『ブギウギ』史実には存在しない家政婦をなぜ物語に? CPが語る木野花キャスティング意図

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。

愛子を出産し、ワンマンショーの稽古や映画の撮影現場にも娘を連れて行くなど、仕事と育児に奔走するスズ子。だが、当然子育ては一筋縄ではいかず、何もかもが中途半端だと葛藤する日々を過ごしていた。

第100話、そんなスズ子のもとを突然、大野晶子が訪ねて来る。大野は、育児に追われるスズ子を見かねた茨田りつ子(菊地凛子)の紹介による家政婦で、史実にはないオリジナルのストーリーだという。

大野を演じるのは木野花。制作統括の福岡利武は「木野花さんは本当に深く台本を読まれていて、エネルギッシュな雰囲気をしっかりと演じてくださいました。『ブギウギ』はステージの面白さと同様に生活感もしっかり描くドラマだと思っていますので、一緒に子育てをして、家族になっていくところが今後の見どころです」と語る。

大野は青森出身の設定で、演じる木野もまた青森出身。実は、おミネ(田中麗奈)が率いる“夜の女”のひとりとしてドラマに出演している和海が青森の方言指導を担当しているが、「木野花さんは東京での暮らしが長いので、(青森ことばの)音声データをお渡ししました。現場でもニュアンスの確認はされていましたが、当然ながらとてもお上手ですよね」と、あまりに自然な木野の青森ことばに感嘆する。

趣里との相性も抜群だといい、「木野花さんは、撮影前に『台本を読んで、現場の空気を捉えてお芝居をします』とおっしゃっていましたが、趣里さんも同じようなことをおっしゃっていて。お互いに空気を感じつつお芝居していたと思いますし、芝居のスタイルが近しいのではないかと。趣里さんにとっては大先輩ですが、お芝居を合わせていく感じをおふたりで楽しんでいました」と振り返った。

スズ子と大野の距離が近づいたのは、第101話。きっかけとなったのは、愛子が破いてしまった障子を大野が張替え、その上から“花型の障子を貼る”という心温まるエピソードだった。

「脚本の櫻井剛さんのアイデアですが、とてもいいセリフでしたよね。『女の子だもの、お花の障子は破きませんよ』と。なにより、木野花さんに演じていただけたことで、説得力がものすごくて。本当に素晴らしいなと思いました」

これまでワンオペ育児を続けてきたスズ子に、SNSでは「家政婦を雇えばいいのに」といった意見も多く見られたが、福岡は「誰にも助けてもらえない状況の中、子育てしている方もたくさんいらっしゃると思うので、育児の大変さを表現するためにも、必要なストロークだったのかなと思います。男性スタッフが多いですが、僕も含めて育児の大変さが身に染みていますので、みんなで意見を出し合いながら制作しています」と裏側を明かす。

さらには「“家族になっていくこと”がテーマでもある大野さんが、どういう思いで今まで生きてきたのか、これからどうしようと思っているのか。第22週で語られます」とし、「木野花さんの熱演によって、前向きな気持ちで生活することの大切さが感じられるシーンになっていますので、ぜひご覧いただけたら」と呼びかけた。

そんな大野のサポートもあり、次週いよいよ「買物ブギ」がお披露目へ。“ステージ”と“生活感。『ブギウギ』が描いてきた両輪の、さらなる盛り上がりに期待が高まる。

(文=nakamura omame)

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