経験豊富な頼もしいキャプテン宮澤夕貴…「チームがレベルアップしたところを見てほしい」

約2カ月間の中断期間を経て2月23日から再開するWリーグ。混戦模様となったシーズンの中、16年ぶりの頂点を狙うのが富士通レッドウェーブだ。ここでは優勝へのキープレーヤーに話を聞いた。第2弾は勝負強いシュートや状況判断に優れたプレーを見せる宮澤夕貴キャプテン!

インタビュー=田島早苗
インタビュー撮影=兼子愼一郎

◆自身の体調は良好、そしてチームの成長を感じる今シーズン

試合中に選手からアジャストできていると宮澤はチームの成長を感じている [写真]=兼子愼一郎

――レギュラーシーズンの18試合を終えたところですが、ここまでを振り返ってください。
宮澤 チームとしては悪くないという印象で、今シーズンは役割がしっかりしていると感じています。個々の役割がしっかりしていて、キラ(内尾聡菜)もステップアップしていますし、バランスがいいですね。

今シーズン、すごくいいなと思っているのが、試合の中でのアジャストを選手間でよりできるようになったこと。何が効いていて何が効いてないのか、ディフェンスの何がダメなのかを試合中にアジャストできるようになったことは収穫ですね。当たり前のことではあると思うのですが、今シーズンはよりコートの中で対応していこうという考えがありますね。

私自身もケガなくやれていますし、コンディションも悪くないです。ここ最近のシーズンではパフォーマンスはいい方なのかなと思います。スタッツはあまり気にしない方ですが、3ポイントのパーセンテージは富士通に入ってから一番いいのかな…。

――18試合を終えて44.1パーセントです。
宮澤 そうですよね、今シーズンの最初は40パーセントを超えていなかったけれど、今の数字は悪くはないと思います。リバウンドが少ないのは気にはなっているけれど、得点自体は、もともと積極的にからみに行こうと思っていたし、(得点パターンが)3ポイントシュートだけにならないようにすることも意識しています。

――チームとして見ると、大きな転機は12月の町田瑠唯選手のケガ。それでも1月のトヨタ自動車アンテロープス戦は町田選手が不在ながらも1勝1敗でした。自信にもなったのではないですか?
宮澤 それはありますね。(町田選手のケガ直後の)皇后杯でのデンソーアイリス戦やWリーグのアランマーレ(プレステージ・インターナショナル アランマーレ)戦では大丈夫かな? と思いましたが、そこから修正できたし、ルイさん(町田)がいなくても富士通のバスケット自体は変わらないので、それをみんなで体現できました。落ち着いてプレーできていたと思います。

――「いつも通りのバスケットをすれば大丈夫」という自信はありましたか?
宮澤 はい。確かにルイさんに頼っているところはありますが、ルイさんがいなくなって、どうしようではなく、どうにかしないといけなかった。私はENEOSサンフラワーズ時代にそういう経験もしたので、大丈夫だとは思っていました。ただ、ルイさんとの合わせのプレーは私も結構あるので最初は戸惑いましたね。でも、その中でどうやって点を取ろうかと考えて、キャッチ&シュートだけではなく、いろいろなバリエーションのシュート練習をしました。個人がどうやったら生きるかというのはみんなで意見を出し合い、ミーティングもしました。

――点を取るための練習で工夫したところは?
宮澤 ポストプレーもそうですし、ドリブルからのシュート練習なども以前からやってはいましたが、本数を増やしたり、ムービングを増やしたりしました。スタンディングだけでは絶対にシュートを打てないので、流れの中でのシュートを増やしましたね。

――勝ったトヨタ自動車との1戦目は23得点。金沢総合高校時代を思い出させるような多彩な攻撃パターンでした。
宮澤 結構攻めていましたよね。確かに、あの感じは懐かしかったです。3ポイントシュートだけでは無理だと思ったし、皇后杯のデンソー戦でも最後の方にドライブで攻めたのですが、それをもっと早くからやればよかったという反省点があったので、(ディフェンスとの)ズレができたらアタックしようという気持ちでした。

