ナワリヌイ氏の母、遺体と対面 当局が「密葬」強要と

近年のロシアで最も著名な反政権派指導者で、収監されていた北極圏の刑務所で16日に死亡したアレクセイ・ナワリヌイ氏(47)の母親は22日、遺体と対面したことを明らかにした。当局からは「秘密」に埋葬するよう圧力を受けているという。母リュドミラ氏はこれに先立ち20日に公開された動画の中で、「人道的な方法で埋葬」するため、遺体を引き渡すようウラジーミル・プーチン大統領に求めていた。

ナワリヌイ氏の母リュドミラ・ナワルナヤ氏は22日に新たに公開された動画の中で、21日に遺体安置所に案内され、死体検案書に署名したと述べた。

ナワリヌイ氏の広報担当によると、死体検案書には自然死と記載されていたという。

ナワリヌイ氏の妻ユリア・ナワルナヤ氏は、夫はロシア当局に殺害されたと主張している。

リュドミラ氏は、息子が収監先の刑務所で16日に死亡したとの知らせを受け、北極圏にあるヤマロ・ネネツ自治管区サレハルドに向かったものの、息子の遺体との面会を拒否された。20日には、埋葬できるように遺体を引き渡すようプーチン氏に直接訴えていた。

「密葬」行うよう脅迫

リュドミラ氏の動画は22日、

された。

その中でリュドミラ氏は、法律では当局は息子の遺体を引き渡さなければならないと定められているが、当局に引き渡しを拒まれ「脅迫」を受けていると述べた。また、当局は埋葬する場所や時間、方法などの条件を指定してきたとした。

「当局は私を墓地のはずれにある新しい墓に連れて行き、『あなたの息子はここに眠ることになる』と言った」、「これは違法だ。当局はクレムリン(ロシア大統領府)か捜査委員会本部から命令されている」と、リュドミラ氏は話した。

リュドミラ氏は「私がこの動画を録画するのは、当局が私を脅し始めたから」だとして、「当局側は私の目を見て、もし私が密葬に同意しなければ、息子の遺体をどうにかすると言った」のだと明らかにした。

「あなたに残された時間はもうない。遺体の腐敗が進んでいる」とも言われたという。

動画の最後で、リュドミラ氏は息子の遺体を引き渡すよう求めた。

ロシア当局は、反応していない。

バイデン氏、ナワリヌイ氏の遺族と面会

こうした中、アメリカのジョー・バイデン大統領はカリフォルニア州サンフランシスコで22日、ナワリヌイ氏の妻ユリア・ナワルナヤ氏と娘ダーシャ・ナワルナヤ氏と面会した。

ホワイトハウスの声明によると、「大統領はアレクセイ・ナワリヌイ氏の並外れた勇気、そして汚職との闘いや、自由で民主的なロシアを実現するための闘いで残した偉業を称賛した」という。また、アメリカは新たな対ロシア制裁を発動する準備をしていると付け加えた。

ナワリヌイ氏の獄死は、 16日に発表された 。

ナワリヌイ氏が収監されていた北極圏シベリア地方の刑務所の当局によると、同氏は「散歩」の後に倒れ、意識が戻らなかったという。

しかし、ナワルナヤ氏はプーチン氏の命令で夫が殺害されたと主張。「自由なロシア」のために闘った夫の活動を引き継ぐと宣言した。

これに対してクレムリンは、プーチン氏の命令によるものだとの主張を否定し、ナワリヌイ氏の死に対する西側諸国の反応は「ヒステリック」だとした。

ロシアの政治学者タティアナ・スタノワヤ氏は、当局がナワリヌイ氏の遺体を母親に見せることにしたのは、「取引に応じる」よう母親を説得したかったためだろうと指摘した。

「遺体は引き渡される。ただし、葬儀が政治的イベントにならないことが条件になる」と、スタノワヤ氏は自身のテレグラム・チャンネルに投稿した。

ナワリヌイ氏は2020年8月、シベリアを訪問中に軍事用の神経剤「ノヴィチョク」を盛られ一時意識を失ったが、ドイツで治療を受けて回復した。

2021年1月にロシアに戻ると、同氏はすぐに詐欺と法廷侮辱罪で逮捕され、禁錮9年の実刑判決を受けた。

ナワリヌイ氏の訃報を受けてロシア各地では追悼集会が開かれたが、当局はそれを厳しく取り締まった。急きょ設けられた慰霊碑は撤去され、数百人が逮捕された。

(英語記事 Alexei Navalny: Putin critic's mother says she has been shown his body

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