【徹底解説】浜名湖で高校生の遺体がみつかった事件は傷害容疑など5人逮捕…捜査見通しを若狭弁護士に聞く

浜名湖で17歳の男子高校生の遺体が見つかった事件は、傷害などの疑いで少年を含む5人が逮捕されました。静岡県警は殺人事件とみて捜査を進めていますが、今後の捜査の見通しについて元東京地検特捜部副部長で弁護士の若狭勝さんが詳しく解説します。

2月9日、静岡・湖西市新居町の浜名湖畔で、袋井市に住む17歳の男子高校生の遺体が見つかった事件。警察は今週、被害高校生に対する傷害などの疑いで少年を含む5人を逮捕しました。

逮捕された5人のうち傷害と監禁の疑いがもたれているのが浜松市中央区の21歳の無職の男です。21歳の容疑者の男は、フィリピン国籍の18歳の男とともに男子高校生を暴行した上、17歳の少年3人とともに車に監禁した疑いがもたれています。男子高校生と、5人の間にいったい何があったのか、

・2月4日の午後7時ごろ袋井市の自宅を出た男子高校生。

・その約3時間後には、浜松市中央区の繁華街で同年代くらいの男女数人と飲食していたといいます。

・それから日付けが変わった5日 未明、男子高校生の姿は浜松市中央区にある友人宅のアパートに。

・この友人宅を最後に男子高校生は行方不明となり、9日 遺体で発見されました。

男子高校生が最後に滞在していた友人宅のアパート周辺で、男子高校生に暴行を加え、車に監禁した疑いがもたれている21歳の容疑者の男。

22日、21歳の容疑者の男の母親が取材に応じました。

21歳の容疑者の男と同居している女性から聞いたというのは2月5日の友人宅での出来事です。

(21歳の容疑者の男の母親)

「多分、女性が17歳から18歳になる誕生日パーティ(があった)」

21歳の容疑者の男と男子高校生らは、浜松市に住む女性の18歳の誕生日パーティーに参加していました。そこで男子高校生がトラブルに巻き込まれたといいます。

(21歳の容疑者の男の母親)

「中国人(男子高校生)はバイクを借りて」「運転して戻ってから(バイクを)ボーンと倒した」

男子高校生は、誕生日パーティーの際、バイクを借りて買い物にでかけ、帰ってきた際にそのバイクを倒したことでトラブルに。その後、パーティーに参加していた女性をめぐるトラブルで、その女性の恋人であるブラジル国籍の男性とけんかになったといいます。

(21歳の容疑者の男の母親)

「誕生日の若い女の恋人と中国人(男子高校生)がけんかした」「女の恋人はすごい怒っていて」

Q:21歳の容疑者の男も殴ったことになっているが?

「殴っていない」「ただ携帯もっていって(撮影した)だけ」

このトラブルをきっかけに複数人から暴行を受けた男子高校生は、21歳の容疑者の男の友人の車に乗せられ、別の場所に連れ去られたと話します。

(21歳の容疑者の男の母親)

Q:車に(男子高校生を)乗せたってところでそのまま車はどこかに行った?「いいよあなた自分で帰ってください」

Q:車でどこかまで連れていって、それで後は自分で帰れといった?

「そうそう」

司法解剖の結果、死因は溺死で亡くなってから1週間ほど経過。殴られた痕とみられるあざが全身に確認され、衣服はほぼ着ていない状態だったということです。警察は、男子高校生が死亡した経緯について、21歳の容疑者の男ら5人が何らかの事情を知っているとみて慎重に調べを進めています。

〈スタジオ解説〉

(永見 佳織 アナウンサー )

浜名湖で17歳の男子高校生の遺体が見つかった事件は、今週になり大きく動きました。2月13日に捜査本部が設置されてから1週間後の20日、少年を含む5人が、傷害などの疑いで逮捕されました。

まず、今回の事件、捜査の難しさというのはどのくらいでしょうか?

(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)

この手の事件の難易度を10段階であらわすとした場合に、恐らくこの事件は7くらいの難しさ、比較的難しい方に思います。

(永見 佳織 アナウンサー )

それはどうしてなんでしょうか?

