2/24(土)・25(日)アルティーリ千葉 vs. 熊本ヴォルターズを120%楽しむ4つのポイント

B2レギュラーシーズンが終盤戦に差し掛かった第23節は、現在東地区首位のアルティーリ千葉(38勝3敗、勝率.927)が西地区3位の熊本ヴォルターズ(28勝13敗、勝率.683)をホームの千葉ポートアリーナで迎え撃つ注目の対戦が行われる。今シーズン初顔合わせであり、千葉ポートアリーナでの対戦はまったくの初めて。プレーオフで対戦する可能性も十分にある両チームが、毎試合5,000人近くの大観衆で盛り上がるこの会場でどんなドラマを繰り広げるだろうか。その注目ポイントを4つ挙げて展望してみたい。

1. インサイドと表裏一体——アルティーリ千葉の3Pシューティング
18連勝が途切れたかと思えば、1試合落としただけで再び連勝をスタートさせ現在12まで伸ばしているA千葉は、得点(90.4)、フィールドゴール成功率(49.6%)、3P成功率(36.9%)、リバウンド(43.0)、アシスト(23.7)、ブロック(3.6)がリーグトップだ。しかしこの中で特にユニークな傾向にあるのは3Pシューティングではないだろうか。成功率はリーグトップだが、アテンプト数(21.4)はリーグ最少。ビッグマンが攻守でペイントを支配するフィジカルなプレーを基軸に、その結果ペリメーターで生まれる得点機を逃さず高確率で決めているのだ。

個別には、大塚裕土が3P成功率が43.8%(84/192)でリーグトップだが、1月のバイウイーク明け以降の11試合では49.1%(27/55)とさらに好調だ。2月10日の山形ワイヴァンズ戦では、81-82の劣勢で迎えた第4Q残り3分19秒に左コーナーから、87-87の同点で迎えた残り1分11秒に右コーナーからビッグショットを沈めて94-87の勝利を引き寄せた。もう一人のベテラン岡田優介も、35.4%という現時点での3P成功率以上の怖さがある。2月18日の青森ワッツ戦では5本中3本を沈めたが、特に35-42と7点差を追う第2Q残り1分19秒に、トランジションで黒川虎徹からのロングパスを受けてドリブルなしで放り込んだ一撃などは、相手に与えたダメージが大きかったに違いない。ここで流れを引き寄せたA千葉はハーフタイムまでに追いつき、後半逆転して102-78で勝利している。

熊本との2試合でも、インサイドとの表裏一体で展開されるロングレンジゲームの切れ味をどれだけ出せるかが、A千葉にとっては勝利のカギの一つだろう。

大ベテランの岡田優介はキャプテン大塚裕土とともに相変わらず勝負強いシューターとして存在感を見せている(写真/©B.LEAGUE)

2. スティールランキングトップ10をにぎわす熊本ヴォルターズ勢A千葉と熊本の平均失点を確認すると、A千葉が75.4(リーグ5位)であるのに対し、熊本は81.8(同8位)と比較的大きな差がある。しかし、特にこの両チームの対戦では、失点の多い熊本のディフェンスに注目してみるのも面白そうだ。なぜなら熊本にはスティールランキングでトップ10に入るプレーヤーがアーロン・ホワイト(1.6、4位)、山本翔太(1.4、8位)、ジャメール・マクリーン(1.3、10位)と3人おり、逆にA千葉はターンオーバー数がリーグ最多(14.3)のチームだからだ。

熊本ヴォルターズの平均7.9スティールはリーグ2位の好成績で、アルティーリ千葉(7.2、リーグ6位)を上回っている。写真の山本翔太ら3人がリーグのトップ10に名を連ね、アベレージ1.0以上は4人を数える(写真/©B.LEAGUE)

A千葉がこの平均ターンオーバー数で9割越えの勝率を残しているといっても、総数が増えればその分難しい展開になるのは間違いない。スティールの名手たちはどれだけプレッシャーをかけ続けられるだろうか。実際にスティールできなくても、一つ一つのポゼッションでこれまで奏功してきたディフェンスを徹底し続けることで、相手のリズムを狂わせられる可能性も高まる。特に、高い位置でのピックから始まるオフェンスに対して、ガードからビッグマンへのパスを簡単に通させない工夫や、ボールを受けたビッグマンからさらに別のカッターやシューターへと渡るエキストラパスを読めるかどうか。何本かがスティールになり、さらに何本かをパスディフレクションやミスショットで終わらせるような連係ができれば、熊本の勝機は広がる。

ただし実際に勝利するには、そのディフェンスと並行して自らのターンオーバーを平均(12.6、リーグ6位)よりも少なく抑え、平均得点(85.1)を上回るようなオフェンスも必要だ。片輪ではなく攻守の両輪でそのようなプレーができるかどうかが熊本にとってのカギではないだろうか。

3. 外国籍トリオの貢献内容の違い
それらを踏まえた上で頭に入れておきたいのが、両チームの外国籍プレーヤーに貢献内容の対照的な差があるという事実だ。A千葉は外国籍トリオ(ブランドン・アシュリー、アレックス・デイビス、デレク・パードン)による得点の合計が42.1得点(アシュリー16.8、パードン14.4、デイビス10.9)で、これはチーム全体(90.4)の46.6%に当たる。対して熊本の外国籍トリオ(マクリーン、ホワイトとテレンス・ウッドベリー)はリーグ3位の平均19.3得点を記録しているホワイトを軸に3人で54.9得点(ウッドベリーが19.9、マクリーンが15.7)とA千葉よりも12点以上多い。チーム全体(85.1)に対する比率は64.5%に達する。

