【大山忠作美術館】15周年襖絵展を弾みに(2月24日)

 二本松市の大山忠作美術館は今秋、開館15周年を迎える。郷土が生んだ日本画家で元日展会長、文化勲章受章者の大山忠作さんの特別企画展を通して巨匠の画業に改めて理解を深めてもらい、美術館の利用拡大に弾みをつけたい。

 特別企画展は10月1日から11月17日まで館内などで開き、大山さんが描いた成田山新勝寺の襖絵[ふすま]「日月春秋[にちげつしゅんじゅう]」を初めて展示する。襖絵は満開の三春滝桜、福島市高湯の楓[かえで]、心象風景に浮かぶ日輪と月輪を描いた。画室に作品が入りきらないため、制作場所の空き倉庫まで毎日弁当を手に通い、2年かけて1980(昭和55)年に全28面を描き上げた。年間1千万人が参詣する千葉県成田市の成田山新勝寺で、光輪閣内の68畳の客間「日輪の間」と「月輪の間」に納められている。

 奉納後は門外不出とされ、特別な機会以外は一般公開もしていない。大山さんの長女で俳優の大山(一色)采子さんは「父の代表作の襖絵を、父の古里で見てもらえたらと夢見ていた。ようやく念願がかなう」と喜んでいる。華麗で幽玄な作品が醸す感動を、多くの人に味わってほしい。

 大山忠作美術館は2009(平成21)年、JR二本松駅前の市民交流センター内に開館した。大山さんの作品と関連資料合わせて約400点を管理し、常設展や企画展で紹介している。「描きたいものを描く」という大山さんの情熱に出合える貴重な場だが、県民や市民に十分活用されていると言えるだろうか。

 開館以来、累計約12万人が入館し、桜の名画を集めた「二本松さくら展」を開いた2016年度は年間で最多の4万2千人が訪れた。文化勲章を受けた日本画家5人の「五星山展」を催した2013年度は2万3千人が来館したものの、それ以外は年間数千人台で推移し、新型コロナ禍以降は千~2千人台にとどまる。二本松を代表する芸術施設としては、あまりに寂しい。

 指定管理者のNPO法人まちづくり二本松は襖絵展で大幅な誘客増を目指している。秋の開催に向けて、ムードを盛り上げる芸術講座や楽しい関連企画の波状的な展開が必要だ。併せて家具や菓子、地酒など、二本松が誇る伝統産業と芸術を結び付けた新たな商品開発の機運が高まるよう期待したい。(佐藤克也)

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