戦火もくぐり抜けた鹿児島市役所の“顔”…本館正面飾る薩摩焼レリーフ 87年経て修復へ 制作者の孫が協力、2024年度中の完成目指す

正面玄関に飾られている薩摩焼の円形レリーフ=鹿児島市役所

 鹿児島市は、市役所本館が完成した1937(昭和12)年から正面玄関を飾る薩摩焼の円形レリーフを修復する。レリーフは「本窯長太郎焼」の初代・有山長太郎(1871~1940年)作。本格的な修復は初となり、孫で4代窯元の有山長佑さん(88)=日展特別会員=に助言を仰ぎながら、来年3月までの完成を目指す。

 レリーフは直径約80センチで、正面に4枚、側面に2枚ずつの計8枚ある。当時の最新技術で建てられた本館に合わせ、すべて杯と葉のようなものをあしらった洋風の同じデザインで、表面にはうわぐすりの「辰砂釉(しんしゃゆう)」が使われ、完成当時は緑がかった色だったとみられる。

 市によると、何らかの理由でその後に青色のペンキが塗られた。太平洋戦争の戦火もくぐり抜けてきたが、85年以上経過し、劣化が進んでいた。

 市は2022年の調査でひび割れや一部欠損を確認した。本館は国の登録有形文化財に指定されており、修復方法を検討。なるべく現状を維持し、樹脂でひび割れを埋めるなどの修復を想定しながら、具体的な手法を今後詰めていく。

 修復作業は、24~25年度に計画する本館の外壁改修工事に合わせて実施する。来年度予算案に事業費約500万円を計上した。

 井立田訓管財課長は「レリーフが薩摩焼と知らない市民も多い。本館完成当時から残るのは本館建物とレリーフだけ。できる限り後世に残せるようにしていきたい」と話した。有山さんは「祖父が作ったものの修復に携われることは大変ありがたい。できる範囲で協力したい」と喜んでいる。

鹿児島市役所本館の正面玄関に飾られている薩摩焼の円形レリーフをアップで見る

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