小さい頃から正しい知識を「包皮は必ず元の状態に戻そうね」「戻らなくなったらすぐに教えて」【ママ泌尿器科医】

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今回は、男性器ケアに関して保護者の皆さんにぜひ知っておいてもらいたい、「嵌頓包茎(かんとんほうけい)」について詳しくお伝えします。ママであり泌尿器科医でもある岡田百合香先生の「お母さん(お父さん)のためのおちんちん講座」ママ泌尿器科医#43です。

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嵌頓包茎(かんとんほうけい)とは

嵌頓包茎(かんとんほうけい)とは、包皮の狭い部分に締め付けられて、亀頭の血流が悪くなる状態です。亀頭部のむくみや腫れ、痛みが出ます。
包茎の分類として雑誌やインターネットで「仮性包茎」「真正包茎」「嵌頓包茎」と並べられていることもあり、「包茎の中のひとつの種類かな~」と考えがちですが、全く違います。
嵌頓包茎はすぐに受診が必要な陰茎の緊急事態です。
「僕、仮性/真正包茎なんだよね」という使い方は問題ありませんが、「実は俺、嵌頓包茎でさ~」という使い方はあり得ません。
「嵌頓包茎はすぐに受診が必要な状態である」ということをまずは知ってください。

とはいえ、嵌頓包茎の程度は様々です。重症なものであれば「どう見てもおかしい!」と分かるのですが、初期の段階だと「ちょっといつもより腫れているかな?」程度のことも。
また悪化に伴い痛みが出ますが、初期やしめつけの程度が強くなければそれほど痛みを感じません。子どもや高齢者は特に痛みの訴えがそれほどはっきりしないこともあります。
「痛がっていないから大丈夫」ではなく、亀頭が腫れていたり浮腫んでいる場合、いつもと形が違う場合は嵌頓包茎を疑いましょう。

嵌頓包茎は基本的に緊急疾患です。締め付けが強ければ血流障害が起こり、最悪の場合壊死につながることもあります。
放置して自然によくなることはありません。早期に受診し軽症であれば手術をせずに手で整復できます。一方、重症で手で戻せない場合は手術(包皮の狭い部分を切開する)が必要となります。
発見したらすぐに泌尿器科(夜間休日であれば救急外来)を受診をしましょう。ただし、救急車を呼ぶ必要はありません。

「むいたら戻すこと」を忘れずに

現在は「子どもの包皮は保護者がむく必要はない」という考え方が基本ですが、過去には「保護者がむいてあげるべき」と言われていたこともあります。その時、「戻す」ことが徹底されなかったため、嵌頓包茎で病院受診する子どもが急増したという話を学会で聞きました。
国内のある小児医療施設で嵌頓包茎の患児(1歳から12歳)のデータを集めた論文によると、全例が包皮翻転手技(包皮をむくこと)に関連したものであり、半数が本人、半数が母親によるものだったそうです。
「むく必要がない」と言われても、むいてあげたいと考える保護者は一定数おられます。
その場合、「むいたら戻すこと」を忘れずに行って頂きたいと思います。

また、思春期前後に自分で包皮を剥こうとして、嵌頓包茎になってしまう男性もいます。インターネット上には「包茎を治すために、包皮をむいたまま放置しよう」と推奨する誤った情報もあります。
この世代の問題は羞恥心によって受診が遅れることです。お子さんが小さい頃から、「包皮は必ず元の状態に戻そうね」「戻らなくなったらすぐに教えて」と伝えておくことが重要です。

子どもが自転車デビューする際、まずはブレーキを教えますよね。
包皮についても、みなさん「むく」ことに関心がいきがちですが、まずは「戻す」ことの重要性を知っていただき、お子さんにも伝えてください。
そして、もし戻すことを忘れて嵌頓包茎になってしまった場合にも、迅速に適切に対応してもらえると嬉しいです。

文・監修/岡田百合香先生、構成/たまひよONLINE編集部

●記事の内容は2024年1月の情報で、現在と異なる場合があります。

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