クマと共生考える 富山でシンポ、人里に寄せ付けない対策紹介

全体討論で、クマ対策について住民への周知の大切さを訴える堀江会長(左)=県民会館

 昨年県内でクマが大量出没し、人身被害が相次いだことを受け、クマとの共生を考えるシンポジウムが23日、県民会館で開かれた。クマの生態に詳しい専門家や自治体の担当者、民間業者ら7人が近年の出没状況や対策事例を報告し、クマを人里に寄せ付けないための環境整備について話し合った。

 県内では昨年8~11月、クマによる人身被害が7件9人と相次いだ。同10月には、富山市江本の住宅敷地内で家人の70代女性がクマに襲われて死亡した。シンポジウムは県自然博物園ねいの里(同市婦中町吉住)が企画し74人が出席した。

 県森林研究所の中島春樹副主幹研究員は、クマは主食となるドングリ類が凶作の年の秋に大量出没し、昨年8月の調査ではブナが県東部で凶作だったと説明。ねいの里の間宮寿頼館長補佐は「平野部での人身被害を減らすためには誘引物となるカキの実を除去し、クマが身を隠せる場所を整備するなど地域ぐるみでの取り組みが重要」と強調した。

 ねいの里の野生鳥獣共生管理員、赤座久明さんは、2019年から5年間で計124本のカキの木を伐採した同市細入地域の庵谷地区では19年以降、クマの目撃情報が0件であるとした。この他、立山町の担当者がカキの木の伐採支援事業、入善町の担当者は町内に設置した耐雪型電気柵などのクマ対策を報告した。屋敷林管理を行う玄産業(富山市)と青山育林サービス(砺波市)は、それぞれ施工前後の変化を示した。

 昨年は、富山市の熊野川周辺でクマが多く出没した。全体討論の冒頭、熊野校下防犯組合連合会の堀江貞夫会長が熊野川沿いの草刈りといった住民の活動を紹介。「すぐ近くで人的被害が出ているにもかかわらず、危機感を持てない住民もいた。クマの恐ろしさや対策を周知していく必要がある」と訴えた。

© 株式会社北日本新聞社