「素質」の開花で自分なりの市場価値を高め続けよう! 後悔しない転職へ

【30歳からの後悔しない転職の思考法・5】前回の記事で「企業選び」という点で、真本音度を高め続け、素質の開花を助長する環境の三つの観点について紹介してきたが、連載最後となる今回は、どのようにすれば自分なりの市場価値を高め続けることができるのかについて紹介したい。

市場価値至上主義は果たして善か

転職やキャリアを考える際、多くの人が気にする「市場価値」。市場価値とは、いま勤めている「会社内での価値」ではなく、開かれた転職市場において「他社からみて価値があるかどうか」のことを指す。

市場価値が高い人材は、他社からみて魅力的な人なので、当然ながら一つの会社に依存する必要がなくなり、文字通りどこでも、どんな環境でも活躍することができる。また、市場価値を高めるため、英語を身につけ、プログラミングスキルを身につけ、MBAに通うなどのアクションを起こしている。

それを助長しているのが、世の中にあふれる求人広告だったり、キャリアスクールだったりする。「プログラミングスキルを身に付けて、市場価値の高い人材になり、自由なワークスタイルを実現しよう」「自分の市場価値を上げて、20代で年収1000万円を目指そう!」といった言葉が目立つが、こういった情報に振り回されて、闇雲に市場価値を上げようと行動しても、空回りをしてしまう。

短期的には市場価値を簡単に上げるのは非現実的で、「市場価値の高まる仕事」なんて都合の良いものは、そうそう見つけられない。見つかったとしても、すぐ陳腐化されやすいスキルだったりもする。

「市場価値を上げよう」という甘い誘い文句に引っかかって、安易に転職先を決めても、一時的には外発的動機づけ要因から満足はするかもしれないが、結果として自分が望むキャリアは手に入らないといえる。

自分自身の市場価値を上げるのは確かに重要だが、過度な市場価値信仰は自分のキャリアを創る上で非常に危険な行為になることをよく考えなければならない。市場価値を高めようとする行動の多くの場合は、「反応本音」からきているものが多いからだ。

反応本音が原動力となった市場価値を高める行動は多くの場合、無駄に終わることが多い。不安や焦燥感から何かを身につけようとしても、やはり長続きはしないからだ。

真本音レベルでの相性の良い企業を見つける

では、どうすればいいのかというと、筆者の考える正しいキャリアアップは「真本音レベルで相性の良い企業を見つける」ことだ。キャリアアップに市場価値という概念を含めるからややこしくなるのであって、本当に必要なのは、企業との「マッチング」である 。

企業との「相性」が良ければ良いほど、驚くくらい道は拓かれて活躍する。市場価値は狙って「高まる」ものではなく、相性の良い企業と運よくご縁があれば、結果的に「高まった」というのが真理ではないだろうか。

企業との「マッチング」を高め、「相性」の良い企業を見つける方法を紹介したい。

多くの企業と出会うこと

やはり相性の良い企業を見つけるためには、「量」は欠かすことができない。ぜひ、まずは量を意識していただきたい。その上で、「企業の見方」をレンズとしながら(自己対話しながら)進めていただきたい。

しかし、問題なのが、せっかくご縁となる企業に出会えたとしても、自分の状態がまだ準備段階であり、両想いにならないということだ。そのために、以下が重要となる。

現在の在籍企業で「成果」を出す

逆説的ないい方になってしまうが、現職で「成果」を出すことこそが転職やキャリアアップにおいて、最重要事項である。真本音の度合いが高まることで、素質が開花し、結果的に自分の望むキャリアを手に入れられることは確か。「想いと成果をつなぐ」という生き方がポイントとなる。

想いが明確であればあるほど、その想いを行動に移し、しっかりと成果につなげられる。成果とは、いい換えると「現実」そのもの。成果から逃げていることこそ、現実逃避ともいえる。

想いと現実を結ぶこと、この生き方ができればできるほど、その人の素質が開花し、その人にしか成し得ないやり方で成し得ないことをやり遂げていく。今ここにおける一歩一歩が、自分の人生の願いに向かう一歩となり、一歩進むごとにますます幸せ度合いは増していくだろう。

真本音の願い(人生の願い)とは、今ここにおける一歩一歩に(進むこと自体に)幸せを感じられるもの。間違いなく想いを込めた仕事をし、期限までに必ず成果も出すといえる。

躍動感を持ったキャリア形成へ

以上、5回にわたって30歳からの後悔しない転職の思考法について連載してきた。何かが達成されることで解消されるものが反応本音の願いであり、永遠に「達成」はこないが、そこに向かうこと自体が自分のエネルギーとなるものが真本音の願い。真本音の願いと仕事を結びつけることで、その人には常に内発的エネルギーが湧き続ける。ぜひ、躍動感を持ったキャリアを形成してほしい。(ITSUDATSU・黒澤伶)

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