一般選抜の合格者がいない「ゼロ大学」とは? 今やFランク大学は「推薦組8割」という衝撃事実も…

今や私立大入学者の約6割が推薦組といわれていますが、受験難易度が低い大学では、その割合が約8割にいたるという実態がわかりました。さらに一般選抜での合格者がだれもいない「ゼロ大学」の存在も発覚!?

私立大の約6割が推薦組。受験難易度が低い大学では約8割にも!

コロナ禍以降、「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」などで年内に合格が決まる「年内入試」が主流になりつつあり、私立大学にいたっては、約6割が一般選抜を経ない「推薦組」といわれています。 もはや「一般選抜」というペーパーテストによる学力重視の入試方式は、古いと揶揄されるほどの有様。 ところが実態を調べてみると、ボーダー偏差値(合格者と不合格者の割合がちょうど半分になる偏差値)が低い大学ほど推薦組が多いという衝撃事実が見えてきました。さらに、一般選抜での合格者がだれもいない「ゼロ大学」の存在も……。

今や「総合・推薦型選抜」が大学受験の主流というは誤解

今や国公立大を含めた大学受験における総合・推薦型選抜と一般選抜の比率は「5:5」となっています。しかし、これはあくまでも平均の話。国公立大に限っていえば、総合・推薦型選抜での入学率は2割ほどしかありません。まだまだ一般選抜が主流なのです。 一方で私大の場合は、入学者の半数以上が「年内入試」と呼ばれる「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」に加え、附属・系列校を経て入学した推薦組。その割合は約6割にものぼります。 しかし、この数字も私大全体の平均にすぎません。筆者は旺文社「2024年度用大学の真の実力情報公開BOOK」を参考に、大学入学者のうち総合型・学校推薦型選抜、附属・系列校からの入学者の割合(推薦比率)を調べてまとめてみました。 それよりわかったのは、私立大学のうち推薦比率が75%~100%の大学は、38.5%にも及ぶということ。また、推薦比率が50~75%の私大もほぼ同水準の36.8%です。つまり、入学してくる学生の半分以上が推薦組という私大は、実に75.3%(約4分の3)もあるのです。

推薦比率と偏差値は負の相関関係!? 一般選抜の入学者「ゼロ大学」も

さらに推薦比率と受験難易度は、“負の相関関係”にあることもわかりました。 ある地域のA~Lの12私大のボーダー偏差値帯(学部・学科ごとの偏差値の分布)と推薦比率を調べたところ、不都合な真実が浮かび上がったのです(グラフは「2024年度用大学の真の実力情報公開BOOK」旺文社より筆者作成)。

私立大学の推薦組(総合型・学校推薦型選抜、附属・系列校からの入学)の割合は、ボーダー偏差値が下がるほど、その割合が高くなるという不都合な真実が(「2024年度用大学の真の実力情報公開BOOK」旺文社より筆者作成)。

<私大の難易度(ボーダー偏差値)別の推薦比率> A大学【45.0~57.4】……32.9% B大学【45.0~59.9】……54.0% C大学【45.0~54.9】……44.1% D大学【42.5~54.9】……40.5% E大学【42.5~57.4】……52.6% F大学【37.5~52.4】……63.8% G大学【37.5~49.9】……60.0% H大学【35.0~54.9】……64.4% I大学【37.5~49.9】……45.7% J大学【35.0~49.9】……76.3% K大学【BF~49.9】……77.5% L大学【BF~39.9】……75.5% ※B大学はスポーツ系学部を除く ※I大学は理系学部のみの大学 ※難易度は各学部・学科のボーダー偏差値の分布 A、C、D大学といったボーダー偏差値が50前後の私大では、推薦比率は半分以下しかありません。つまりこの偏差値帯の大学は、まだまだ一般選抜を経て入学する受験生の方が多いのです。 ところが、ボーダー偏差値が下がるにつれて、一般選抜での入学者が減って推薦比率が高くなる傾向にあります。 特にK、L大学のようなボーダーフリー大学(大手予備校が実施する全国模試で偏差値35未満のボーダー偏差値を設定できない大学のこと。通称Fラン大学)と呼ばれる私大では、推薦比率が8割近くにものぼります。 またここには掲載しませんでしたが、一般選抜での入学者が“だれもいない”「ゼロ大学」も複数確認できました。 そのほとんどはボーダー偏差値が決められないボーダーフリーの大学、つまりFラン大学です。「ゼロ大学」というのは筆者の造語ですが、今後、その存在がより顕著になっていくのではないでしょうか。 「私大の約6割が推薦組」の割合を押し上げている中堅~下位大学、そしていわゆるFラン大学の多くは、そもそも一般選抜で受験生が集まらないため、定員を満たすために総合型選抜や学校推薦型選抜でなんとかかき集めようとしています。 ところがそのような努力とは裏腹に、ますます受験生が集まらないという悪循環に陥っています。少子化の影響は大学全体に及ぶのではなく、ブランド力の低い大学、つまりボーダー偏差値の低い大学から受験生が減っていくためです。 このように中堅・下位の私大を目指す受験生にとっては、もはや大学受験は、学力試験を受けないものになりつつあります。私立大学が個別に行う学力試験すら受けないのですから、共通テストを受けない層が増えているのはなおさらです。 実際、2018年度のセンター試験の受験者数は約55.4万人だったのに対し、2024年度の共通テストは約45.6万人と大幅に減っています。今後、私大の推薦比率が上がるにつれて、ますます「共テスルー(共通テストスルー)」の傾向が顕著になるでしょう。

理系大学の推薦比率が“低い”のにはワケがある

先ほど紹介した中でもI大学だけは、“理系学部しかない理系大学”という少し特殊な事情があります。推薦比率を見てみると、半分以下、つまり学力重視の一般選抜がまだまだ主流ということがわかります。 理系大学の場合は、数学や物理、化学など基礎学力が不十分だと、大学の教育課程についていけない可能性があります。そのために一般選抜で基礎学力を見る大学が多いと考えられるのです。 とはいえ、これはよくよく考えたら当たり前のこと。「入試」から「選抜」へと名称こそ変わりましたが、大学入学後についていけるだけの学力を測るのが、入試そもそもの目的のはずです。 せっかく大学に入っても、基礎学力が不十分で授業についていけなかったら意味がありません。安易に推薦に頼るのではなく、一般選抜でも受かるだけの学力を身につけることを意識しながら、志望校選びや受験対策をするようにしましょう。 【参考サイト】 ・大学入学共通テスト志願者数・受験者数・平均点の推移 ・令和6年度大学入学共通テスト 実施結果の概要 (文:伊藤 敏雄(学習・受験ガイド))

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