群馬・富岡製糸場の研究 今井幹夫さん死去 89歳 世界遺産登録に力

富岡製糸場の研究を続けた今井さん=2018年

 世界文化遺産の富岡製糸場(群馬県富岡市)の研究に力を尽くした同製糸場名誉顧問の今井幹夫さんが1月25日、死去したことが22日分かった。89歳。葬儀は家族葬で行った。

 今井さんは南牧村出身。小学校長のほか、市教委で市史編さんなどに携わり、市立美術博物館・福沢一郎記念美術館の初代館長も務めた。世界文化遺産登録の動きを受けて市が2008年に新設した研究機関、富岡製糸場総合研究センターで初代所長に就任。研究を深めながら後進育成にも当たった。

 手がけた「富岡製糸場誌」(1977年刊行)は関東大震災の焼失などで製糸場の民営化以降の資料が多くない中、多方面から資料を集めてまとめ、高く評価された。東京大名誉教授で県立世界遺産センター名誉顧問の石井寛治さん(86)=東京都=は「お会いするより前にこの素晴らしい本を知っていた」という。国連教育科学文化機関(ユネスコ)諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)から「パーフェクトに近い世界遺産登録勧告を受ける土台を作った」と強調した。

 県歴史文化遺産室の井上昌美室長は「ユネスコへの推薦書作りに携わった同僚が『富岡製糸場誌があったから推薦書が書けた』と口をそろえていた。大きな力だった」としのんだ。

 元県世界遺産推進課長の松浦利隆さん(66)=高崎市=は「高校生の時、今井先生に初めて富岡製糸場を案内してもらったことを今でも覚えている。先生の研究のおかげでレベルの高いところから登録運動を始められた。登録は先生の功績が一番大きい」と振り返った。

 富岡市の榎本義法市長は「市の歴史文化や富岡製糸場の研究普及活動を通じて市政の伸展に多大なる貢献をいただいたことを感謝している。ご功績をしっかりと次世代へ伝えたい」とコメントした。

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