(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)

もともと共犯事件というのは結構難しいと、共犯者が自分の責任を軽くするために、ほかの共犯者に責任を負わせようとして、真実の供述、真相を言わないということ、しかも今回は共犯が2人ということではなくて5人もいるということ、さらに今回は1人亡くなっているわけですから、亡くなったことについての刑事責任の追及を警察としてはやはり断固としてやらなくてはならないということなので、そのようなことからすると結構難しい部類のことだと思います。

(永見 佳織 アナウンサー )

今回、傷害と監禁容疑での逮捕となったことに関してはいかがですか?

(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)

少なくとも、本当だったら例えば傷害致死とか殺人容疑で逮捕して、捜査した結果それが傷害止まりになりましたというのであればよいのですが、逆に傷害などで逮捕していると、それよりも重い傷害致死とか殺人罪に切り替えて起訴するというのは比較的難しいとされているんです。その意味で今回はやはり殺人ということを視野に置いているとすると、今回の傷害と監禁で逮捕しているというのは、最初から出発点としてはかなり難しい段階にあるのだろうと思います。

(永見 佳織 アナウンサー )

そしてさらに難しいポイントのひとつとして死因になります。

県警の司法解剖の結果、男子高校生の死因は「溺死」で、亡くなってから

1週間ほどたっていたということです。この「溺死」というのもポイントですよね。

(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)

そうです。少なくとも浜名湖に投げ入れられると仮にした場合に、投げ入れられる時点ではまだ生きていたということなんですね。生きている人を浜名湖に投げ入れればそれは殺人と評価できると思うのですが、そうだとしたら投げ入れた人は誰なのか、どういう状態、身体の状態で投げ入れたのか、あるいはひとりが投げ入れたのか、ほかの人間がそこにいたのかどうなのか、その辺のところをひとつひとつ解明していかなければならないという点も難しさとしてはあると思います。

(永見 佳織 アナウンサー )

そしてDaiichi-TVは、逮捕された5人のうちの1人で、男子高校生に対する傷害と監禁の疑いで逮捕された21歳の容疑者の男の母親から話を聞くことができました。この中で、5日の出来事について話をしています。

男子高校生は女性の誕生日パーティーに参加し、そこでトラブルとなって暴行を受け、その後、車で別の場所に連れていかれ置き去りにされたと話しています。ただ、これはあくまで21歳の容疑者の男と同居する女性から聞いた話になります。

この話の信ぴょう性、また、もしこれが本当だった場合、どんな容疑で立件される可能性があるのでしょうか?

(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)

自分で帰るということで置き去りにしたということが、例えば瀕死状態だと、かなり死に至るような危険な身体の状態だったと、それを置き去りにするということにというと、その場合は保護責任者遺棄致死とか、保護責任者の罪名が問えるのですが、ただ今回の場合は少なくとも生きている状態で投げ入れて溺死ということですから、その意味では、置き去ったこと自体が何らかの罪になる可能性は少ないと思います。

(永見 佳織 アナウンサー )

やはり死因の「溺死」というのが捜査のポイントのひとつになってくると思います。そして、警察は、男子高校生が死亡した経緯について、21歳の容疑者の男ら5人が何らかの事情を知っているとみて慎重に調べを進めています。今回は、容疑者の中に少年も含まれていますが、今後の捜査の見通しや難しいポイントについて改めて教えていただけますか?

(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)

先ほども申し上げましたが、共犯事件というのは、とかく自分の責任を軽くしてほかの共犯者を重くすると、話すという傾向があるんですよね、そういうなかで、ひとりひとりから詳しく聞くと、何か一人でも話が出てきたら、その話をこちらの共犯者にぶつける取り調べをするんですよね、そうするとこちらの共犯者は「そいういうことまで分かっているのか」というようなことで、話し始めるというようなこともあるので、こういうかたちでどんどん積み重ねていくということが念入りに行われる必要があるというふうに思います。

(永見 佳織 アナウンサー )

そうすると、ひとりひとりにいろいろ供述をしてもらわなけらばならないということになりますね。

(元東京地検特捜部副部長 若狭 勝 弁護士)

そうですね、やはり関係者の供述というのが事件の真相を解明するためには大きな力にはなると思います。

(永見 佳織 アナウンサー )

警察は慎重に調べを進めています。

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