仕事を〈お金基準〉で選択すると、逆に〈お金〉が離れていってしまう「納得のワケ」【ベストセラー作家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

お金とは、「安心」を買うことができる便利な道具であるゆえ、なくなることで私たちを不安にさせる存在です。しかし、「信頼できる人間関係を築くことで、お金の不安も解消されていく」と、作家の有川真由美さんは言います。有川氏の著書『お金の不安がなくなる小さな習慣』より、「お金」と「人間関係」の関係性を詳しくみていきましょう。

損得でなく、「一緒にいると楽しくなる人」とつき合う

まず、「一緒にいて楽しい」「心地いい」「元気になれる」と感じる人間関係があると、お金の不安が限りなく小さくなるという話をしましょう。

お金の流れによって人間関係の立場が強くなったり弱くなったり、お金のあるなしで人が寄ってきたり離れたり……とお金によって人間関係が左右されると思われがちですが、本来のあるべき姿は逆なのです。

人間関係、とくに信頼関係を基盤に、お金は回っています。

そもそもほんとうの意味で成功している人、お金にも人にも恵まれている人は、最初から成功やお金を目的にしていません。やりたいことを思いっきりやっているうちに、それに関連する人たちが集まり、刺激や学びの機会、役割や仕事が生まれて成長でき、結果としてお金も集まり、人生はゆたかになっていくのです。

そんな信頼関係はお金を生むだけでなく、人生を支えてくれます。困ったことがあっても相談できたり、助け合えたりして、「なんとかなる!」と思えるはずです。

逆に「あの人はお金持ちだから」「取引先の偉い人だから」とお金でつながった関係の末路はもろいもの。つねに猜疑心があって心が疲弊し、不安がついて回ります。

お金は人生にとって大切なものですが、お金を基準に仕事や人間関係、生き方を選んでいると、自分のなかになにも残らず、逆にお金が離れていくのです。

やりたいことをやって自分を成長させ、まわりの人間関係を大切にしていれば、自然にお金はあとからついてきます。

私はやりたいことをやって動いているうちに、変わってくる人間関係もありました。その都度、人によって生かされ、生き延びてきたといっても過言ではありません。

正直な生き方と、人とつながる力が、お金を連れてきてくれると実感するのです。

小さな約束ほど守る

お金に縁のある人は「お金」よりも人との「信頼関係」を大切にします。

なぜなら、「信頼」こそが、仕事や生活を一緒に営む基盤。信頼できる関係があってこそ、つき合うことができるし、お金も健全に動くのです。

信頼される人とは、「この人なら大丈夫」と信じて頼れる人。信頼は一朝一夕につくれるものではなく、貯金のように“小さな行い”によってコツコツ貯まっていきます。

仕事であれば、顧客に別なお客を紹介してもらったり、困ったときは同僚に助けられたり、失業しても取引先からオファーされたり……と、お金以上の恩恵があるもの。つまり、“信頼貯金”が貯まるほど、生きやすくなるわけです。

“信頼貯金”をふやすためにまず心がけるべきは、「小さな約束ほど守る」という習慣。大きな約束は「できなくてもしょうがないか」と思われますが、小さな約束が守られないと、「簡単にできることなのに」と失望されます。

反対に、小さな約束をちゃんと守ってくれる人は、「自分を大事にしてくれる」と喜ばれるのです。「折り返し電話するね」と言ったら電話する。「資料送ります」と言ったら送る。「その仕事、やっときます」と言ったら、すぐにやる……というように。

家族や友人との約束も大切です。約束を守らず、ドタキャンしたり、頼まれたことを放置したりしていると、摩擦もふえて、最後は期待されなくなるでしょう。

言っていることと、やっていることがチグハグだと不信感が生まれます。裏表がある、嘘をつく、見栄を張る、ごまかすなどで“信頼貯金”は一気に目減りします。

「守れない約束はしない」のも約束を守るコツ。「今度、ゴハンでも」「行けたら行きます」といった社交辞令も、言葉が軽くて不信感を生むもと。礼儀をわきまえつつ、正直で、誠実でいることが、信頼のベースだと思うのです。

「どうすれば人の役に立てるか」を考え続けた先にあるもの

人と人との関係は、お金や名誉や権力を超越したものであり、生きていく“遺産”でもあります。現代社会は非正規雇用や独身、近くに親きょうだいや友人がいないなど、人とのつながりが薄くなり、心細く感じることもあるかもしれません。

私は国内外を転々としながら生きていますが、周囲に親しい友人ができると、やはり心強いもの。なにかとサポートしてもらったり、困ったときに助けてもらったり。

また、仕事も結局のところは、人に声をかけられ、人に助けられ、引き立ててもらい、時間をかけて信頼関係を築くことで生かされてきたことは間違いありません。

ただし、最初から「なにかしてもらおう」と期待してはうまくいかない。「ギブ&テイク」と考えても、期待のズレが生まれてストレスになります。

見返りなんて考えず、「どうすれば人の役に立てるか」を考え続ける習慣があれば、回り回って、どこからか“なにか”が返ってくる仕組みになっているのです。

お金の不安は、ひたすら「ギブ&ギブ&ギブ」を続ける習慣で、吹き飛びます。「この場所でなにができるのか」「社会に対してなにができるのか」と考える習慣のある人は、他人に意識が向けられているので、自分の不安は意識しないものです。

そんな人は「刻石流水(してあげたことはその場で水に流し、してもらった恩は石に刻むほど忘れない)」。そして、自然に“他力”によって生かされるようになるのです。反対に「将来が不安」「年金が少ない」と自分のことばかりでは不安は募るはず。

そもそも人は「もらう満足」よりも「与える満足」により大きな幸せを感じます。

きっと人生の最期に残る満足は与えてもらった満足より、人に与えた満足でしょう。

注意すべきは、けっしてムリをしないこと。「自分ばかり」と恨みがましい気持ちになっては逆効果。あくまでも「やりたいから、やっている」という範囲内で与え続けて。

有川 真由美
作家

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