美弥るりか独占インタビュー「恩返しをしつつ、サプライズを入れつつ、個性を深めて」【後編】

宝塚歌劇団を退団後、ジェンダーフリーな俳優・アーティスト・モデルとして活躍の場を広げる美弥るりか。
芸能生活20周年記念写真集『REFURBISH』の発売を控え、entax独占インタビューの後編では「ここからまた1年目の気持ちで」と語る美弥るりかの「あれから」と「これから」について聞いた。

―――この20年で思い浮かぶ、印象的だった時期は

3月にディナーショーを開催するのですが、今いろんな楽曲を振り返りながら選曲しているんです。宝塚で過ごした最後の1、2年は本当に駆け抜けてたって感じですね。退団に向けていろんなことをさせていただきました。自分の中で「こういう役ができて良かったな」というお役ができた時期でもありました。

最後の、珠城りょうちゃんがトップになってからの2年間くらいは、もう本当に自分の中で濃厚ないろんな感情を味わいましたし、いろんな奇跡にも出会えましたし、いろんな景色も見ましたし、たくさん笑ってたくさんうれし涙を流しました。「美弥るりか」という個性を貫いたら卒業したいという気持ちが強かったので、やっと自分に「もういいんだよ」と背中を押せたというか、言ってあげられた時ですね。それまではあまりにも自分に厳しすぎて、それで体調を崩して休演してしまった時期もあったんです。悪循環だったというか、誰も責めていないのに自分が「できてない、できてない」となりすぎて体調が悪くなったりしたので、そういう厳しすぎる自分からようやく「もういいんじゃない」と自分に思ってあげられたというのは大きかったです。

自分の中で、卒業してからのビジョンを考え出したのもその頃からでした。卒業後はどうしようかなと思った時に、宝塚最後の2、3年で個性を作り上げた分、切り離すことなく、ちゃんと残したまま今後の活動につなげていけたらいいなと思えたりもしたので、印象として浮かぶのはその時期ですね。

―――退団から4年、外の世界に出られてから見えたもの、驚いたこと、うれしかったことは

たくさんあります!それこそ今やってる舞台「メイジ・ザ・キャッツアイ」という作品も、一応性別は発表していない役なんですね。そういうのが成立するのはやっぱり宝塚の時代の経験があるから。例えば普通の女優さん俳優さんが、今私がチャレンジしている役をやってって言われても多分ちょっと難しいんじゃないかなっていう部分があったりするので。そういう意味では宝塚を卒業した時に「性別を超えた役をしたい」と思っていたので、自分が望んでいたものにすごく近いなと感じます。

あとは今、殺陣をする役がすごく多くて。卒業してからの方が全然殺陣をしてるんです。男の人よりも強い女性みたいな役をあてがわれることが多くて、今回もまた剣を振り回しています。実際男性とすると、今までと違いすぎて…。スピードも力も全く違うんです。これまでは女性同士でしたし、やっぱり宝塚大劇場がすごく大きいので殺陣を一個一個いかに長く大きく見せるかっていう方を重視して、リアルさというよりは美しさだったり、大きさだったり、あの大劇場を埋める殺陣っていうのをしてたんですよね。

でも今って劇場は大きいですけども、限られたスペースでリアルに男性とやるっていうことで、もうスピードと細かさと手数が全然違うんですよ。初めてやった時にいつも通りの力でパンッてやったら相手の力が強すぎて私の剣が飛んだんですけど、こんなに強い力でやられるのかと思って。結構危機を感じてホームセンターで剣と同じくらいの重さ、長さの木の棒を2本買って、近くの公園で夜中にその木の棒を振り回して練習するという日々を過ごしました。宝塚でやってきたけど全然それまでのものとは別の流派みたいな感じで今までの自分の技は通用してないんだって。本当に一から学び直すというかいかに俊敏に動くかっていうものを、夜中に公園でブンブン振り回して公園にいた人たちがいつの間にか誰もいなくなるまで。私もそれどころじゃなかったんで、初日近いんですみませんってもう夜中にブンブン振り回して。

今までのものを捨てる必要はないとは思うんですけど、やっぱり全然違うものを素直に受け入れるということ、できていないことをちゃんと自分で認めて吸収していかないと、かたくなに前のものを貫くということは、周りの方に失礼だなと思いましたね。いいところは残しながらも、柔軟に新しい情報をどんどん受け入れてアップデートしなきゃいけないっていうのはすごく焦っていました。毎回どの現場でもそういうものが必ず一つはあります。