リーグ規定に達していないもののリーグ2位相当の平均19.9得点を記録しているテレンス・ウッドベリー。熊本の外国籍トリオは得点源としての役割を力強く果たしている(写真/©B.LEAGUE)

逆にブロックショットでは、A千葉が3人で3.1本であるのに対し熊本は1.7。A千葉はデイビス(平均1.2ブロック、リーグ3位)とアシュリー(1.2ブロック、リーグ5位)がトップ5に名を連ねている。簡単に言えば、外国籍トリオ比較では、A千葉がディフェンス志向で熊本はオフェンス志向の数字に見えるのだ。

デレク・パードンは平均14.4得点、9.9リバウンドに加えてスティールも1.1とハイレベル。ブロック部門でトップ5入りしているブランドン・アシュリーとアレックス・デイビスと併せて、A千葉の外国籍トリオはディフェンシブな側面での活躍が際立つ(写真/©B.LEAGUE)

この傾向について良し悪しを論じる必要はない。ポイントとなりそうなのはファウルトラブルだ。ファウルの数では熊本の3人が5.4であるのに対しA千葉は7.2に上る。一つ前の項目に戻って考えてみると、熊本のビッグマンたちのフィジカルなオフェンスでA千葉の外国籍プレーヤーが早い時間帯にファウルトラブルに陥ると、本来の威力を発揮できない時間が長くなるため熊本は攻守両輪の試合展開がやりやすくなる。ウッドベリーもホワイトも、持ち前の得点力をいかんなく発揮できるだろう。

ただし、A千葉はアジア枠のリュウを含むスーパービッグラインナップや熊谷尚也、前田怜緒ら運動能力とサイズを兼ね備えたウイングの投入で、そのようなトラブルを一定以上回避できる。トランジションでもよく走る上、最初の項目で触れたとおりインサイドでビッグマンが奮闘している傍らでクラッチシューターたちが虎視眈々と得点機を狙っている。熊本の3人もファウルトラブルを起こさないようにしなければ、A千葉の3人が大暴れすることになる。お互いどんなパンチの応酬となるか、しっかり我慢できるのはどちらか、非常に見ものだ。

4. 「ホームで強い」、「アウェイで弱い」のコントラスト
もうひとつ、この対戦に影響しそうなとても重要な要素がある。両チームの背中を押すA-xx(A千葉のファン)と熊本ブースターの存在だ。A千葉は今シーズン、B2全体のトップとなる平均4,937人のホームゲーム入場者数を記録している。今節はプレーオフ進出決定後初のホームゲームだが、どれだけ多くの“ブラックネイビー・ネイション”が集結するだろうか。

A千葉のホームゲーム入場者数は2位の滋賀レイクスを約1,500人引き離す断トツの数字だ(写真/©B.LEAGUE)

一方の熊本のブースターも熱い。今シーズンのホームゲームにおける平均入場者数2,462人はリーグ3位。ホームアリーナでは自然発生的に沸き起こるチャンツやクラップがプレーヤーたちを鼓舞する大きな力となっている。熊本のホーム成績が、A千葉(19勝1敗)に次ぐリーグ2位の19勝2敗である大きな理由は、間違いなくブースターからの声援だ。その反動のようにアウェイで9勝11敗と負け越している現状で、今回熊本ブースターはホームの熱気を千葉ポートアリーナに届けたいに違いない。

熊本ブースターの応援ぶりはどこにも引けを取らない熱烈さ。アウェイの千葉ポートアリーナにその熱気が届けられれば、チームも心強いことだろう(写真/©B.LEAGUE)

2月3日、4日に同会場で行われたA千葉と滋賀レイクスの対戦では、アウェイのレイクスブースターの元気な声援も話題になった。いたずらに加熱することなく、節度とお互いへのリスペクトを持って精一杯大声援を贈り合うことは、バスケットボール観戦の醍醐味だ。それを心から楽しんだ結果、両チームの激闘は世界に誇れる80分に昇華する。本気で魂をぶつけ合う両チームの応援が、コート上のドラマにどんな影響をもたらすかとても興味深い。

このほかこの対戦で、例えば個別のマッチアップでA千葉の前田怜緒と熊本の駒沢颯がビッグガードの役割で対峙したらどんな勝負になるだろうかとか、一昨シーズンまで熊本に在籍していた木田貴明が古巣相手にどんなプレーをするかなど、様々な興味のポイントがある。

何より大切なのは戦況だ。レギュラーシーズンで19試合を残し、A千葉は東地区優勝マジック7。リーグ最高勝率確保までもあと10勝に迫っている(滋賀が残り全勝ならタイだが、A千葉が直接対決4勝0敗でタイブレーカー上位)。今節で勝ち星を重ねられれば、プレーオフでの全試合ホームコートアドバンテージ獲得も見えてくる。熊本は西地区首位の滋賀と1ゲーム差であり、あわよくば混戦の西地区で首位奪還を狙いたい。さらに言えば、今節の1勝は、西地区のクラブで今シーズン初めてA千葉に土をつけるチームになることを意味している。見逃せない両チームの対戦は、今週末土日の2日間とも千葉ポートアリーナで15時にティップオフを迎える。

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