◆コミュニケーションを活性化した「このチームで優勝したい」

富士通の貴重な得点源として今季もプレー [写真]=Wリーグ

――富士通に移籍して3年目。キャプテンは2年目ですが特別意識したことなどはありますか?
宮澤 今シーズンはコミュニケーションを多くしました。これはどのチームもそうだし、社会全体にもいえることかもしれませんが、後輩が先輩に言えなかったり、逆に先輩が後輩にうまく伝えられないということはどこにでもあると思います。そこでどうしたら思っていることが伝わるのかを考えたときに、チーム全体に話すこともそうですが、1対1で話す時間を作ることやアプローチの仕方を変えることを工夫しました。

――その中でENEOSのときのチームメートでもある林咲希選手が加入したことも優勝に向けて追い風となりますね。
宮澤 はい。それに、毎シーズン思っていますが、今シーズンは、絶対に(タイトルを)取りたいですね。

――やはりファイナル、そして…という思いが強いのでは。
宮澤 そのためにはプレーオフもそうですが、これからの一戦一戦が大事になると思います。やっぱりファイナルの舞台に戻りたいですよね。優勝の瞬間を味わいたいし、チームのみんなにも味わってほしいです。

――宮澤選手もしばらく優勝から遠ざかっていますよね。
宮澤 優勝したいですねー、うずうずしますよ。本当に優勝したい。でも、ENEOS時代とは違う感情で、ENEOSのときは“優勝は義務”で、しなくてはいけないものという感覚でした。でも今は、本当にこのメンバーで優勝したいという思いが強いです。

――ENEOSは背負ってるものが重く大きいからこそのパワーがあります。逆に富士通はそれに負けない、それ以上のパワーを引き出さないといけないともいえますね。
宮澤 だからこそ、本当に勢いが大事だなって。富士通は3ポイントシュートが武器なので、3ポイントシュートが入ると勢いに乗ります。ディフェンス主体のチームではありますが、3ポイントシュートは(勝負の行方を)大きく左右するので。相手が外角のシュートを止めてきたときにどう打破するかは今後も課題だし、個人としても私のことを止めてきたときに、どうやって崩していくかがポイントになると思っています。

――ファンのみなさんも歓喜の瞬間を待っています。
宮澤 ファンの方には熱く、そして愛を感じます。SNSを通して「一緒に戦ってます!」といった言葉もよく見ますが、とてもうれしいですね。声出しもOKになり、ファンの方の声も届くようになったのですが、ディフェンスのコールやワァッという歓声が富士通は特に大きいと感じます。そういった声で流れも変わるし、私たち選手は後押しされるので、本当にいい雰囲気でプレーさせてもらっているし、やっていて楽しいです。

――レギュラーシーズンの最終戦は川崎市とどろきアリーナでホームゲーム。それこそファンのみなさんと一緒に戦うことができます。
宮澤 地元・川崎での試合は本当にありがたいです。個人的には家族も見に来る予定ですし、ファンの方も駆けつけてくれると思うので、いいゲームにしたいです。

――これは個人的な意見なのですが、今シーズンは以前にも増してチームの雰囲気が良い気がします。
宮澤 今シーズン、オーバーコミュニケーションというのをテーマの一つとして掲げているからかもしれません。練習での5対5は、2チームに分かれるのですが、それまでは5対5の後にそれぞれのチームに分かれて話をしていました。今シーズンは共通理解を高めるために全員でよかったところや課題点を話しています。試合では練習の時のチーム分け関係なくプレーすることもあるので、みんなで共通理解をすることによってレベルアップにもつながり、方向性も一緒になると感じています。

――話を伺っていて後半戦が楽しみになってきました。改めて後半戦に向けての思いを聞かせてください。
宮澤 ディフェンスが崩れないことと、試合中でのアジャストが必要だと感じています。中断期間にチームがレベルアップしたところを見てほしいし、レギュラーシーズンの最終節、とどろきアリーナではホームで楽しんでもらえるようなゲームができるように頑張りたいし、プレーオフにつながる展開にしていきたいです。

最終戦はホームのとどろきアリーナで開催。「地元・川崎での試合は本当にありがたいです」と宮澤 [写真]=兼子愼一郎

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