日系自動車メーカーは好調?不調?中国人は結局日本車を選ぶのか

中国メディアの日本車に対する論評が感情的になっている。写真は東風ホンダのEV「e:NS1」。

中国メディアは混乱している。中国の世論と世界の自動車販売実績が明らかに非対称をなしているからだ。そのため日本車に対する論評は感情的になっている。二つの日本車関連記事を紹介し、今後の中国自動車市場を展望しよう。

倒れないトヨタ、販売台数が4年連続世界一

一つ目は騰訊網(テンセントニュース)の記事だ。トヨタは倒れそうに見えたが2023年の世界販売台数は前年比7.2%増の1123万台を達成したと伝え、「トヨタ車のパワーは弱く、価格はむやみに高い。安定の品質というが、それは新技術ではない。ブランド力以外に何があるのか」などと主張した。一方、「トヨタは2023年に世界販売台数が4年連続で世界一を達成し、史上最高の利益を挙げ、2位のフォルクスワーゲンの924万台に大差をつけた」と報じ、この解釈に戸惑っている。

トヨタは中国市場における地位が低下しても、他の海外市場では依然として支配的地位にある。米国市場ではゼネラルモーターズに次ぐ2位、欧州市場でもフォルクスワーゲンに次ぐ2位で、日本市場はもちろん首位だった。

一方、中国での販売台数は微減だったが、トヨタの衰退は数字で見るよりも深刻だと記事は指摘する。その第一のポイントは値下げの大盤振る舞いによって売り上げを維持したことだ。主力のカムリは14万元(約280万円)からで、レクサスESは7万元(約140万円)値引きした。

第二のポイントは、純EVの比率は1%にも満たず、ハイブリッドは3分の1程度まで増えているが、電動化は思うように進展していないことだ。中国市場におけるトヨタの衰退は間違いないが、そのスピードは多くの中国人が思うほど速くないと結んでいる。

日系メーカーは好調な出足

もう1本の記事は、「中国人はやはり買うとなれば日本車を好む」というものだ。日系4大ブランドのトヨタ、ホンダ、日産、マツダの中国での認知度は高い。その合弁会社、一汽トヨタ、広汽トヨタ、広汽ホンダ、東風ホンダ、東風日産、長安マツダの2024年1月の販売台数が発表された。それは予想を超える数字だった。販売台数、前年同月比は以下の通り。

広汽トヨタ 7万1875台 17.6%増

一汽トヨタ 7万台 59.3%増

東風日産 7万6000台 115.6%増

東風ホンダ 6万5000台 113.3%増

広汽ホンダ 5万6802台 41%増

長安マツダ 1万2393台 219%増

広汽トヨタはカムリが13.6%増の1万6352台、ハイランダーが50.1%増の7204台と主力車種が好調で、レクサス(輸入)は210%増の1万3700台だった。一汽トヨタには言及がなく、トヨタ中国全体でハイブリッド車は71.4%増の6万4500台、純EVは240%増の2900台というデータを紹介している。

東風日産の販売台数にはインフィニティとEVブランドのヴェヌーシア(启辰)が含まれる。インフィニティは約1000台、ヴェヌーシアは約4000台で、日産ブランド全体では約7万1000台とみられる。天籁(ティアナ)、逍客(キャシュカイ)、奇駿(エクストレイル)などが好調だ。新型パスファインダーの予約受注も3000台を突破した。

東風ホンダは広汽ホンダに比べて地味な存在だったが、1月の販売台数を2倍以上に増やし、注目を集めている。主力のシビック、CR-V、インスパイアの値引きが大きい。中でもインスパイアは4万元(約80万円)もの値引きで、14万元(約280万円)から買える。シビックも10万元(約200万円)からというお買い得プライスだ。

広汽ホンダは主力3車種とも1万台以上販売した。アコードは10.6%増の1万6148台、CR-Vは117.9%増の1万3392台、インテグラは180.4%増の1万3023台だった。インテグラはモデル後期でありながら勢いを維持した。広汽ホンダはもともと高い存在感がある。1月は東風ホンダに抜かれたが、セールを連発しているわけではなく、消費者のあらゆるニーズに応えた結果、となぜか高い評価だ。

長安マツダはCX-3、CX-5、CX-50など主力の値引きや買い替え補助金などの販促活動が功を奏した。しかしかつてのMAZDA6(アテンザ)のような人気車種はなく、存在感は薄らいでいる。

記事は「結局、中国人は日本車を購入する意欲がまだ高い。燃費や品質で中国人のニーズを満たしているのは間違いない」と結んでいる。

購入制限は緩和の方向へ

結局、二つの記事共に日本車はやっぱり強いということを証明する内容になっている。

中国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)によると、中国の内燃エンジン車は毎年1兆元(約20兆円)以上の燃油税を納めている。さらに各地方政府がさまざまな購入制限を課している。これらの措置は新エネルギー車の普及に貢献したが、その普及率が40%を超える(2024年見込み)状況となった今、乗聯会は地方政府に購入制限の段階的緩和を推奨し始めた。

購入制限のある一部の都市は制限のない都市より自動車保有率が大きく劣る。そのため自動車保有台数400万台以下の都市は内燃エンジン車の購入制限をすべきでないと提言している。車は車として同等の権利を持つべきというのだ。

内燃エンジン車の巨大な生産能力とその市場規模縮小との矛盾は問題を多発させている。厳しい価格競争はその現れの一つだ。各メーカーがシェア維持を優先し、この価格競争は新しい秩序が形成されるまで数年は続くとみられる。従来型、新規EVメーカーを問わず、この状況に耐えられるかどうか。これらは日系メーカーに有利に働きそうだ。

■筆者プロフィール:高野悠介

1956年生まれ、早稲田大学教育学部卒。ユニー株(現パンパシフィック)青島事務所長、上海事務所長を歴任、中国貿易の経験は四半世紀以上。現在は中国人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中国最新のB2Cビジネスと中国人家族について、ディ-プな情報を提供。

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