手取り25万円だが…「新婚夫婦がタワマンに住めた」納得の事情

(※写真はイメージです/PIXTA)

タワーマンション(以下、タワマン)とは、基本的に地上20階建て以上の居住用高層建物のことを指します。「お金持ちの住む家」というイメージが強いですが、実際にはどのような人たちが、どのような目的で住んでいるのでしょうか。実際の声を聞きました。

「平均男性」の「普通ではない」暮らしぶり

国税庁『令和4年分 民間給与実態統計調査結果』によると、1年を通じて勤務した日本の給与所得者数は5,078万人で、平均給与は458万円。正規社員523万円、非正規社員201万円となっています。

ちなみに男女別に見てみると、最も多い割合を占めているのは、男性の場合、年間給与額400万円超500万円以下(518万人)、女性の場合は100万円超200万円以下(461万人)でした。

給与額400万円。まさに「全国平均」の男性に話を伺ったところ、「普通ではない」暮らしぶりが明らかになりました。

某有名大学を卒業後、IT会社に就職した坂本さん(29歳・男性/仮名)。年収400万円、手取りにすると約310万円。毎月の収入は25万円ほどになります。

「月の残業は30時間ぐらいかな。見込み分を超えないように調整されるので、月収が増えることはないです(終わらない分は休日に対応しています)。昨年まで、1K・家賃7万円の家で一人暮らしをしていましたが、結婚を機に、タワマンへ移り住みました」

「妻は3つ下で、今社会人4年目です。年収は300万円ほどと聞いていますが、副業のアクセサリー販売でそこそこ稼いでいるみたいです。なので世帯年収700万円ちょっとですかね、多分」

平均給与でも「タワマンを選べた」信じられない事情

日本のタワマン第1号といわれているのは、1976年に誕生した「与野ハウス」。高さ66m、21階建て、総戸数463戸の大規模マンションです。

そこから時は進み、1997年。建築基準法・都市計画法の法改正が行われ建設のハードルが下がったことにより、「西新宿パークサイドタワー」「センチュリーパークタワー」「西早稲田シティタワー」など、ランドマーク的存在として、首都圏近郊で建設ラッシュが始まりました。

坂本さんが今暮らすのは、1DK・家賃15万円のタワマン。結婚の際、一軒家や分譲マンションへの引越しは考えなかったのでしょうか。意外な答えが返ってきました。

「実は、祖母の遺した家が都内にあるんですよね。今は空き家なんですが、固定資産税とか税金周りは父親が対応してくれています。落ち着いた庭のある、小さな一軒家です。僕が小さいころから『この家はお前にあげるからね』と言っていたみたいで(僕は覚えてないんですが)、遺言書もその通りに書いてくれたみたいです」

恐ろしい…「日本人がタワマンに住んで」起きる事態

少子高齢化に伴い、日本の空き家問題は深刻度を増していますが、「タワマン」と「空き家」について、専門家のなかでは関連性を指摘する声も。タワマンが、周辺の住宅ニーズを吸い上げてしまうというものです。

坂本さん、言葉を続けます。

「……なのでまあ、ゆくゆくは移り住めばいいのかな、と。今は刹那的なタワマン暮らしを楽しんで、子どもでもできたら、身を落ち着かせようと考えています。住宅ローンって人生最大の借金じゃないですか。その心配がないので、収入は少ないですが、人生設計に大きな不安はありません」

住宅金融支援機構『住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)】』では、変動型や固定金利選択型で住宅ローンを組んでいる人に商品特性やリスクに関する理解度について聞いたところ、「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」が合わせて40%~50%を占めていることが発表されています。「なんとなく」で莫大なローンを組んでいる実態が見て取れます。

このような状況のなかで「とりあえず人生の住まいは確保されている」坂本さん。あまりにも「勝ち組」といえます。ちなみに貯金はいくらあるのか、聞いてみると……。

「結婚したとき、200万円入っている通帳を妻に渡しました。その後財布のひもは妻が握っているので、今の細かい数字はわかりませんが、月のお小遣いは4万円です。飲み会などに行くこともあまりないですし、趣味も特にないので、十分な金額かな」

「老後不安は……どうかな。正直、ないです。子どもができたら多分大変なんだと思いますけど、ちょっとまだ想像がつかない。というか、お金の管理は妻なので。『困った』と言われれば、もちろん必死に働きますが、『そこそこな生活』が続けばいいと思うし、そのための努力はしています」

「タワマンは妻の希望でしたが、住んでよかったと思っています。何事も人生で一度は経験してみるものですね。……十分満足したら、出ていくつもりです。帰る場所はあるので」

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