[社説]ウクライナ侵攻2年 ロシアの撤退を求める

 ロシアによるウクライナ侵攻から24日で2年となる。

 ウクライナは今もロシアによる激しい攻撃にさらされている。ロシアとの国境に近い第2の都市ハリコフでは、ミサイルの迎撃が難しく、空襲警報が鳴る前に着弾することがある。住民は一日の終わりに「今日も生き延びた」と安堵(あんど)するという。死と隣り合わせの日常が2年続いている。

 ウクライナの民間人死者は1万人を超えた。昨年8月の米紙によると、戦死者はロシア約12万人、ウクライナ約7万人と推計される。

 ロシアのプーチン大統領は2年前、国際法に違反して主権国家であるウクライナに侵攻し、東部・南部の4州併合を宣言した。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は全土奪還を掲げ、徹底抗戦の姿勢を崩していない。ロシア側は一方的に併合したウクライナの2割の領土をロシア領と認めるよう求めており、ウクライナは受け入れられない。国際秩序を破って軍事侵略したロシアの暴挙を認めることになるからだ。

 ただ昨年6月に始めた反転攻勢は、強固なロシアの防衛線の前に失速。米欧からの軍事、経済支援も停滞し、前線では苦戦を強いられている。 国内で厭戦(えんせん)感情が広がり、米欧の支援疲れも見えるようになった。

 最大の支援国である米国の軍事支援表明額は約6兆9千億円に上るとされる。だが、共和党の一部が反対し、下院での予算承認が滞っている。 11月の大統領選で共和党のトランプ氏が当選すれば、ウクライナは“生命線”を絶たれる可能性もある。

 米国の動向がウクライナ情勢に大きく影響することは間違いない。

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 一方のロシアは、軍需産業をてこ入れし、北朝鮮やイランから弾道ミサイルを調達するなどし、前線で優位に立っている。

 一時兵器不足が指摘されたが、戦車や砲弾などの兵器を優先的に生産する。

 国防費は、国内総生産(GDP)比で2022年の3%から、24年には6%に倍増する見通しだ。

 プーチン大統領は23日、戦略核兵器を含めた軍備の充実を強調し、さらに軍事力増強を進める考えを示した。

 3月には大統領選が予定されているが、プーチン氏は、反戦候補者の登録を拒否するなど、強権的な手法で対抗勢力を封じており、5選が確実視されている。

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 国際社会にできることは何か。

 国連安全保障理事会はロシアの拒否権行使で非難決議すら採択できない状態が続いている。

 だが、2年間で19万人もの命が犠牲になっており、これ以上の命が失われないよう、停戦へあらゆる手を尽くす必要がある。

 国際社会は、ロシアによる領土拡大を目的とした戦争継続を認めてはならない。

 ウクライナ戦争は、プーチン氏がロシア軍を撤退させれば直ちに終わる。

 日本を含む米欧各国は、戦争終結へ向け、あらゆる可能性を模索するべきだ。

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