ロシアによるウクライナ侵攻は24日、開始から2年となった。鹿児島県内に身を寄せるウクライナ市民は現在20人。大半は県内にとどまる予定だが、進学先が決まらず望郷の念が募った学生3人は避難をやめる決断をした。「いつか日本に戻りたい」。戦争の終結を願いながら、今春にも帰国の途に就く。
3人は鹿児島市の鹿児島キャリアデザイン専門学校日本語科で学ぶカテリナ・ウォズニュクさん(22)、ヴィクトリア・ヴォロシュチュクさん(21)、アンナ・マリア・ディシュカントさん(22)。ほか2人のウクライナ避難者とともに、3月に同校を卒業する。
もともと「発音がきれい」「日本のアニメや哲学が好き」などの理由で日本語に興味があり、ウクライナ西部リビウやテルノピリの大学で日本語を専攻していた。2022年2月のロシアによる侵攻開始で大学の授業は中断。日本で学べる無償のプログラムを知り、同年7月に来日した。
鹿児島を選んだのは、桜島や屋久島といった自然豊かな風土に引かれたからだという。当初は日本語をうまく話せなかったが、半年ほどで慣れ、周囲とコミュニケーションできるようになった。
「ミサイルの警報を聞くことがなく、集中して日本語を学べる最高の環境」と勉強に励んだ。一方で「自分だけ楽をしていいのか」と家族や友達を残して避難したことに迷いもあった。
これまで被害が比較的少なかった故郷も最近は攻撃を受け、家族が無事かどうか心配は尽きない。日本での大学進学を考えていたが、条件が合わなかったり、故郷の家族らに会いたい思いが募ったりしたため、帰国することを決めた。
ヴィクトリアさんは「戦争が続く中で帰るのは正直、不安がある。それでも家族らに会いたい」。アンナさんは「優しくしてくれた日本人は、家族や友達のような存在。いつか日本に戻り、就職したい」と話した。
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県内にとどまる避難者は自立を目指し奮闘している。鹿児島市に身を寄せる男性(52)は、現在の職場で商品の荷下ろしなどを担う。同僚たちとはスマートフォンの翻訳機能を使って会話する。
仕事の幅を広げるため、普通自動車や大型トラックの運転免許を取るのが目標だ。「戦況は悪化し、戦争は少なくともあと数年はかかるだろう。日本での暮らしが少しでも上向くように努力したい」
一家6人で戦禍を逃れてきた同市のモロゾフ・オレクサンダーさん(46)は、3月に語学学校を卒業する。「家族と安心して生活するために、鹿児島で働きたい」と力を込めた。