生活保護を受けると「病院を選べない」と聞きました。本当なのでしょうか?

生活保護制度では指定の医療機関にかかることが原則

生活保護における扶助の一つである医療扶助は、経済的に困窮しており、最低限の生活を営むことが難しい人に対して、医療費の給付を行うものです。診察代や薬代、治療材料費、医学的処置や手術にかかる費用などが、原則として現物支給(医療券)されます。

医療扶助によるこうした医療費の給付は、生活保護法が指定した医療機関で実施されるため、自分で医療機関を選ぶことはできなくなる可能性があります。

厚生労働省が定める指定医療機関とは?

指定医療機関になっているのは、生活保護法第四十九条の二第2項各号の欠格事由に該当していない医療機関です。

欠落事由の一例は、下記の通りです。

__・健康保険法に規定する医療機関または薬局ではない
・指定医療機関の指定を取り消され、その取り消しの日から5年以内である
・医療機関の開設申請者が禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなるまでの者である__

上記のような条件に該当しない医療機関の中から、国の医療機関は厚生労働大臣によって、そのほかの医療機関は、都道府県知事・政令指定都市市長および中核市市長によって指定されます。

原則として、居住地に近い場所にある指定医療機関にかかることになっており、その中からどの医療機関で受診するかは、本人の希望を参考に福祉事務所が決定します。

遠くの医療機関が認められるケースとは?

遠方にある指定医療機関にかかることを希望する場合は、理由によってはそのことが認められる可能性もあります。

例えば「長年診てもらっているかかりつけ医がいる」という場合は「医師との信頼関係が築けていることで治療によい影響を及ぼす」と判断されて、遠方でもその医療機関にかかることができるかもしれません。

また「その医療機関でなければ治療を行うことが難しい」などの事情がある場合も、同様です。遠方の指定医療機関にかかりたいときは、ケースワーカーに事前に相談しましょう。

理由によっては希望する医療機関にかかれる場合もある

生活保護制度を利用して医療扶助を受ける場合は、あらかじめ指定された、居住地に近い医療機関を利用しなければなりません。そのため、自分が希望する医療機関にはかかれなくなる可能性があります。

ただし「長年通い続けているかかりつけ医がいる」「その病院でないと治療できない」などの理由がある場合は、遠くの病院にかかることが認められる場合もあるため、ケースワーカーに相談してみるとよいでしょう。

出典

厚生労働省
社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会 (第13回)令和2年12月17日 参考資料1 医療扶助に関する基礎資料集 2.医療扶助の概要と現状 生活保護の医療扶助について(8ページ)
各都道府県・各指定都市民生主管部(局)長あて厚生省社会局保護課長通知 生活保護法による医療扶助運営要領に関する疑義について 5 医療扶助の決定の際の留意事項について (問6)
デジタル庁e-GOV法令検索 生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第七章 医療機関、介護機関及び助産機関 (指定の申請及び基準)第四十九条の二第2項
富山県 生活保護 生活保護法による医療機関の指定制度について
特定非営利活動法人POSSE 生活保護Q&A 生活保護や福祉制度にまつわるよくある疑問にお答えします。 医療扶助を受ける場合、生活している地域の近くの病院でしか受診できないのですか?

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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