茂木健一郎「ネガティブ思考は、人類の進化の過程で残されている非常に重要な働き」その深意は? 脳科学的視点で解説

脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
2月17日(土)の配信では、「マイナス思考にならない方法」に関する相談に答えました。

パーソナリティの茂木健一郎

<リスナーからの相談>
私の悩みは「マイナス思考」になってしまうことです。何でも「物事がうまくいかない……」と思ってしまいます。 どうすれば マイナス思考にならないで済みますか?

<茂木の回答>
脳の研究をしていておもしろいなと思うのですが、人間はいろいろ、くよくよ悩むんです。「うまくいかないのでは」とか「ダメなんじゃないか」とか。

こういう傾向を「ニューロティシズム(神経症傾向)」といって、「人格の五大要素(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向)」の1つとされています。

五大要素とされているということは、人間には、それぞれ異なる5つの性格があるということです。これはどういうことかというと、人類は進化の過程で“マイナス思考が役に立ってきた”ということです。イケイケドンドンの人ばかりの世界は危ないですよね。

たとえば(氷河時代に)「マンモスが来ちゃったよ! やっつけようぜ!」と言う人に対して、「ちょっと待って。今の俺たちに、あの巨大なマンモスを倒す力があるのか? うまくいかないのでは……」と言う人がいると、ちょうどバランスが取れるわけですよね。

相談者さんは、ご自身のマイナス思考に悩んでいるとのことですが、今日から胸を張ってください。そのマイナス思考は、人類の進化の過程で大切な1つの心の働きとして保存されてきたということです。

ただ、ご自身としては「そうはいっても何とかならないのか?」とお思いになるでしょう。そこで、脳の働きとして注目していただきたいのが「メタ認知」です。メタ認知というのは、「自分自身を客観的に見ること」です。

たとえば、自分が抱えているマイナス思考の感情をメモに書き出すと、そのマイナス思考の原因となっている感情を客観的に見つめることができるようになります。これがメタ認知です。

さらに、それを「再解釈」する。たとえば「やりたくないな」と思っていることがあるとします。行動に移すことで起こるかもしれないリスクや、困りそうなことをあらかじめ予測して、それに対して心の準備をしておくことで、「私の脳が下準備をしてくれているんだ!」と安心できるようになります。

これは「再解釈」といって、脳の前頭葉の働きになります。これが働くことにより、ネガティブ思考の自分が、むしろ、いろいろなことに積極的にチャレンジできるようになる、1つの心の支えにすることもできます。

あらためての話になりますが、ネガティブ思考は、進化の過程で人類に残されている非常に重要な働きでもあるので、自分がもともと持っているネガティブ思考の性質を“個性”として受け入れて、ぜひ、「メタ認知」と「再解釈」の2つの脳の働きを活かして前向きになっていただけたらうれしいなと思います。

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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎
番組Webサイト:https://audee.jp/program/show/11745

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