井浦新&三浦翔平、3度目の共演で上がったハードル 「また新しい自分たちを見せなきゃ」

日本のみならず世界中で社会現象を巻き起こし大ヒットとなった『おっさんずラブ』シリーズの5年ぶりの続編『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)。春田(田中圭)と牧(林遣都)を中心とした大人たちのピュアな恋愛模様を描いてきた本シリーズに、和泉幸(井浦新)と六道菊之助(三浦翔平)という新たな登場人物が追加された。

春田と牧の“お隣さん”として登場した2人だが、実は和泉は元公安警察、菊之助は現役の公安警察であることが明らかに。複雑な過去を抱える2人の存在はこの物語のスパイスとなっている。

今回は井浦と三浦にオファーを受けた際の率直な思いや、共演を重ねる中で変化したお互いの印象、さらには、2人が信頼を寄せている貴島彩理プロデューサーの仕事ぶりについて語ってもらった。

井浦新「2人でいろんなことにチャレンジできるのは嬉しい」

――この作品への参加が決定した時の気持ちを改めてお聞かせください。

井浦新(以下、井浦):これまで一丸となって作り上げてられてきた座組ですし、すでに築き上げてこられた世界へ飛び込む……ということになるので、簡単に「嬉しい!」と喜ぶというよりは、何かしらの爪痕を残さなければ僕たちが加わる意味がないな、と試されるような気持ちになりました。ただ、貴島プロデューサーとは何度か一緒にお仕事させていただいていて、僕が毎回与えられる役は、一見全然異なるキャラクターだけれど、共通して「大切な人を失った時、人はその悲しみをどう乗り越えていくのか」というテーマを背負っているんです。今回、演じる和泉もです。だから、また違ったアプローチで同じテーマと向き合うことができて、いまは“参戦してよかったな”と心から思います。

三浦翔平(以下、三浦):僕は「この人からのオファーは断らない」と決めている方が何人かいらっしゃるんですが、その一人が貴島プロデューサーなんです。同時に、僕は純粋に『おっさんずラブ』という作品が好きなので、いち視聴者として続編が始まることが嬉しかったです。

――『おっさんずラブ』のどういうところがお好きなのでしょうか?

三浦:真剣におじさんたちがピュアな恋愛をしてる姿というのは愛おしくもあり、切なくもあり、観ていて心が温かくなりますよね。今回、現場に入って、監督しかり演者さんしかり、全員が一丸となって取り組んでいる姿を目の当たりにして、こんなにも愛に溢れた作品になっている理由がよく分かりました。

井浦:その中で僕たち2人のことも温かく迎えてくださってありがたかったですし、現場を経験して、より皆さんのこの作品に対する思いや愛の強さを実感しました。

――撮影中の雰囲気はいかがでしょうか?

三浦:雰囲気はいいですね。和気あいあいとしている現場は他にもありますけど、こんなにみんなが爆笑している現場は初めてだと思います。だって、監督がカメラの隣で爆笑してるんですよ。

井浦:本番中も普通に笑い声が聞こえてきます。

――映像からもその和やかな空気感が伝わってきます。

井浦:本当にテストや本番のギリギリまでみんな楽しそうに話しています。若い頃だったら「もう少し現場をピリッとさせなきゃ」という変な使命感に駆られていたと思うんですが、この座組はこういう現場があってもいいんだと思わせてくれます。というのも、実は一人ひとりがしっかりと自分のカードを持っているんです。しかも、そのカードを瞬間的に切れる人たちばかり。だから、朝からピリピリせずとも本番になったら全力を出せるんです。撮影中はもうカードの切り合いで、「次はどんなカードを切ってくるんだろう?」と毎回楽しみです。

――メリハリのある現場なんですね。そんな中で、和泉と菊之助という少し複雑な間柄の2人を演じてみた感想は?

