筑波大など産官学連携 加速器で悪性脳腫瘍治療 世界初の臨床研究へ 茨城

東海村の「いばらき中性子医療研究センター」内に設置されたビーム照射口と照射室(筑波大提供)

筑波大などの産官学連携チームは22日、茨城県の「いばらき中性子医療研究センター」(東海村)に整備した治療装置用加速器を使い、臨床研究を開始すると発表した。治療が難しい悪性脳腫瘍「膠芽腫(こうがしゅ)」の初発患者に実施し、加速器の中性子線でがん細胞を「狙い撃ち」するもので、世界初の試み。1月から治験者を募集・検討しており、決まり次第開始する。

次世代がん治療法「中性子捕捉療法」(BNCT)で、手術などで除去し切れない難しい部位へのがんの治療法として、高い効果が期待される。実用化を視野に安全性や有効性を確認した上で、医療機器としての承認を目指す。

チームは2010年に設立。同大や高エネルギー加速器研究機構(KEK)、県、医薬品開発会社などで構成されている。BNCTの研究開発は、11年につくば国際戦略総合特区の先導プロジェクトの一つに位置付けられた。チームは独自に治療装置用加速器を開発・設置し、動物への照射実験を行うなど、臨床研究に向けて調整を進めてきた。

膠芽腫は、手術と放射線、化学療法の組み合わせで治療するが、再発するケースが多い。5年生存率が10%前後と低く、治療が困難とされている。BNCTでは、がん細胞のみに集まるホウ素薬剤を患者に投与した後、病巣部に中性子線を照射してがん細胞を破壊する。浸潤がんなど治療が難しいがんに対して、高い効果が期待されている。

BNCTは、頭頸部(けいぶ)がんの治療が国内で保険適用となっている。チームは最終的に、膠芽腫の治療への保険適用拡大を目指す。チームの研究者の1人、同大医学医療系の桜井英幸教授(放射線腫瘍学)は「画期的な成果が出ることを期待したい」と話した。

© 株式会社茨城新聞社