両親の財産を、他人に好き勝手されるなんて…弟家族の不仲が招いた「まさかの相続トラブル」に、姉が選んだ禁断の対応策

(※写真はイメージです/PIXTA)

「跡継ぎの長男が実家不動産を相続する」。これを暗黙の了解としてきたある家族ですが、長男夫婦が不仲になったことで、さまざまな懸念が生じてきました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

「父親亡きあとの実家は弟のもの」で納得していたが…

今回の相談者は、50代の山田さんです。父親が亡くなり、妹と弟の3人で相続の手続きをすることになったのですが、財産の行方に懸念が生じてきたとのことで、筆者のもとを訪れました。

「亡くなった父の主要な財産は、自宅と敷地内のアパートです。まだ借り入れが残っており、相続税の申告は不要だといわれたのですが…」

山田さんの実家は、亡き父親だけでなく、長男である弟家族も同居していました。山田さんと妹は、いずれも20代で結婚して実家を離れており、それぞれ夫名義の自宅で暮らしています。そのため、自宅不動産は弟が相続することが現実的です。

「私も妹も、父の遺産は弟がすべて相続することに異論はありませんでした」

山田さんの実家の土地は、もともと母親の所有地でした。数年前に母親が亡くなったとき、弟と父親の共有名義としたことで、父親60%、弟40%の割合となっています。

弟が離婚したら、実家はどうなる?

山田さんの父親は遺言書を残さなかったため、これからきょうだい3人で遺産分割協議を行いますが、不安材料があるといいます。

「これまで実家には、両親と弟家族が暮らしていたのですが、父親が亡くなる少し前から、弟のお嫁さんが3人の子ども全員を連れて実家へ帰ってしまったのです」

父の相続時には相続放棄するつもりだった山田さんと妹ですが、弟の家族の変化により、考えが変わってきたといいます。

「もし弟夫婦が離婚したら、恐らくおいめいとも疎遠になるでしょう。そうなれば、両親のお墓は任せられませんよね?」

「それに、弟夫婦が別居だけで離婚しなかった場合、もし弟が先に亡くなれば、弟の全財産はお嫁さんのものです。あの家は両親の財産で、私たちが育ったところです。それを他人が好き勝手できる状況って、どうなんでしょう…?」

実家・お墓を守るため、禁断の「不動産の共有」をすることに

弟夫婦の現状を見る限り、実家とアパートのすべてを弟名義にするには不安があるといいます。

実家をきょうだいで守っていくのであれば、父親の名義を山田さんか妹、あるいは2人にすることで、きょうだいの共有となります。すでに弟の名義があるため、弟の相続では妻子が相続人ということには変わりはないのですが、それでも長男の妻と子どもだけのものとなるよりは歯止めがききます。

ただし、共有者それぞれの相続を考えると、将来的には関係者が増えるため、いずれは売却して共有解消しなければなりません。

山田さんは、自分と妹の不安を軽減するには、とりあえずきょうだいで実家を共有するのがいいのではないかと考えるに至りました。

「妹と弟と、今後のことをよく話し合ってみます」

山田さんはそういうと、事務所をあとにされました。

弟家族の状況の変化により、弟の妻子だけの所有にしないよう、とりあえずはきょうだいで共有しておくことに落ち着きそうですが、将来相続が発生すれば、そこで共有者が増えることになり、面倒な状況になることは必至です。

そのためにも、いつ、どのタイミングで売却して分配するのかなど、あらかじめルールを決めておくことが望ましいといえます。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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