中原のかなたから(2月24日)

 国を治めるとは。為政者の在り方とは―。作家浅田次郎さんがつむぐ歴史小説「蒼穹[そうきゅう]の昴[すばる]」シリーズは、20年以上にわたり、壮大なこの問いを追いかけてきた。内憂外患の今こそ胸に迫る▼史実と創作を交え、中国清朝の崩壊期を描く。列強が利権を狙ってうごめき、きなくさい。旧会津藩士で現地駐在の陸軍少佐・柴五郎が登場する。10歳で官軍を迎え撃ち、捕虜になった過去を持つ。争いの回避に動いて語る。〈「どだいこの国を弓矢鉄砲で屈服させることなどできるはずはない」〉。わが身に翻り、「鶴ケ城は落ちても、魂まで奪われてはいない」と胸を張っているよう▼ロシアのウクライナ進攻から、きょう24日で2年となる。戦況打開の糸口は見えない。世界の分断は深まり、経済は混乱に陥った。いまだに乳児まで命を落とす。だが、最近は「支援疲れ」の言葉も。米国大統領が代われば、対応も変わるとの見方が広がる▼わが国は先手を打って、右倣えではあるまい。先頃決めた無償協力の金額発表に、政府内では慎重論があったとか。「古里の県民なら理解できるだろう。領土の重み、弱き立場の痛みを」。中原のかなたから、一途[いちず]な少佐の叫びが聞こえる。<2024.2・24>

© 株式会社福島民報社