ」とか言われていたのに、「テレビこわっ!」と思いましたね(笑)。

ーー(笑)。

矢田:30代に入ると、子供もできて親になったので、それまではあまりできなかったような刑事ものやサスペンスものにも呼んでいただけるようになりました。年齢とともに、確実にできる役が増えているのは自分自身でも実感しています。

ーー直近では『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)まどか役の“毒親っぷり”はものすごいインパクトがありました。

矢田:『日曜の夜ぐらいは...』のまどかは、同じ母親としては共感するところが何ひとつない、すごく複雑な役でした。演じる上でも「こんなセリフ言いたくない」という葛藤もありましたが、それこそ賛否たくさんの反響をいただけて光栄でした。いろんな役柄を与えてくださる、作り手のみなさんにも感謝ですね。

ーー実際、役柄のイメージで見られるのはどんな感覚なんでしょうか?

矢田:まったく気にならないかと言ったら嘘になります。ただ、自分でやっているInstagramとかもそうなのですが、私はファンの方の意見を大事にしていて。ファンじゃない方に何を言われても構わないのですが、ファンの方から「こんな役はやってほしくなかった」とか「この役は悲しい」というコメントがあると、「あ、やらない方がよかったかな……」と考えてしまいます。でもそれも、今の時代だからこそだと思うんですよね。30年前はSNSなんてなかったですから。『日曜の夜ぐらいは...』をやっていたときに、「もう『ラヴィット!』を楽しく見ることができません」というようなコメントがあったときは、「えー! それはちょっと待ってよ!」と思いましたけど(笑)。

ーー(笑)。『ラヴィット!』にレギュラー出演するようになってから、矢田さんのファン層もかなり広がったように感じます。

矢田:『ラヴィット!』のレギュラーを引き受けたのもターニングポイントになっていると思います。最初は、朝の生放送番組に週1でレギュラー出演するというのはすごく怖かったですし、「この私に何ができるんだろう」という気持ちでいっぱいでした。でも、やらせていただいてから約3年、年配の方から小さい子まで、たくさんの方々から「元気もらってます」とか「いつも見てます」と声をかけていただく機会が増えたのが、本当に嬉しくて。もちろんドラマを観て声をかけていただくのもすごく嬉しいのですが、それとはまた違った嬉しさがありますね。

ーー矢田さんの飾らない感じ、等身大の姿がとても素敵だと思います。お芝居とのギャップも感じますし。

矢田:えー、嬉しいです! バラエティではどうしても素が出てしまって、飾ったりは全然できないんですよね(笑)。このお仕事は本当に“学び”が大事だと思うので、プライベートも含め、なんでも自分の中に吸収しようと思っていて。それが演じる役柄にも必ず繋がっていくと思うので。より自分をパワーアップさせていきたいと思います!

(取材・文=宮川翔)

© 株式会社blueprint