物損事故きっかけ、80歳で運転免許自主返納 「運転やめてよかった」不便感じず

島根県安来市で開かれた高齢者の交通安全研修会で、集まった人たちを前に、運転免許を自主返納した男性が自分の体験を話しました。
男性が免許を返納したきっかけは?そしてそこに込めた思いとは?

「この前、高齢者の事故を見て思いました。運転をやめてよかったなぁ」
60代や70代の高齢者を前に交通安全の大切さを語るのは、安来市に住む尾原敏さん(84歳)です。
尾原さんは、80歳の時に、運転免許を自主返納しました。

「家内が乗っていて、ちょっとけがをさせた…」

自宅近くの小さな畑で、野菜や花を育てるのが趣味だという尾原さん。
運転免許を返納した今、出掛ける際は、バスやタクシーを利用したり、家族や知り合いが運転手を務めてくれたりと、不便は感じないといいます。

自宅を訪ねると、何やら冊子を見せてくれました。
尾原さん、安来市交通安全協会の教養部長を務め、長らく会報に、交通安全を呼び掛けるコラムを掲載していたそうです。

コラムより
「ほら右から車が来たで。だけん、止まって待っちょーがな。お前の声に、よけいおべーがな」

安来弁でつづられるコラムもユニークですが、イラストも尾原さんが自分で描いたものなんです。

10代の頃、漫画家の手塚治虫さんに憧れていたという尾原さん。安来市の日立金属で働いていた際も、社内の広報誌に4コマ漫画を執筆していました。

その経験から、交通安全協会に加わると、交通安全の大切さをたくさんの人に伝えたいと思い、イラスト入りのコラムを書き始めました。

人一倍、交通安全に対する意識が強い尾原さんは、自身が物損事故を起こしたことをきっかけに、運転免許の返納を決めました。

尾原敏さん
「人様に迷惑をかけたら、それこそ大変なことだと思って。いい歳だと思って。そのかわり、持つべきは友だちで、お付き合いですよ。
みんな、『買い物に連れて行ってあげるよ』といろいろ誘ってもらうこともあるし。何かと、『乗せてあげるよ』と」

80歳で自ら運転免許を返納した尾原さん。今は、友達や家族に囲まれながら、運転免許がなくても、元気いっぱい、シニアライフを楽しんでいます。

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