藤井棋王「期待に応え全力で」 伊藤七段「熱戦で石川に元気」 棋王戦本社インタビュー

「雲外蒼天」と書いた色紙を手に意気込みを語る藤井棋王=金沢市内のホテル

  ●24日に金沢で第2局

 棋王戦5番勝負第2局(北國新聞社主催)前日の23日、藤井聡太棋王(21)と挑戦者の伊藤匠七段(21)が北國新聞社のインタビューに応じた。1戦目を引き分けで終えた両者は「開幕局のような気持ち」で臨む。藤井棋王は「ファンの期待に応えられるよう全力で戦う」、伊藤七段は「石川県に元気を与えるような熱戦を見せたい」と闘志を示した。

 2人は色紙に決意の言葉を記し、石川のファンに思いを伝えた。藤井棋王はどんな試練でも努力して乗り越えれば青空が望めるという「雲外蒼天(うんがいそうてん)」の4文字に「将棋を究め、新たな景色を見たい」との気持ちを込め、伊藤七段は「常に過去の自分を超え、良い対局をしたい」と意気込み「克己(こっき)」としたためた。

 タイトル八冠を独占し、将棋界の第一人者として地歩を固める。数々のタイトルの防衛に臨み、追われる立場となったが「意識することはない。2回目の金沢対局で、少し慣れてきた」と泰然自若の構えだ。

 伊藤七段にデビュー当時から注目していたとし「序中盤の研究が非常に深い。それ以上に、指しやすさを形勢のリードに結びつけるセンスの良さを感じる」と印象を語る。「タイトル戦の引き分けは初めてのことだった。今から新たなシリーズが始まるような気持ち」と気合を入れ直す。

 能登半島地震の被災者にも心を寄せ、珠洲市の塩井一仁さん(63)の盤と駒に「自身がつらい状況にもかかわらず、提供していただきありがたい。いい将棋を指したいという思いが一段と強まった」と感謝を示す。ファンの熱気を一身に受け、眼前の一局に全身全霊をささげる。

 先手番で高い勝率を誇る藤井棋王を相手に、開幕局で引き分けに持ち込んだ。「持将棋になると思ったが、神経を使いながら指した」と振り返る。

 藤井棋王について「読みの深さや精度が他の棋士より圧倒的に高く、ずばぬけて実力がある」と評価する一方、先手番で迎える第2局に向け「先後両方の作戦を用意する開幕局と違い、より深く先手番の作戦を練ることができる」と自信をのぞかせる。

 初めて訪れる金沢に「歴史的な建物が多い印象。兼六園は写真で見て美しいと思い、ぜひ行ってみたい」と好感を抱く。能登半島地震に心を痛めながら「大きな被害がある中、塩井さんに盤と駒を提供していただき、身が引き締まる」と語る。将棋を指せる喜びをかみしめ、被災地に勇気を届けられるよう、八冠を制覇した「絶対王者」にありったけをぶつける。

「克己」としたためた色紙を手に闘志を燃やす伊藤七段=金沢市内のホテル

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