井浦:和泉と菊は長年連れ添った夫婦のような関係性。和泉も菊が隣にいてくれるのはどこか当たり前という認識で、ふと子犬のような顔でこちらを見ていても、そこにある気持ちはキャッチできていないんじゃないか、と。菊が和泉を見守ってくれていることに対しても、まだ感謝するという段階にもなっていない。そんな中でも、菊が和泉に全力で注いでくれている気持ちはしっかりと受け取りながらお芝居しています。

三浦:今の和泉さんは、菊様がいなくちゃダメですよね。ただ、おそらく現役の公安時代はすごかったんでしょうね。そこからバディの秋斗(田中圭)を失って崩れていく過程も見てきているから、菊も支えたいと思うんだろうし、和泉が好きという気持ちに頑張って蓋をしているんだと思います。ここからはその蓋が開いて、どんどん気持ちが溢れてくると思うので、それによって2人の関係がどう変化するかに注目してほしいです。

――お2人は2021年のドラマ『あのときキスしておけば』(以下、『あのキス』/テレビ朝日系)でも共演されています。先ほどおっしゃっていたように、さまざまなプレッシャーがある中でお互いの存在は心強かったのではないでしょうか。

井浦:それはありますね。なんたって、同性の初キス相手ですから。

三浦:そう、僕たち実はもうキスしてるんですよね(笑)。

井浦:ただ、やっぱり何度か共演を重ねていると、2人の中で「また新しい自分たちを見せなきゃ」って勝手にハードルが上がっていくんです。だから、“心配”こそしていないですが、“安心”はしたくないと思っています。NHK大河ドラマ『光る君へ』では親子役という、これまでとは全く違う形での共演になりますし、こうして2人でいろんなことにチャレンジできるのは僕としても嬉しいです。

三浦:逆にこれ、初めましての人同士だったら、どうなったのかなって思います。すでに出来上がってるチームの中で、恋仲になっていく相手がさらに新しい人がいたら、また一つハードルが増えたと思うんですよね。だけど、その相手が新さんだったので、僕はホッとしました。

三浦翔平「新さんからはマイナスイオンが出てる」

――何度か一緒にお仕事する中で、お互いの印象に変化はありましたか?

井浦:『あのキス』が初共演作だったんですが、それまでは得体の知れなさがありました。どんな温度感でお芝居される方なのか、やっぱり出演している作品を観ているだけじゃ分からないところもあって。だけど、最初から不器用ながらもしっかり自分を出してくれる方だったので、想像以上にちゃんとしてるなと思いました(笑)。

三浦:それは、ありがとうございます(笑)。

――作中でのお2人やこうしてお話しされている感じを見ると、空気感が似ているなと思います。

井浦:今日も撮影で、監督にも似たようなことを言われました。「お2人の芝居の空気感がすごくいいんです」って。2人だけの撮影の時は「これ、本当に『おっさんずラブ』の撮影なの?」って思うような空気になるんですが、そうやって言ってもらえると僕たちとしても嬉しいです。いい感じに作品のスパイスになっていたらいいなと思っています。

――三浦さんは新さんにどのような印象をお持ちですか?

三浦:『あのキス』から、もう3年ですか。新さんからはより一層、マイナスイオンが出ていますね。存在そのものが空気清浄機みたいに、周りの空気が綺麗なんです。

井浦:自分では全く感じないんだけど、清浄しちゃってる?(笑)

三浦:うん(笑)。常に穏やかな波長を感じるし、お互い変に力まずナチュラルに演じられている気がします。

井浦:共演はもう3回目だけど、毎回新鮮だよね。『あのキス』の時は一緒に足し算しながら作っている感じがしたけど、今回は逆に引き算し合っている感じがする。特に和泉と菊のシーンに関しては、余計なことは何もしていないですから。それが作品にも活きてくると思っていますし、2人だけの撮影の時は、お互いのカードを切るのはちょっと放棄して、何もしない中から生まれてくるものを探り合いながら作っています。

――井浦さんはドラマ『unknown』(テレビ朝日系)の時に貴島Pに出演させてほしいと直談判されたと聞きました。先ほど三浦さんも貴島Pからのオファーは断らないとおっしゃっていましたが、お2人が貴島Pに信頼を寄せている理由はどんなところにあるのでしょうか?

三浦:こんなに現場愛溢れるプロデューサーは、なかなかいないんじゃないかな。撮影期間だけではなく、それ以外の時も演者やスタッフ全員を本当に大事にしているんですよ。本来のプロデューサー業以上のことをナチュラルにできる人だなと思います。あとはやっぱり、作りたいものが良い意味で変わってる(笑)。

井浦:でも明確なんだよね、作りたいものが。貴島Pの中にある一部分が、『おっさんずラブ』になり、『あのキス』になり、『unknown』になっているんだと思います。

三浦:その時、その時、伝えたいことを作品を通して皆さんにお届けしているんでしょうね。シンプルにいい人ですよ。

井浦:それもうわべじゃなく、本当に僕たち一人ひとりのことを思ってくれているからこそ、こんなに愛に溢れた作品が作れるんだと思います。

(文=苫とり子)

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