二刀流!? 黄金世代から全幅の信頼が寄せられる“伊藤美誠監督”。笑撃アドバイスを平野美宇が告白「ミスした時に後ろを見たら…」【世界卓球】

黄金世代、唯一の五輪金メダリストが絶大な支持を受けている。

現地2月22日、熱戦が繰り広げられている卓球の世界選手権団体戦は、いよいよ終盤に突入。4強入りを懸けた準々決勝が行なわれた。

ここまで5戦全勝、オールストレート勝ちで駆け上がってきた女子の日本代表(世界ランク2位)はルーマニア代表(同7位)と激突。伊藤美誠、早田ひな、平野美宇の「黄金世代」で必勝を期した一戦を3-0のストレート勝ちで収め、ベスト4に進出。今大会は3位決定戦が実施されないため、日本は5大会連続のメダルを確定した。

トップバッターを務めたのは伊藤。グループステージ第2戦のイラン戦以来の出場となった23歳が対峙したのは「ルーマニアの妖精」と呼ばれる美貌を兼ね備えた絶対的エースのベルナデッセ・セーチ(世界ランク12位)。去年のWTTチャンピオンズフランクフルトで東京五輪金メダリストの陳夢(中国)を破るほどの高い実力を持つ難敵のパワフルなプレーに苦しみ、伊藤は第1セットを9-11で落とす。

だが、第2ゲームは伊藤がすぐさま反撃。鋭い回転をかけたサーブ、レシーブなどで相手を崩してリードを6点に広げると、そのまま11-5で押し切って取り返した。
第3ゲームも伊藤ペースで進む。果敢なロングサーブを見せてこのゲームを連取して、勝利まであとひとつ。だがセーチもこのまま黙っておらず反攻。得点した時には激しくガッツポーズを見せつけるなど、アグレッシブな卓球を展開。第4ゲームを奪い返し、フルセットまで持ち込む粘り強さを見せる。

最終ゲームは伊藤が緩急を使ったプレーでセーチを揺さぶり、強いフォアハンドを炸裂させ、伊藤が先にマッチポイントを握る。勝負をかけたセーチが渾身のスマッシュを放つが、このボールを伊藤が素早く返すと相手は反応できず。ルーマニアの絶対女王との死闘をフルセットの末に制すると、伊藤は日本ベンチに向かって左手を大きく挙げて派手にガッツポーズ。チームに勢いをもたらす貴重な1勝を掴んだ。

同世代の激闘を目の当たりにした早田、平野も触発され、ルーマニアを圧倒。日本は欧州の強豪国を一蹴し、準決勝に駒を進めた。 試合直後のインタビューで伊藤はフルゲームだった激闘について「私にとっては今回2試合目で、すごく雰囲気のいい中で試合ができて、とても楽しかったです。すごい接戦でしたけど、最後は勝つことができて、なんか笑顔いっぱい飛び出ました!」と笑みがこぼれ、「めちゃくちゃ楽しかったです!」と付け加えた。

伊藤は第2ゲーム以降、ベンチから15歳の張本美和、19歳の木原美悠ら年下のメンバーと一緒に声を出して応援。得点を重ねると、大きな拍手で鼓舞する場面も見受けられた。

さらに、タイムアウトやコートチェンジの時には試合中に気付いた相手の癖や攻略法などを2番手の早田、3番手の平野に積極的に助言するなど、東京五輪の混合ダブルス金メダリストは、まるで指揮官のような立ち振る舞いを見せる。伊藤の的確なアドバイスにチームメイトが耳を傾けるほど、厚い信頼が寄せられている。
インタビュアーから「”伊藤美誠監督”からは、どういうアドバイスを受けましたか」と問われた平野は「本当にたくさんアドバイスを頂いて、ついに今日はミスした時に後ろを見て、『これ! 合ってる!』って、顔で言って頂きました」と笑いながら、気心が知れた同世代だからこそ伝わる盟友の助言が勝利につながったと強調した。

黄金世代の固い絆が垣間見え、53年ぶりの金メダルを射程圏内に捉えた日本。悲願の頂点まで、あと2つに迫った。

構成●THE DIGEST編集部

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