「大手企業」に就職すれば人生安泰?「大手・中小」それぞれの年収差はどのくらい? 大手企業のメリットも解説

大手企業と中小企業の年収の違い

まずは、大手企業と中小企業の年収の違いについて見てみましょう。厚生労働省が公表している令和4年賃金構造基本統計調査では、大企業(従業員1000人以上)の男女計の平均賃金は34万8300円、対して中企業(従業員100~999人)は30万3000円、小企業(従業員10~99人)は28万4500円と大企業の方が中小企業よりも高くなっています。

年収ベースで計算すると、大企業と中企業の差は50万円以上、大企業と小企業の差は76万円以上の開きがあります。業種や役職によって年収は当然異なりますが、平均的には大企業の方が中小企業よりも年収が高い傾向にあることがわかります。

年収には現れない福利厚生の手厚さが魅力

年収の比較を見てきましたが、加えて、そこには現れない大手企業の大きなメリットとして「福利厚生の手厚さ」が挙げられます。

大企業は中小企業に比べて福利厚生が充実している企業が多く、この福利厚生によって日々の生活コストが下がり、生活の安定感が増します。福利厚生の領域には、通勤・住宅に関するものを始めとして、健康・医療、育児・介護、キャリア形成、文化レクリエーション、財産形成に関するものなど多岐にわたります。

住宅に関する手厚い補助

福利厚生の中でも特に家計に対する影響が大きいのが、「家賃補助」でしょう。一般に毎月の固定費の中で大きな割合を占めるのが家賃です。

東京都の1kの平均相場を見ると、場所によって多少の差はありますが、23区内の場合、安くても7万~10万円程度の物件が中心となります。新卒社員で手取りが21万円の場合、家賃7万円の住宅に住んだとしても、家賃支出が収入の3分の1を占めます。

大企業勤務の場合、この負担の大きい住宅コストに対して、「家賃補助・住宅手当」や「社宅制度」といった福利厚生を設けている企業が多く、特に手厚い企業では、家賃の9割以上を補助するような企業も存在します。筆者の勤めていた大手企業でも、地域によって補助金額の差はありましたが、都内在住であれば最大で8万円程度の家賃補助を受けることが可能でした。

住宅手当の場合は補助された金額が所得に上乗せされるため社員が支払う税金は増しますが、借り上げ社宅制度を採用している企業の場合は補助を超えた金額分が毎月の給与から控除されるため、補助されている金額分は年収に加算されません。

仮に7万円の補助が出ている場合は年間で84万円分の家賃を補助してもらいつつ、その分の金額は個人の所得として計算されないため、社員にとっては非常に魅力的な制度となります。

グループ会社の存在が与えるメリット

大手企業には「グループ企業」が存在することが多く、福利厚生としてグループ企業のサービスを安く利用できたり、キャリア形成に活用できたりすることもメリットとして挙げられるでしょう。例えば大企業の場合、さまざまな業種業態のグループ企業を傘下に抱えていることが多いです。

その場合に、グループ企業のサービスを社員優待の割引価格で利用することなどができます。具体的には、とある大手保険会社のグループでは、自動車購入時の自動車ローンの金利を会社が補助する制度を、全グループ企業の従業員が活用できるといったサービスなどが存在します。

また、キャリア形成においては、グループ企業への「出向」という選択肢があります。

新しい仕事に挑戦したいけれど、いきなり転職するのはリスクがあり一歩踏み出せないといった場合に、希望する業種のグループ会社が傘下にあれば、その企業への出向という手段を活用することで、転職することなく新たな業種へチャレンジできる可能性があります。

なお、グループ会社への出向制度は設けている企業と設けていない企業が存在するため、企業ごとに確認が必要です。

自分の望むライフスタイルに合わせて将来の選択を

大企業のメリットについて、主に福利厚生に含まれる住宅やその他サービスに関する補助やキャリア形成の観点で解説しました。

一方、大企業に勤めるリスクを挙げるならば、転勤制度を設けている企業が多いため、引っ越しが頻繁に必要な可能性があること、将来的に住む場所を決めることが難しいことなどがあります。

大企業でも中小企業でも、その企業のリアルな情報をしっかりと収集したうえで、自身の望むライフスタイルに合った企業選びが大切となってくるでしょう。

出典

株式会社マイナビ 2024年卒大学生就職意識調査
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査 企業規模別にみた賃金

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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