【地域おこし隊15年】活動底上げへ支援必要(2月23日)

 都市部から地方へ移住し、活性化に取り組む「地域おこし協力隊」制度は新年度、創設15年を迎える。人口流出、地域の担い手確保など、地域が抱える共通の課題解決に向けた役割は増している。支援体制を充実させ、活動全体を底上げするよう求めたい。

 総務省が2009(平成21)年度に制度化して以来、隊員は人口減少地域などに一定期間移り住み、観光振興や農林水産業などに従事してきた。自治体の魅力発信や地域ブランドの開発などにも取り組む。任期はおおむね1年~3年で、国は1人当たり上限480万円の活動費などを自治体側に支給し、隊員の定住・定着を図っている。

 2022(令和4)年度時点の隊員数は全国で6447人に達する。県内では今年1月現在で、県を含む52自治体が過去最多の計241人を受け入れている。

 任期を終えた隊員は2022年度までに全国で9656人を数える。このうち65.4%が活動地と同じ地域に定住している。本県の任期終了者は246人で、定住率は63.4%と全国平均をやや下回っている。地域にとどまってもらうには、働き場所の確保や起業支援などが不可欠だ。

 活動を個別に見ると、地域で孤立し、任期途中で退任してしまう隊員もいるという。隊員と地域住民の間に意識の隔たりができたり、取り組みへの温度差が生じたりする場合もあるだろう。そんな時は自治体が調整役を担いたい。

 総務省は今月、隊員が悩みを共有するウェブサイトを設けた。掲示板でのやりとりを通じ、困り事の解決とともに意欲の向上につなげてもらう。元隊員の活用も想定しており、経験に基づく貴重な助言は現役隊員の支えになる。

 自治体による隊員希望者と地域のマッチングも重要だ。無用なトラブルを防ぐには、受け入れ自治体が地域づくりの方向性を示し、隊員は期待される役割を確認しておくといった準備が欠かせない。

 国は2026年度までに隊員数を1万人とする目標を打ち出している。隊員はいずれも地方に活気をもたらす意欲にあふれている。大都市部への若者の人口流出が加速する中、心強い存在だ。隊員一人一人が各地域の末永い応援団となるような仕組みも整えていきたい。(浦山文夫)

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