「ウソつきにウソをつく場を提供するだけ」泉房穂氏が「政治倫理審査会」を徹底批判…裏金の「全容解明」期待薄の理由は

自民党の政治資金パーティーをめぐる裏金問題で、2月28・29日に、衆議院「政治倫理審査会(政倫審)」が開かれる見通しとなった。

「政倫審には安倍派座長だった塩谷立元文科相、同派で事務総長を経験した松野博一前官房長官、西村康稔前経産相、高木毅前国対委員長。そして二階派の事務総長だった武田良太元総務相の5人が出席する予定です。

しかし、『安倍派5人衆』のひとり、萩生田光一前政調会長が出席しないことに野党は反発しています」(政治担当記者)

萩生田氏は「明確な基準が公表され、対象になるのであれば、拒むものではない」と語っていたが、「安倍派事務総長経験者」という「自民党基準」に合致しないため出席しないようだ。

「野党は、裏金疑惑がある51人全員の出席を要求していますが、かないそうにありません。

2月21日、立憲民主党の後藤祐一衆院議員が、萩生田議員はなんで入っていないのか、仮に事務総長経験者だけだとしても、なぜ下村博文氏が入っていないのか質しましたが、林芳正官房長官は『岸田総理も自民党総裁として、説明責任を尽くすことを促している』と答弁するにとどめました。

自民党は、野党の求めに応じて、ほかの46人に出席の意向を確認しているようですが、やんわりと『出席しない方向』に導いているとも聞いています。出席人数は『必要最低限』になるでしょう」(永田町関係者)

こうしたなか、兵庫県明石市の前市長・泉房穂氏が本誌取材に応じ、「政倫審なんか意味ない。証人喚問せよ」と語る。

「証人喚問は、出てこいと言われた人間は出席義務があり、公開です。ウソをついたら偽証罪に問われます。しかし、政倫審はその3つともない。いちばん大きいのは、ウソをついたところでなんの罰則もないことです。

政倫審は、ウソつきの政治家にウソつきの場を提供するだけ。あえてウソをつかせる場を設ける必要なんかありませんよ。国会議員が平気でウソをついて、逆に免罪符にされてしまうだけです。

私は弁護士だけど、民事裁判のお金の貸し借りの証人だって、当然、偽証罪の存在を前提で証言するんです。ウソをついてもかまわないような言葉に、なんの意味もありません。

やるんだったら、偽証罪に問われる証人喚問が最低ラインです。もっとも、証人喚問したところで『記憶にございません』と言われるだけかもしれませんが」

泉氏は、2018年、「森友学園」の国有地売却をめぐる証人喚問に臨んだ佐川宣寿・前国税庁長官が、1日で50回ほど「記憶にございません」と語ったことを危惧するのだ。そのため、泉氏は「第三者委員会」の設置を進言する。

「国会は、予算案とか能登半島の被災地支援とか、国民生活を支えるような議論をすべきであって、裏金問題を時間かけて議論するような場じゃないでしょう。だったら第三者委員会を設置して、しかるべき方々に半年くらい任せて、全容解明してもらったらいい」

だが、そうした「全容解明」は期待薄だ。

「今回なんて、どうせ政倫審で手打ちするだけの与野党 “出来レース” ですよ。政倫審に一部の議員が出て、それで終わり。あとは法改正して、秘書に押しつけるだけじゃなく、政治家にも責任を問う連座制っぽいのを導入するだけです。

でも、日本では、連座制は完全にザル法になるから、意味ないですよ。だって、議員はいろいろな政治団体を持ってますから、裏金をどの団体の収支報告書に書かなかったのか、という事実が特定できません。それに、口頭の指示だと証拠が残らないからね。

もし連座制を導入するなら、イギリスのように結果責任を負うような、言い訳できないような仕組みにしないと、何も変わらないですよ」

そもそも政治家に自浄作用を期待することが無理なのか――。

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