○で必ず終わる日本語

 セクハラ、パワハラ、マタハラ…。嫌がらせやいじめなどの迷惑行為を指すハラスメントは現在、多数存在する。昭和に学生時代を過ごした世代には「確かにそうだな」と自戒させられるケースが多いのだが、一方で「そんなことまで」と驚くような言葉もある▲その一つが「マルハラスメント」。「連絡ください。」「了解しました。」。LINE(ライン)などで中高年から届いたメッセージが「。」で終わっていると、若い世代は距離感や冷たさを感じて恐怖を抱くというものらしい。「おばさん構文」と揶揄(やゆ)されているともいう▲一部メディアがこれを報じた今月上旬、正直、気がめいった。長年、新聞記事に携わってきたこともあり、句点は当たり前に使ってきた。でも、不快感は与えたくない▲そう困惑していたころ、歌人の俵万智さんがSNSに投稿した一句が反響を呼んだ。「句点を打つのも、おばさん構文と聞いて…この一首をそっと置いておきますね」と前置きして、こう詠んだ▲〈優しさに/ひとつ気がつく/×でなく/○で必ず/終わる日本語〉。真ん丸の句点は冷たくないよ、と優しく教えてくれた▲時代への適応は大切だ。でも、若い世代へ過度に迎合する必要もない。俵さんの一首にうなずき、日本語のこまやかさにあらためて気づく。(城)

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