―――もっと苦労なく何でもできる方のようなイメージがありました

いえいえいえ、不器用なので数をやらないとできないというのは昔から分かっているんです。とにかく練習あるのみという感じですね。私もそういう人に超憧れますよ。いるじゃないですか、セリフを覚えるのがすごく早い人。私もできるんじゃないかとか思って、たまに2、3回読んで台本をはずしてみるんですけど一行も出てこない。やっぱり私は数をやらないとできないんだなって。

―――お話を聞いてると、美弥さんがすごい楽しそうに見えます

学ぶことがあるってありがたいですね。生きがいじゃないですけど、やっぱりそれをクリアしたい、できるようになりたいっていう気持ちがあるじゃないですか。完璧にはできなくても、自分が努力したという安心感が欲しいというか。それはすごく糧になるというか自分の背中を押す材料の一つですよね。あとやっぱり、今でも自分の舞台を楽しみに劇場に来てくださったり、配信でも私の姿を見ようと自分の人生の時間を使ってくださる方がいるので。その方たちのために今回も良かったって思ってもらいたいという気持ちが強いですね。

―――ファンの方がモチベーションになっている

それはものすごくありますね。卒業してからも自分が表舞台に立つって実はあんまりイメージしていなかったんです。想像がつかなかった。その自分がこうして卒業後に芸能生活20周年を迎えることができたっていうのは、本当に皆さんのおかげでしかないです。

それこそ卒業してからボランティア活動もさせていただけて、皆さんが私を通して知ってくださったり協力してくださったりするんですよね。そうすると私一人の、皆様一人の力よりも、何倍ものサポートになるじゃないですか。それも本当にいつもありがたいですね。ビッグイシューの表紙を務めた時も、売っているのは知ってたけれど買ってなかったという方も、それが販売の方のサポートになるということを初めて知った方もいらっしゃって。今後、舞台など自分が表現することにプラスして同じくらい力を入れていきたい部分でもあります。

―――美弥さんが今会いたい人は

今年の1月1日に大きな地震があった時に私も自分の体で何かお手伝いしたいなって思いつつ、稽古と同時期だったので何もできなくてものすごくもどかしさを感じていたんです。だからこそ東京にいながらできることをしてはいたんですが、どんなに忙しくてもサポートに行かれている方を拝見するとすごいなといつも感銘を受けるんです。それもあって、お会いしたいなと思った方は女優の紗栄子さんです。今回もサポートに行かれていて、ご自分の影響力ももちろんあって、「いろんな企業さんがサポートしてくださって、現地の方に物資を届けることができます」という思いをInstagramで読んだりして、私もどうにかあそこに参加したいなって思っているところで。エンタメがすごく必要とされていますという声も聞いたので、宝塚の卒業生の子たちと何かするでもいいですし。そういう形を自分も持ちたいからどうしようって日々考えているところだったので、一度お会いしたいというか、すごく尊敬しています。

―――ファンの方、読者の方にメッセージを

このエンターテインメントという世界に自分が入って、そこで20年できているっていうのがまず自分でもびっくりなんですが…。1年目の、本当にまだ駆け出しでどこにいるかも分からない埋もれていた私を見つけて、一緒にこの長い期間を歩んでくださった方も、最近出会ってくださった方もいます。本当にその方々のおかげで自分がエンターテインメントという世界でできることを知って、自分なりの表現というものを見つけようとか、底力を私にもたらしてくださいました。エンターテインメントを愛してくださってる皆様に恩返しをしつつ、だけど「わっ!」と驚くようなサプライズもたまに入れつつ(笑)美弥るりかという一人の俳優が、個性が、年を重ねるにつれて深まっていったらいいなと思っています。今回の写真集もそんな自分の表現の一つになります。1ページ1ページちょっと驚きつつ、隅々までこだわりましたので、全ページを楽しんでいただけたらなと思います。

―――今日のファッションのポイントは?

今日はオールブラックでいきたいなというのがあったのと、このレザーの変わった形のシャツを着たかったので、それに合わせてコーディネートしました。いつもはここにパールを合わせちゃいがちなんですが、あえてネクタイでボーイッシュに。全身ブラックは写真の時に沈んじゃうかなと思って、靴だけギラっとさせちゃいました。

【作品情報】
美弥るりか 芸能生活20周年記念 写真集 『REFURBISH』
発売日:2024年3月10日(日)
A4版 80ページ/4,950円(税込)

©︎磯部昭子
©︎磯部昭子
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