落合監督から助言で実力が開花!39HR/110打点の活躍見せた中日のホームランバッターとは!?【プロ野球助っ人外国人列伝】

助っ人外国人列伝/中日ドラゴンズ編

日本球界を彩ってきた助っ人外国人選手たち。「ラブすぽ」が独自に選んだ選手を紹介する。

落合監督から助言で実力が開花!39本塁打、110打点の活躍見せたトニ・ブランコ

【5位】トニ・ブランコ

〈NPB通算データベース〉
・打率 272
・本塁打 181本
・打点 542打点

ドミニカのアカデミー上がりの苦労人

決して裕福な国とはいえないドミニカ共和国。貧富の差が大きいこの国において、平等に夢を追い、裕福な生活を目指せる職業がプロ野球である。

ドミニカ共和国にはメジャー全球団に選手の発掘・育成のためのアカデミーがあり、日本でも広島がカープアカデミーを設立し、NPB・MLB通算2000本安打を達成したアルフォンソ・ソリアーノらを輩出したことは知られている。

1980年、ドミニカ共和国の決して裕福ではない家庭で生まれたトニ・ブランコは、1987年にわずか17歳でレッドソックスのアカデミーと契約する。契約金はわずか5000ドルだったが、ブランコは来る日も来る日も素振りを続けてプロを夢見ていた。しなやかだが瞬発力のある筋肉は、このころに鍛錬した素振りによるものなのかもしれない。

翌1987年、ブランコは正式契約となってアメリカに渡る。だが、アカデミーからメジャーに昇格できるのはわずか2%、定着となるともっと低い数値だ。2005年にナショナルズで念願のメジャーデビューを果たしたブランコだったが定着とはいかず、マイナー球団やドミニカンウインターリーグに甘んじる日々が続いていた。

だが、元西武の守護神で中日の森繁和コーチがウインターリーグを視察したことでブランコに転機が訪れる。

落合監督から助言で実力が開花

当時の中日は落合博満が監督を務め、絶対的な存在だったタイロン・ウッズの退団で後釜の主砲候補を探していた。身長188センチ、102キロと巨体から放たれるブランコの飛距離は際立ち、マイナーリーグでの実績は充分。年俸が安いこともあり、大化けを期待して森繁がスカウトしたのだ。

しかし、キャンプでのブランコはバットのヘッドスピードが圧倒的に速いが、ボールが前に飛ばず首脳陣にもは早くも諦めムードが漂っていた。そこで落合は日本野球における主砲の役割やタイミングの取り方などをアドバイスする。すると途端にフェンスオーバーを連発するから助っ人外国人はわからない。

落合の助言により、「主砲は無理に振って本塁打を狙うだけではなく、四球を選ぶのも立派な仕事」ということにブランコは気がついたという。

自信を深めて臨んだ2009年の開幕戦は、初打席で横浜ベイスターズの三浦大輔から初打席初本塁打を放ったのを皮切りに、ナゴヤドームの天井スピーカーに直撃する同球場初の認定ホームランでファンの度肝を抜かせる。

交流戦では1年目でセ・パ11球団に対して本塁打を放ち、ペナント前半戦で28本塁打と量産体制に入る。打った瞬間にそれとわかるブランコの本塁打は爽快だった。

後半戦は本塁打のペースが落ちるも、ブランコは全試合で4番に座り、39本塁打、110打点と良い意味で首脳陣を大きく裏切る活躍を見せている。

なお、1年目のブランコの年俸は3000万円。ウッズの年俸の20分の1以下の助っ人が同等の活躍をしたことにファンは驚いたはずだ。

新天地で三冠王クラスのキャリアハイを記録

2010年は他球団から徹底してマークされ、右指の骨折で苦しいシーズンとなった。それでも故障明けの固め打ちで2年連続30本塁打を記録。リーグ優勝に貢献する働きで落合監督を喜ばせている。

だが、契約を代理人が交渉するようになると年俸が高騰する。さらにブランコの注文が多くなり、球団が難色を示すようになってしまった。加えて怪我や三振の多さも要因となり、新監督の高木守道はブランコに見切りを付ける。

そのブランコに目を着けたのがDeNAベイスターズだ。前年までの4番だった村田修一がFAで移籍したことでブランコを獲得し、ついでにエンジェルベルト・ソトら2投手もDeNAに移籍。中日に在籍していた3人の助っ人外国人がほかの同一チームに移籍する大荒れのストーブリーグとなったのだ。

2013年を新天地で迎えたブランコは、中畑清監督のもとでのびのびでプレーし、右打ちの安打狙いを習得する。その結果、春先から年間を通して好調をキープし、やや物足りなかった打率が大幅に上昇した。打率・333、41本塁打、136打点で打率と打点の二冠王に輝いている。

その後、2015年からオリックスでプレーし、相変わらずのパワーヒッターぶりを見せたが、度重なる怪我が原因で2016年に現役を引退。母国に戻ったブランコはプロ野球で稼いだ資金で豪邸を建て、飲食店などを経営する実業家になった。

なお、息子であるトニ・ブランコjrは2022年にパイレーツと契約。スイングスピードの速さは父親譲りであり、メジャーでの活躍が期待されている。

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