中国の研究者、リチウムイオン電池の分離・回収で大きな進展

中国の研究者、リチウムイオン電池の分離・回収で大きな進展

使用済みリチウムイオン電池を回収する中間試験実証ライン。(資料写真、長春=新華社配信)

  【新華社長春2月23日】中国科学院長春応用化学研究所はこのほど、同研究所のグリーン(環境配慮型)分離化学・クリーン冶金(やきん)研究グループが、使用済み車載リチウムイオン電池の分離・回収の新プロセスで大きな進展を遂げたと明らかにした。

  研究チームのリーダーを務める陳継(ちん・けい)氏は、車載リチウムイオン電池の生産、使用、輸出において、中国はいずれも世界をけん引していると指摘。リチウムイオン電池の回収とリサイクルは環境汚染の解決、二酸化炭素(CO2)排出量の2030年までの減少転換、60年までの実質ゼロを目指す「双炭」目標の実現、国内でリチウム、ニッケル、コバルトの安定供給確保にとって重要な意義を持つと説明した。

中国の研究者、リチウムイオン電池の分離・回収で大きな進展

試験を行う研究チームのメンバー。(資料写真、長春=新華社配信)

  使用済み電池の正極材成分の回収は、電池の粉砕過程でブラックマスと呼ばれる正極材成分を含む黒い粉体に混入した鉄、アルミニウム、銅、カルシウム、マグネシウムなどの不純物を化学的手法で除去する。抽出・分離した高純度のリチウム、コバルト、ニッケルをそれぞれ製品化し、高価値のリチウム、コバルト、ニッケルを循環利用し、新たなリチウムイオン電池の正極材料の製造に使用するというプロセスをたどる。リチウム、コバルト、ニッケルの抽出・分離技術はその重要なステップに当たる。従来の分離方法は、プロセスが複雑で、エネルギー消費が多く、大量の酸やアルカリを消費する。このため、回収効率を高め、環境汚染を軽減するには、新しい抽出システムとグリーン(環境配慮型)分離・回収の新プロセス開発が必要だった。

  同研究所は23年に、三元系リチウム、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウムなどのリチウムイオン電池のブラックマスの浸出、抽出、分離、回収に対応し、年間100トン級の使用済みリチウムイオン電池を処理できる中間試験実証ラインを独自に建設した。中間試験プラットフォームは、新抽出システム評価、新プロセス開発と生産実証を統合した機能を持つ。研究グループは分離プロセスを革新し、ブラックマス浸出液中のアルミニウムやカルシウム、マグネシウムなどの不純物元素がニッケル、コバルト、マンガン、リチウムの抽出と分離に深刻な影響を及ぼすという技術的問題を解決した。新たな分離プロセス技術の開発は、省エネと排出削減、生産コストの削減を可能にする。(記者/孟含琪)

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