「XV」から「クロストレック」へ。スバル SUVブラザース末弟の実力の人気を探る

2022年12月のフルモデルチェンジで「XV」から「クロストレック」に車名を改めたスバルのCセグメント クロスオーバーSUV。発売から1年を経過したところで、実際の販売データなどを基に人気の傾向などを検証してみたい。

新世代スバルの第1弾として登場

適度なサイズのクロスオーバーSUVは、高速道路でも街中でも走りは軽快。視界も良く運転しやすい。

インプレッサがベースのクロスオーバーSUVとして2010年に登場した「インプレッサXV」は、2012年に登場した2代目から単に「XV」に車名を変更。そして2022年末に登場した現行型の4代目からは、世界統一名称の「クロストレック」となった。最新版のプラットフォームやアイサイトなども採用し、新世代スバルの尖兵的存在でもある。

今回、取材用の機材車を兼ねて試乗したのは、上級グレードのリミテッド。駆動方式はスバル得意の4WDではなくFFだった。2Lの水平対向4気筒エンジンに小型のモーターを組み合わせた「eボクサー」と呼ばれるハイブリッドはパラレル式だが、モーターのみで駆動する時間は短く、マイルドハイブリッドに近い。他のスバル車がターボでアシストする領域をモーターでアシストする感覚だ。

それでも、Cセグメントとしては少し大きめだが全長4.5mを切るサイズは絶妙で扱いやすく、走りっぷりは軽快だ。アイサイトやインフォテインメントシステムなど、安全&快適装備は充実しているし、疲れにくいシートや視界の良いコクピットは、市街地でも高速道路でも運転しやすい。

しかも取材時に首都圏としては珍しい降雪の高速道路や市街路を走る機会もあったが、試乗車はスタッドレスタイヤを装着しており、FFとはいえ200mmの最低地上高もあり、そしてなんといっても「スバルのSUV」は、こんな条件下でも精神的に余裕を持って走ることができる。もちろん過信は禁物だが、こうしたシチュエーションでは大きなアドバンテージになることは間違いないだろう。

今回の試乗では約350km(高速が6割、市街地が4割)の走行で、平均燃費計は13.8km/Lを記録した。ハイブリッド車としては少し物足りない数値だが、雪道走行や渋滞もありながら、WLTCモード(16.4km/L)の8割以上を記録したのだから、まあ妥当なところだろう。

2Lエンジン+CVTにモーターを組み合わせたスバルのハイブリッドシステム「eボクサー」。

スバル車を買うなら、やはり4WDか?

一番人気は、トップグレードであるリミテッドの4WD。全体の半数以上を占めている。

さて、そんなクロストレックは2022年12月から2023年11月の1年間で、2万2116台を販売している(スバル調べ、以下同じ)。ちなみに自販連のデータでは、クロストレック(および先代のXV)はインプレッサと統合されての数値として発表されているが、比率的には圧倒的にクロストレックのほうが多いという。

2024年1月末の時点で、オーダーしてから工場出荷までの期間は2カ月程度。最近のモデルとしては、待たされる期間は短い。この手のクルマを少しでも早く手に入れたいと考えているなら、クロストレックは選択肢に入れておいたほうがいいだろう。

クロストレックのグレードは、上級グレードのリミテッドとベーシックなツーリング、それぞれに4WDとFFがあるが、パワートレーンは前述のハイブリッドのみというシンプルな構成だ。人気グレードと比率は、以下のようになっている。

①リミテッド(4WD):51.8%
②リミテッド(FF):19.2%
③ツーリング(4WD):18.6%
④ツーリング(FF):10.4%

全体では、リミテッドとツーリングが約7:3。また駆動方式では、リミテッドは4WDが73%でFFが27%、ツーリングは4WDが64%でFFが36%となる。やはり、スバル=4WDのイメージは強いようだ。

リミテッドとツーリングでは、FF/4WDとも約40万円の価格差があるが、センターインフォメーションディスプレイやデジタルマルチビューモニターなどを標準装備(ツーリングはオプションで選べる)し、内外装の意匠なども差別化されているから、やはりリミテッドの人気が高くなるようだ。とはいえ、アイサイトのコアテクノロジーなどに違いはないから、ツーリングの装備も十分なレベルにはある。

11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステムは、リミテッドは標準装備、ツーリングもオプションで選べる。

意外と地味目なボディカラーが人気なのは・・・

ボディカラーの一番人気は、訴求色でもあるオフショアブルー メタリック。

人気のボディカラーは、

①オフショアブルー メタリック(33%)
②クリスタルホワイト パール(22%)
③マグネタイトグレー パール(12%)

と、比較的地味目な3色で全体の7割近くを占める。トップのオフショアブルー メタリックは訴求色だ。鮮やかなオアシスブルーや、今回の取材車のピュアレッドといった派手めな色もクロストレックのスタイリングには似合うのだが、日本では人気が低いようだ。

ユーザー層は、男女比率では男性81%:女性19%と圧倒的に男性が多い。年齢層では、

①50代:28.8%
②60代:24.2%
③40代:15.9%
④70代:11.5%
⑤30代:10.2%
⑥20代:7.4%

と、40〜60代で7割近くを占める。地味目なボディカラーが選ばれるのは、このあたりにも要因があるのかもしれない。

購入時には、「安全性」「アイサイトなどの運転支援技術」「運転する愉しさ」「走行性能」といったポイントを重視している人が多い。

永年クルマと付き合ってきて、子育ても落ち着いて、自分とパートナーを中心に好きなクルマを選べる。アウトドア志向もあり、どんな状況下でも安心して乗れるクルマを選びたい。そんな人がクロストレックのオーナーには多いのだろうか。

ただ、個人的にはクロストレックのイメージをもう少し強めるためには、 の導入も検討して欲しいところだ。2.5Lエンジンを搭載し、SUV性能も高めたモデルは、ライバルにも大きなインパクトを与えるに違いないからだ。(文:篠原 政明)

日本導入を期待したい、クロストレック「ウィルダネス」。

●全長×全幅×全高:4480×1800×1580mm(シャークフィンアンテナ装着車)
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:水平対向4 DOHC+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:107kW(145ps)/6000rpm
●最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4000rpm
●モーター最高出力:10kW(13.6ps)
●モーター最大トルク:65Nm(6.6kgm)
●トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・00L
●WLTCモード燃費:16.4km/L
●タイヤサイズ:225/50R18(オールシーズン)
●車両価格(税込):306万9000円

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