長崎・諫干農地 入植した2社に明け渡しを命令 福岡高裁判決 営農者側の控訴棄却

 国営諫早湾干拓事業の干拓地に入植した営農2社に長崎県農業振興公社が農地明け渡しなどを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(岡田健裁判長)は22日、営農者側の控訴を棄却し、明け渡しと賃料などの支払いを命じる判決を言い渡した。
 明け渡し請求は諫干農地の賃貸人である公社の権利乱用、信義則違反に該当するとは認められない、とした一審長崎地裁判決を支持した判断。営農者側は上告を検討する。
 2社は、2008年に入植したマツオファーム(島原市)とグリーンファーム(諫早市)。公社は13年、農地利用権(賃借権)を18年3月末まで再設定したが、同年4月以降については必要文書を提出しなかったなどとして拒み、明け渡しを求めた。両社は控訴審でも、カモ食害や冷害・高温被害、排水不良などへの公社の対策が不十分だと主張。農地を使用・収益させる義務を果たさないまま、明け渡しを求めるのは権利乱用などと訴えた。
 控訴審判決は「(両社は諫干農地での)耕作を放棄しており、(農地を)占有することについて何らの利益をも有しない」と指摘。「干拓地や調整池が原因で冷害、熱害が生じているとは認めがたい」とし、カモ食害や排水不良への両社の主張も退けた。その上で、公社が求めた文書の未提出を理由に再設定しなかったのは当然などとし、権利乱用、信義則違反があったとはいえないと結論付けた。
 賃料相当損害金(マツオファームは明け渡し期限から明け渡し完了まで年約544万円の割合、グリーンファームは同約256万円の割合)などの支払いも公社の請求通り認定。明け渡しに仮執行宣言は付けなかった。

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